核抑止論について

■「抑止論」非難、核なき世界を=平和宣言で市長訴え―トルストイの言葉引用・77回目、広島原爆の日
(時事通信社 - 08月06日 09:31)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=7062913

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まずはとある方の「核抑止論はインチキ」という理論の引用から。

>現実としてロシアがウクライナに対して核兵器使用をほのめかしています。ウクライナが核保有していたとしても、ロシアが核使用するかどうかはロシアのさじ加減でしかありません。つまり持っているだけで核戦争は起こりうるということです。そのさじ加減に頼りきった政策に逃げていても核戦争の危機から逃れることはできません。
それが出来る唯一の方法が核廃絶すること、核なき世界を構築することです。

論理的にこの考え方を検証してみましょうか。各文章を引用しやすいようにナンバリングさせていただきますね。

①現実としてロシアがウクライナに対して核兵器使用をほのめかしています。
②ウクライナが核保有していたとしても、ロシアが核使用するかどうかはロシアのさじ加減でしかありません。
③つまり持っているだけで核戦争は起こりうるということです。
④そのさじ加減に頼りきった政策に逃げていても核戦争の危機から逃れることはできません。
⑤それが出来る唯一の方法が核廃絶すること、核なき世界を構築することです。

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①②は事実に基づいた「前提」です。ここに反論の余地はなく正しいです。
③は私流に言うなれば、前提から結論につなげるための「展開」の部分ですね。これも正しいです。「起こりうる」という表現が素晴らしい。「絶対に起きる」という断言ではないのでここまでは反論の余地がありません。

私が疑問に思うのは④です。たしかに「ロシアの核兵器の使用はロシアの匙加減」というのは事実ですが、その「ロシアの匙加減」に「ウクライナやウクライナの支援をする国が核兵器を持ってるかどうか」「核兵器を使ってきそうかどうか」という外部要素が重大な影響を及ぼすわけです。これこそがまさに「核抑止論の1番の根幹」なのですが、筆者の方はうっかりなのか意図的なのかそこに言及されていません。

ではなぜロシアが今即座に遠慮なく核をぶっぱなさないのか?」の理由を考えていく必要があります。この筆者の方は「さじ加減(ロシアの事情)」としていますが、まさに、今ロシアが核を使ってこないのは「抑止効果によるものでは?」というのが核抑止論者の信じるところでしょうから、「匙加減説」では説得力に欠けるわけですね。

それこそロシア指導者の匙加減ですから、現在の敗勢に絶望して、やけっぱちになって核をぶっ放す可能性はゼロにはなりませんし、できません。そんな魔法みたいな方法はないんです。

あ、なお、私は消極的な核抑止論者です。絶対に核抑止力で防げるとは思いませんが核抑止力で「核戦争の危機を下げることは結果的に出来ている」とみてます。

ただ少なくとも⑤でおっしゃる「唯一の方法」という断言はできませんしいただけません。なぜなら「他の方法がすべてダメだという立証が出来てません」から。そもそも核抑止論の不可能1つですら立証できてないです。

核抑止論がインチキ=全く無意味と言いたいのであればその立証は不可能に近しいでしょう。単に「ロシアの匙かげんだから」というだけでは不十分です。

なぜか?ロシアが今すぐに核を用いない「核抑止以外の理由」をすべて列挙し検証する必要があるからです。今後占領するであろうウクライナの資産価値が暴落するとか、ロシアの軍部が内部で抵抗してるとか様々な「可能性」はあるでしょうけれど、それこそすべて検証するのは不可能に近いわけです。私は不可能に近いことはしない主義です。

とはいえロシアが現在で不利なウクライナ情勢で核をぶっぱなさない主たる理由は「核抑止論」によるものだとは「思います」よ。立証はしませんし強弁もしませんが。「私がそう思ってるだけ」です。

  • 好きな異性が出来たとして相手が自分を好きになってくれるかどうかは「結局相手の匙加減次第」というのは間違いではない。けれど「相手の好みに近づいて自分を磨く」ことで相手の匙加減に影響を与えることはできるわけで。たとえばオシャレをしたり能力をあげたり稼げるようになったり。その努力による影響という視点が冒頭の理論には欠けているわけです。


CIA(内部監査人)や行政書士資格から「ルールについて」、将棋の趣味から「格上との戦い方」に特化して思考を掘り下げている人間です。