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マルチ勧誘回想録4‐1: 入会

前回は師匠Aとの会合やビジネスセミナーで経験した勧誘手法(勧誘相手を離さないための手法)ついて述べました。今回は入会前後の状況について書こうと思います。

入会とノルマの話 

万が一合わなくても、クーリングオフが効くうちに辞めればいいか」とキャッシュフローゲームからビジネスセミナーを経て、1週間ぐらいで入会しました。
ファストフード店内で勧誘者Mともう一人、アップラインの会員(詳しくは後述)の3名でノートPCを囲み、オンラインで入会手続きと製品の注文をしました。(最近は店内でのマルチサークル活動を禁止する張り紙を出している飲食店を結構見かけます。)

入会の際、X会社の製品を20〜22万円以上買うと、会員特典としてネットワークビジネスで収入を得る権利が自動付与されるシステムでした。
ただし、この権利を維持するには、毎月一定額以上の製品を購入しなければなりません。ノルマは10〜15万円だったと記憶してます。

ノルマの達成には権利の維持の他にも、アップライン(※)と呼ばれる、勧誘者やその上の師匠たちの収入源になる役目があります。

※ビジネスの親子関係はアップラインダウンラインと呼ばれていました。アップは自分から見て勧誘者や師匠など直系の先祖を、ダウンは自分が勧誘した相手やその勧誘相手…言わば子孫を指します。ダウンラインが多ければ収入は増えます。

ノルマの「救済措置」?

毎月誰かを勧誘すれば、ノルマが下がるという救済措置もあったと記憶しています。しかし、毎月新しい会員を導引できた人があの中に何人いたかは分かりません。

共同生活を送りながら生活費を節約したり、貯金を切り崩してやりくりしている人が多い印象でした。彼らは、夢が叶う日が来ることを信じ、使い切れない程の製品を毎月購入します。

🚩20万円ほどの"初期投資"が必要
🚩製品を毎月定額(10万〜15万円)以上購入するよう求められる
🚩新規会員を勧誘するとノルマが軽減する(自分に収入が入る)

ちなみに、たとえ新規の勧誘ができていなくても、製品を買うだけでも周りから物凄く褒められます(ダウンライン会員が買い物をすると、何割かはアップラインの収入になる)。

ビジネス商材として使われていた会社Xの製品については後編の「マルチ勧誘回想録4‐2: 製品と過剰在庫の問題」に書きます。

マルチサークル主催イベント 

店を貸し切って、マルチサークル主催のパーティーが開かれたのを覚えています。細かいルールは忘れましたが「初対面の相手に夢を語る」という主旨のパーティーゲームもやりました(マルチ勧誘における夢の重要性については過去記事を参照)。
関係者以外も多数参加しており、そこで初めて「凄い人がいる」と言われて師匠Aや師匠Bを紹介される人もいるようでした。殆どが20代〜30代です。

自分のようにキャッシュフローゲーム経由で誘われるケースもあれば、こんなふうにパーティーがきっかけでマルチサークルに入ってしまうケースもあるのでしょう。

とにかく休みが無い 

マルチサークルに入ると、週末だけでなく平日の夕方もイベントやセミナーの予定で埋まります。 このサークルでは「成功への鍵だから」と全ての催しへの参加が奨励されていました。
来る日もイベントに明け暮れ、ネットワークビジネスの素晴らしさを頭の中に流し込まれます。金や時間を消費しているだけなのに妙な達成感があり、毎日が充実した気になってました。
しかし、会場が遠方だとやはり疲れます。交通費・参加費も当然必要なので、出費は重なります。

こんな状況が2週間ほど続き、疲れが出てきました。 そこでふと、自分が勧誘者Mと交際中にも関わらず、二人きりでデートに出かけたことがないことに気づきました。「同じセミナーやイベントに参加しているだけで、互いを理解した気になってないか?他のメンバーに対しても同様に錯覚してないか?」そんな疑問が湧きました。

次の週末には、大規模な集会に参加する予定でしたが、あることをきっかけに予定を全てキャンセルしマルチサークルを辞めることになります。

友人を誘いかけたことについて

そういえば、キャッシュフローゲーム会に参加した後か、師匠Aとの初会合後のタイミングで、何人かの親しい友人に会って入会してもいないのに「ビジネスで不労所得を得るんだ」と自慢してました。中身もろくに知らないのに、恥ずかしいです。恥ずかしいだけなら良かったのですが。
自分から連絡を取ったので、心のどこかで一緒にやろう(=勧誘しよう)という気持ちがあったのだと思います。軽く受け流して貰えたのが幸いしましたが、あのまま勧誘していたら…

もし断られなければ、立場を利用して毎月高額な買い物をするよう誘導していたかもしれません。一方で、友人は毎月の支払いに生活を圧迫されていたかもしれません。成功を夢見て借金し、信頼関係を壊し…アップラインである自分達の権利収入は、そんな人達から入るのです

10年経った今でも、大事には至らなかったとはいえ、安易な気持ちで勧めようとした自分が許せません。彼らをゲーム会やセミナーに誘う前に辞められて、本当に良かったです。

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