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「牧師夫人の徒然なるままに」(八三〇)「彼女は喜んで自分の手でそれを仕上げる」(箴言31・13)

 私の愛読書の一冊にスタインベックの「エデンの東」があります。高校生の頃、ある友人から「あなたはライザのような人ね」と言われたことがあります。ライザというのはこの物語の本筋ではなくて脇に流れるスタインベックの祖父母の家系であるハミルトン家の人物です。

 この物語の主人公のキャシー(ケイト)がアダム・トラスクの妻になり引っ越してきます。そこを訪ねた夫のサムエル・ハミルトンにライザが追及します。「そのキャシーの手は何をしていたんだね?」「縫物もせず、繕い物もせず、編み物もしていなかったのかい?」

 まだ中学生だった頃、愛読書になったこの本の、特にこの箇所が私の印象に深く残りました。「働き者の女の手」「常に何らかの仕事に従事する手」を私は美しいと思いました。多分その頃からきらびやかな装飾をした爪や輝く指輪などを美しいと思う価値観が私から消え去っていたと思います。

 先日お邪魔をした友人のお宅で、接待をしてくださった奥様がリビングの一角で重ねたタオルに針を通しておられました。沢山のタオルを雑巾に縫い上げておられるようでした。私との会話の合間にもその手は休むことなく動いていました。美しい女の手です!!

安食道子

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