20221216

 プロフェッショナル仕事の流儀は、先日バンタム級主要4団体王座を統一した井上尚弥選手の回だった。基礎練習に長い時間をかけるというナレーションの下、シャドーボクシングをしている様子が映されているのを見て、フットボールにおいて自分はシャドーと同じような練習を好んでしてきたと思った。見えない敵を想像する。それに合わせて身体の動かし方を自分自身に沁み込ませる。いざ実戦になると、対峙するのは目の前の敵というよりも「限りなく目の前の敵に近づけた想像上の敵」であることの方が多い。イマジナリーな相手がリアルと異なり過ぎていると実際のプレーがちぐはぐになる可能性はある。一方で、上手くいけば練習の延長線上で試合でもほぼ変わらずにプレーすることができる。もちろん、現実に起こっていることをしっかり見つめることができるのがベストだとは思うけど、それに逐一合わせるのは認知リソースが間に合わない気がする。経験上、現実の相手と想像上のそれとのあいだにそこまで差異を感じないことを鑑みると、フットボールというのはけっこう抽象的なーーー少なくともボクシングよりはーーースポーツなんだなって思う。というか、ジグソーパズルの隣り合うピース同士がかっちりハマるように、現実生活において相手の意図とこちらの意図とが完璧に合致して対応できていることの方が稀だ。

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