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~マントル細胞リンパ腫闘病記~ 20.まとめ3 治療について(後編)

1.はじめに

ここでは、2年目に受けた抗がん剤治療と放射線治療、および3年目以降のBTK阻害剤治療について概要をまとめています。

2.VR-CAP療法

(1)治療概要

5カ月ほどで前回と同じ場所に再発。
一般的には、数年は再発しないとの話だったので、ショックでした。
しかも、同じ場所に再発するのも、稀な例だということです。

何はともあれ、また治療するしかありません。
今度は、ゆっくりと細胞分裂する癌細胞を狙った薬で治療することになりました。

VR-CAP療法

抗アレルギー薬に、アセトアミノフェンとニポラジン。
吐き気止めに、グラニセトロンとプレドニン。
抗がん剤は、ベルケイド、リツキシマブ、ドキソルビジン、エンドキサン。
ステロイド剤に、プレドニゾロン。

(2)薬の説明

・ベルケイド
プロテアソームという酵素の働きを阻害する分子標的薬の一種です。がん細胞が作り出す異常なタンパク質をプロテアソームという物質が分解しています。その働きを阻害することによりがん細胞内に異常なタンパク質が溜まり、死滅するという薬です。

(3)副作用

食欲不振、便秘、口内炎、脱毛、倦怠感
今回も、抗がん剤を投与すると便秘になりました。下剤を処方してもらいましたが、服用が少ないと出ないし、多いと下痢になるしで、調整が難しかったです。 

(4)血球数の推移

抗がん剤投与後の白血球数と血小板数の推移です。

白血球と血小板数の推移

白血球は、抗がん剤投与後に一時的に増加しますが、9日後には下限値を大きく下回り、28日後に次の抗がん剤投与の目安である20まで何とか回復しています。
血小板は、抗がん剤投与後にゆっくりと減少していき、14日目から回復していきますが、下限値を少し上回ったところで、上昇は止まります。
 
新型コロナウイルスが流行していたので、入院を伸ばし、2回目の抗がん剤投与も受けました。
28日後に2回目の抗がん剤投与を受けた直後は、1回目と同じように白血球数は増えますが、1週間で激減しました。そこで、白血球を増加させる薬を投与して、今度は急上昇させています。
血小板は、21日後から減少に転じて、28日後の抗がん剤投与でも影響は受けず減少し、35日後に底を打って上昇し始めています。
下限値を挟んで、減少と増加を繰り返しているようです。
これは、私個人の数値であり、一般的な傾向とは言えませんのでご注意ください。 

3.VR-CAP療法外来治療

(1)治療概要

入院治療で副作用の様子を観察した結果、外来治療でも大丈夫だろうということになりました。
外来治療は28日ごとに4回、入院治療の2回と合わせて計6回、抗がん剤投与を受けました。

(2)副作用

食欲不振、便秘、脱毛、倦怠感、静脈炎
今回も、4回目あたりから辛くなってきて、何とか合計6回受けられたという感じでした。
抗がん剤を打つと、てきめんに便秘になります。下剤を処方されましたが量の調整が難しかったです。
また、何故か外来治療に移ったとたんに静脈炎になりました。
1ヶ月ほど痛みが続き、悩まされました。

(3)血球数の推移

その4回の白血球と血小板数の推移をまとめました。

外来治療での白血球と血小板数の推移

白血球は何とか下限まで回復しましたが、血小板は下限に届かず、低空飛行のままです。
これは、私個人の数値であり、一般的な傾向とは言えませんのでご注意ください。 

(5)治療結果

治療の結果、喉の腫れは小さくはなりましたが、無くなりませんでした。
CTとPET検査の結果、がん細胞は喉のみと判断されたので、放射線治療で喉のがんを除去することにしました。

4.放射線治療

(1)治療概要

2020年10月1日から26日まで、平日18日間で放射線治療を受けました。
治療の前に、狙った箇所に放射線を当てるために、顔を固定するマスクを作製し、腕と胴体にマーキングしました。

マーキング

 台の上に寝て、マスクで顔を固定されて、二人がかりで身体のマーキングを合わせて固定。その後、レントゲンで位置を確認して、照射するという手順です。
放射自体は、当人には何もわかりません。
担当医曰く「毎日少しずつ炙っていく感じ。」だそうです。
三日目くらいから患部に違和感を感じ始め、2週間ほどで痛みが出てきました。
治療が終わるころには、つばを飲み込むのも痛く、プリンや具のない茶碗蒸しなど、ゼリー状のものしか食べられなくなりました。
また、同時に微熱も続きました。

