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マルチ勧誘回想録2: キャッシュフローゲーム会と金持ち父さん

前回の「その1: マルチ商法に勧誘される前兆」に引き続き、マルチ商法のグループ(以下、マルチサークル)に引き入れられた経緯を思い出しながら書いてみようと思います。

勧誘者Mとの再会と「ゲーム会」

10年ぶり位に会った勧誘者Mは明るく爽やかに成長したように見えました。
待ち合わせ場所には、同年代の若者が10数人以上集まっていました。既存の参加者は互いに面識があり、それぞれ新規の参加者を連れてきている様子でした。
ゲーム会だと言われて誘われたのは「キャッシュフローゲーム会」というものでした。

キャッシュフローゲームとは

キャッシュフローゲームは、巷ではマルチ商法の勧誘に利用されることの多いボードゲームです。人生ゲームに似た内容です。不労所得を多く得て、働き詰めのサイクルから脱出すればゴールです。

参加者はグループに分かれますが、各テーブルごとに進行役(マルチサークルの会員)がおり、サポートします。私が案内されたテーブルの進行役は勧誘者Mでした。

凝った作りで、誰でも楽しめるような内容でした。ゲームそのものの質は決して悪くない…のですが、はじめての参加者はここで「不労所得で金持ちになろう!」という、マルチの基本思想を刷り込まれます
ゲーム会の気軽で楽しい雰囲気も、マルチ商法に対する判断力を緩ませる要素の一つだと思います。「マルチ商法」なんて危険ワードは登場しません

参加後に「キャッシュフローゲーム」について少しでも調べていれば、簡単にマルチ商法とのつながりや、そのリスクについて知る事ができたはずです…しかし、楽しいイベントに浮かれていて調べるという発想もありませんでした。

🚩「マルチ商法」というキーワードが一度も出てこない
🚩楽しいゲームでマルチ商法の思想を刷り込まれる

ビジネスの"師匠"?

キャッシュフローゲーム会後、2人で入った喫茶店ではゲームが楽しかったことを伝え、どんなビジネスをやっているのかをたずねてみました。

Mは目指している夢や、ビジネスを始めてから毎日が如何に楽しいかを詳細に語り、不労所得といった"ビジネスの仕組みづくり"の大切さを強調していました。
「どんなビジネスなのか」という問いには答えてくれなかったのに、気が付けば自分はその気になっていました。

「パイナップル担当大臣にその気持ちがあるなら一緒にやってみない? 凄い"師匠"が居るんだけれど、会えば詳しく教えてくれるよ」

帰り際に「次に会うときは師匠を紹介するから、それまでに『金持ち父さん 貧乏父さん』を読んでおいてね」と言われました。

Mがマルチ勧誘者であるサインはいくつも出ていましたね。

🚩やたら夢について語る・聞きたがる
🚩"師匠"の凄さについて語り、会わせようとする
🚩ビジネスに関する説明はフワッとしてる
🚩『金持ち父さん 貧乏父さん』という本を勧めてくる

このすぐ後に、勧誘者Mとは意気投合して交際を始めることになるのですが、その顛末は「マルチ回想録外伝」に別記します。

『金持ち父さん 貧乏父さん』とは?

これは先述のキャッシュフローゲームを考案したロバート・キヨサキという人が書いた本のタイトルです(日系アメリカ人の方だそうです)。

「キャッシュフロー・クワドランド」「Eクワドラント」「Bクワドラント」など、聞き慣れない言葉が登場しました。極端に単純化すると「なにも考えずに汗水を垂らして働くのはどうなんだろう。お金について勉強したり、お金を得るための仕組みを作るのも大事だよ」的な内容だと記憶しています 。

その考え方自体は否定しません。問題は、働かずにお金を得る手段として、ネットワークビジネス(マルチ商法)が挙げられている点です。
そのためか残念なことに、この本がマルチサークルに勧誘する手段に使われるケースが多いようです。キャッシュフローゲームについても、『金持ち父さん 貧乏父さん』についても、これがキヨサキ氏が意図した本来の使い方かどうかは分かりません(おそらく違います)。

ちなみに、本の中では著者の友達の父親、通称「金持ち父さん」がさまざまなアドバイスをくれるのですが、架空の人物のようです。本を分かりやすくするための仕掛けなのでしょうか。

まとめ: 罠にかかった獲物

キャッシュフローゲームに参加し、勧誘者と会話したり、勧められた本を読んでいるうちに、前職の薄給・過重労働の現場を思い出しました。

「体を壊してまで働いてるのに、給与明細に反映されない」
「きっとどこで働いても、同じに違いない」

不満や不安で頭が混乱するうちに、やがて「労働 = 健康や寿命をお金に変えて生きること」に思えてきて、不労所得への期待や夢が一気に膨らみました。これは当然、勧誘者Mや"師匠"に察知されます。
今思えば、私は労働に対してとても極端な視点を持っていましたし、不労所得についても曲解していたと思います。勧誘されるとそのように誘導されます。

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