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住む世界が違う人たちがいる。

自分の地元は、県の中では比較的栄えている、都会的な方だと思う。
都内にアクセスがいいこともあって諸々施設がそれなりに充実している。都会、とまではいかないけれど、そこそこ賑やかな駅周りと閑静な住宅街が大部分を占める景色の中で物心ついた頃から過ごしてきた。

両親はサラリーマンと専業主婦。特に不自由なく、与えられた世界の中でそれなりに努力して最近まで生きてきた。すごくざっくり分類したら、自分はおそらく都会っ子、社会学的に言えばいわゆる典型的なミドルクラスの家庭の子として育ってきたんだと思う。

時々、川沿いの土手道へサイクリングに出かける。川沿いを走っていき、国道の下を潜り抜け南に下ると、自分が住んでいる側の地元とがらっと雰囲気が変わる。
開けた土地に田園風景が広がる。その脇に、小さな町工場、古びたアパートが連なっている地域がある。作業着を着た人が通り過ぎていく。金属や木材の加工品、部品。錆びれたドラム缶が無造作に置かれている。何回も雑に継ぎ接ぎされたトタン屋根の下にある作業場。

ふと、この一帯に目が行く。

自分の人生に今までとは違う道を歩む可能性がいくつか転がっていたにせよ、ここにいたはずの人生はなかったんじゃないだろうかと思った。育ってきた周りにはなかった風景。いや、人生を通して似たような風景を見たことはある。ただ、自分と繋がっているとは思っていなかった。子供の頃、夢として描いていた職業、生き方にはなかったし、逆にどんなに敷かれたレールを外れてもこういった場所で暮らしている自分を想像できない。決して交わることのない世界。
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自分ではなり得ない人たちがいる。すごく自分が小さく感じられた。

住む世界が違う人たちがいる。すぐ近くに。


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