治療終了後一週間ほどで、少しづつ普通の食事が食べられるようになり、熱も下がってきました。
これで良くなると思ったら、咳が出るようになり、睡眠不足の日々が続きました。
年内いっぱい咳には悩まされました。
また、味覚が一時変わり、料理が水っぽく感じましたが、いつの間にか元に戻りました。

(2)後遺症

後遺症としては、唾液腺にも影響したようで、唾液の分泌が少なくなりました。
パンやご飯、ポテトチップスなどは、水やお茶なしでは食べられくなりました。
口臭も、きつくなりました。
また、傷跡が残っているのか、今でも飲み込む際に少し違和感を感じます。

(3)血球数の推移

放射線治療とその後の白血球と血小板数の推移をまとめました。

白血球と血小板数の推移

治療は26日間でした。白血球は、治療が始まると減少し始めて、徐々に回復していきますが、下限値付近で上昇が止まります。
血小板は治療の影響か、多少大きめの上下がありますが、治療後は相変わらずの低空飛行となります。
これは、私個人の数値であり、一般的な傾向とは言えませんのでご注意ください。 

(4)再々発

さあ、これでもう大丈夫だと思っていたら、3月のPET検査で直腸が光っていました。
内視鏡検査の生検の結果、マントル細胞リンパ腫でした。 

直腸の内視鏡画像:左上に腫瘤が出来ている

この病気は、消化器官が好きなんだそうです。
だからと言って、入り口の喉の次は出口の直腸とは、何と極端な。

5.BTK阻害剤服用治療

(1)治療概要

抗がん剤の効果も期待できなくなり、放射線治療を施してもすぐに他の場所で増殖するので、BTK阻害剤という薬(イムブルビカ)を服用して治療を行うことになりました。 

(2)薬の説明

・イムブルビカ
イムブルビカは、分子標的薬のひとつで、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の働きを抑制する。
BTKは、免疫細胞の一つであるB細胞を活性化する。
マントル細胞リンパ腫は、B細胞が癌化する病気なので、イムブルビカで癌化するB細胞の増殖を防ぐ。
簡単に言えば、B細胞が癌になるなら、大元のB細胞を無くしてしまえばええやん、って薬。
よって、イムブルビカを服用すると、B細胞がない身体になるので、感染症などに注意する必要がある。
面白いのは食事制限。
グレープフルーツ類は、薬の血中濃度が増幅するのでダメ。反対にセイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)は、濃度が減少するので、これもダメ。
グレープフルーツ類(夏みかん、ハッサクなども)はダメでも、ユズ、カボス、温州ミカンなどはOK。
とりあえず、大きい柑橘類は食べないようにしています。🍊
セイヨウオトギリソウは、リラックス効果のあるハーブで、健康食品に含まれていることがあるそうです。

イムブルビカは、摂取し続けると身体に耐性が出来て、何年後かには薬が効かなくなるそうです。
それまでに、有効な治療方法が開発されていることを期待しようという位置づけの治療です。

薬は、イムブルビカの他に3種類。
・エンテカビル
B型肝炎ウイルス(HBV)の増殖に必要なDNAポリメラーゼの働きを抑えてウイルス量を減らす薬。
・アシクロビル
ヘルペスウイルスのDNA合成を阻害し、ウイルスの増殖を抑える薬。
帯状疱疹の発症を防止する目的で服用。
でも、発症してしまった。
・ラフチジン
胃粘膜にあるヒスタミンH2受容体を遮断し、胃酸分泌を抑え、胃粘液を増加させる薬。
元々、逆流性食道炎だったので、放射線治療を行った喉を守るため。 

