20221017

 ブックオフで『ヒカルの碁』7巻を立ち読みした。個人的に特に好きな巻で、毎日佐為と打って成長しているはずのヒカルが院生の中で全然勝てなくなってしまう。毎日佐為と打って成長しているが故に、佐為との実力の差が———佐為の刃が―――見え始め、それによって恐れが生じてもう一歩が踏み込めない。結果、いつも僅差で負けてしまう。勝つためには相手の刃をギリギリの所で見極め、厳しい手を応酬しないといけない。『ヒカルの碁』は勝負の世界で成長する過程でぶつかる壁、そのぶつかり方が非常に巧妙に描かれている。改めて読んで気づいたのが、やがて登場する―――たしか12巻当たりで―――倉田という若手有望棋士の名前が、もうこの頃には他のキャラクターのセリフの中でそれとなく出てきていて、新キャラとしていきなり登場するよりもある程度の評判の下で現れてくる方が囲碁界隈のつながりが感じられていいなと思った。『ヒカルの碁』は囲碁業界関係者をとりまく群像劇の側面もあるように見える。
 小学生の頃、『ヒカルの碁』から囲碁にハマり、近所の碁会所に通っていた。初段くらいまではスムーズにいったけど、結局、サッカーを優先してそれっきり行くことはなかった。その碁会所から最近、場所が移転した旨のハガキが届いた。「皆さん大人になりましたね、今も囲碁をやっていますか?」という文面に少し心がざわついた。大人になった。たしか『ヒカルの碁』連載当時はプロ試験の年齢制限は30歳までだったけど、現在は23歳未満にまで引き下げられているらしい。別にプロになろうと考えたことはなかったけど、もうそういう未来、可能性は規定により存在しない。まあ、それはともかく、一度碁会所には足を運びたいなとは思う。


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