(3)副作用

・倦怠感
2年間、抗がん剤や放射線治療で身体を痛めつけてきたこともあるでしょうが、何をするにしても「だるさ」を感じます。
ちょっとした家事をするにしても、「よ~し、やるぞ、やるぞ!😠」と心の中で叫びながら決心しないと動けません。
・帯状疱疹
アシクロビルを飲んでいましたが、残念ながら発症しました。
いやいや辛かった。
入院前後の5日ほどは、ピリピリと電気が走るような痛みでほとんど眠れませんでした。
2021年の夏に発症して入院し、帯状疱疹後神経痛が後遺症として残り、疲れたりするとピリピリ痛み出して夜中に何度も目が覚めたりします。これもなかなか辛い。
2024年に入ってやっと治まってきました。発生回数も少なくなり、痛みも軽くなってきました。
・血小板減少
抗がん剤治療で少なくなった血小板ですが、この薬の副作用もあり、下限値に届かず低空飛行したままです。
血液検査の採血時にはしっかりと採血跡を押さえて止血しないと、血が止まらなくてシャツを汚したりします。
ほかには、ちょっと家具にぶつかったら内出血したり、何もしなくても手足に小さな赤班がでてきたり。
最近は胸にも赤班が出だしたりして、ちょっと不安です。
まれに脳出血(0.1%)や消化管出血(0.2%)での死亡例もあるそうです。
こうならないように祈るしかありません。
・免疫力低下
免疫細胞の一つであるB細胞が無いのですから、当たり前。
新型コロナウイルスも流行って外出時にはマスク着用が必須になりました。
帰宅時には、手洗い、アルコール消毒、うがい。
おかげで手の油分が抜けてしまい、夏でもハンドクリームが手放せなくなりました。
それでも、原因の分からない発熱があったりします。
・寒さに弱くなった
この薬の副作用ではなく、今までの治療で代謝が低下しているためだと思いますが、寒がりになりました。
夏でも、北側の日当たりのよくない部屋では、クーラーなしでも平気です。
逆に、冬は日当たりのよい部屋で暖房を利かせていても、何枚も着込んで震えています。
風呂も、熱めの湯でないと身体が温まりません。

(4)血球数の推移

服用開始からの白血球と血小板数の推移をまとめました。

白血球と血小板数の推移

服用直後は大きく値がぶれますが、段々と落ち着いてきます。
白血球は、体調に左右されるのかブレ幅が大きいですが、血小板は下限下での低空飛行です。
580日あたりで数値が高くなっていますが、コロナが治って落ち着いた頃で、これが原因かもしれません。
これは、私個人の数値であり、一般的な傾向とは言えませんのでご注意ください。 

6.最後に

2019,2020年と抗がん剤治療、放射線治療を受けてきました。
それで感じたのは、抗がん剤治療は「毒を以て毒を制す。」そのものであるということ。
正常細胞も何かしらの影響を受けてしまう。
副作用のない薬が開発されるように、これからの医療技術の発展に期待です。
 
また、こう言っては不謹慎かもしれませんが、新型コロナウイルスが流行し、リモートワークが導入されて大変助かりました。
体力がなかなか回復せず、週に3回外出すると翌日にはぐったりして使い物にならなくなります。
現在も主に在宅勤務で、出社回数を減らせて助かっています。
会社には、勤務面も含めて色々と気を使ってもらい、感謝しています。
 
アルコールは、少しならOKをもらったので、週末に缶ビール1,2本、日本酒なら300ml瓶1本のほろ酔い程度で楽しんでいます。
たまに仕事関係の飲み会がありますが、飲みすぎないようにセーブするのがつまらないというか、好きなだけ飲めるのが羨ましいですね。
飲んでる人を横目で見ながら、「ほろ酔い加減におさえるのが大人のの飲み方よ。」と自分を納得させています。
 
最大の悩みは、やっぱり金銭面です。
イムブルビカは定価が約1万円/錠。
健康保険や医療費の限度額適用で抑えられますが、毎日2錠飲む今の治療では、年に何十万円の出費です。
これは結構厳しいです。
今はがん保険の一時金で賄えていますが、毎年減っていく一時金を見ると不安になります。
今は二人に一人が癌になる時代。
がん保険には入っておきましょう。
 
最後に一言。
本人もそうですが、家族や周りでいる見ている方も辛いです。
少しでも助けにならないかと検索すると、民間療法とか「○○で癌が消えた!」とか色々出てきます。
でも、それらはまず当てにならないと思っています。
もし本当に効果があるなら、標準治療として採用されているはずですから。
効果のあった数例だけ挙げて、さも凄い治療法だと錯覚させているだけでしょう。
そういうのを「これやってみて、効果があったらしいから。」とか言われても、本人には迷惑なだけです。
もちろん、本人も目移りしないことが大事です。
幸い、私の家族は、そういうこともなく治療に協力してくれて、家では気を使いながらも、なるべく普段通りに接してくれています。
おかげで治療に専念でき、本当に感謝しています。


さて、多少の不便や不安を抱えてはいますが、まずは今の治療で普通の生活を続けていけたらと思っています。
また、何かあれば記事を追加します。

当初考えていたより、かなり長くなりましたが、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。🙇‍♂️

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