シノビガミ監査シナリオ

*今回の記事は内部監査、もしくはTRPGのシノビガミの少なくとも片方は理解していなければ訳が分かりにくいです。私の記事はただでさえ編集なしの思考垂れ流しなので分りづらいんですけど。それでよければ読み進めてください。


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唐突に監査における話をシノビガミというルールで表現できるんじゃないか?と思い立った。監査に関するストーリープロットはあるんだけど、いざ文章で表現しようとするとなかなか難しい。プロの文章書きのようなスキルも経験もないんだからまあ当然かもしれないが。ただ、TRPGの「シナリオつくりの手法」ならかれこれ25年やってるわけだから、いけるんじゃないかと思った次第。モノは試し。やってみようか。

・・・あ、速水螺旋人さんの「大砲とスタンプ」の影響は少しあるかも。あちらは漫画での表現で経理や管理系っぽいけど。

まず題材は在庫監査(上場企業であれば内部統制の問題。財務諸表の虚偽表現になりかねない。納税を正確に行えないリスクがある)。在庫で多い問題として以下の3つを用意してみた。

●その1 簿外在庫=帳簿に乗ってない在庫。

例:工事施工業者は現場に余分にネジを出庫して持っていく。現場でねじが1本足りなくて工事が遅れたらえらいこっちゃだから。当然あまるわけだが、その余りや端材を持って帰ってきて備蓄するケース。売り物にできないから商品在庫には戻せないし、戻すのも邪魔くさい。かといって捨てるのはもったいない。ゆえに倉庫に帳簿に乗らない在庫がたまるという次第。

発見方法:帳簿を持って倉庫に現調に行く!一つ一つ現品を当てはめて確認する。帳簿の時点で目星をつけられないのが厄介。こいつらは当然帳簿に載ってないからね。とはいえ大型の案件の後とかならほぼ確実に見つかる。倉庫を回る時は全体見取り図をもらえば目星をつけやすい。隠したいものを隠す方針は大まかに2系統。「目につかないところ」か「偽装する」かだ。

捻ったパターンでは外部業者の倉庫に預けてるなんてーのもある。もっとひどいと監査が来るのを予見して大型トレーラーで道路上に逃がすとかね。

●その2 データ在庫=データ上だけ存在する在庫。

例:取引業者に頼まれてカラ売上した場合、金銭を支払うのと同時に商品をもらわなければおかしなことになる。(だから公共団体も複式帳簿にしないとダメなんだよね。単式だとこういうのが発見できんのだよ)で、実際に商品があれば問題ないが、商品はない場合、データ取引上だけの商品在庫が発生する。

発見方法:簿外在庫とほぼ同じ。簿外在庫よりも帳簿の時点で目星をつけられるのはラク。ただし「ないという証明」は悪魔の証明なのが大変。だから立証責任はこちらで背負わないようにする。期日までに担当者に提出させるのが良い。

簿外在庫は実物○、帳簿×。データ在庫は実物×、データ○。

鋭いあなたは何か気づきませんか?、そう。2つを組み合わせるとつじつまが合ってしまう場合があったりするのよ。かたやデータ上の登録という魂がほしいゾンビ、こなた実体という身体がほしいゴースト。魂と肉体が揃えば一体の完全体ができあがる次第。

・・・まあ「健全なる精神は健全なる身体(しんたい)に宿る」とはならず、療法不健全だけどね。これを完璧な精度でやられると見抜くのは相当困難だけど、「魂(帳簿)」と「肉体(実物)」の不適合を攻めればどうにかなるもので。

●その3 預り在庫

例:取引先との力関係で預からされているもの。無償で預かれば「利益供与」でアウト。倉庫業免許がないのに預かるのは違法な場合もあるし、もし火事などで焼失した場合の責任問題、危険負担もややこしい。

発見方法:データ上での目星は「品目」でつけることが可能。普通、自社が持つ必要のない品種であれば預かりものの可能性は高い。倉庫に現調に行っても実物はあるので即断はできない。

この預り在庫をつぶすには、モノの由来を知ったうえで預かりの契約書や覚書をちゃんとかわしてるかどうかである。

上記の表現でいえば、肉体も魂もあるんだが、それ全体が仮そめのもの。ホムンクルスだろうかね。

さて、在庫監査をシノビガミのシナリオにしたててみましょう。

昔作った「人狼シノビガミ」のシナリオ、およびランダムシナリオ作成方式である「シノビガミ殺人時間」のプロットが役に立つ。

普通にゲームのシナリオを作る場合は原則的にプレイヤーは善玉で、悪玉の側のやってる悪行や問題をいかに解決し、とっちめるか?というのがほとんどになる。だが、PvP(プレイヤーVSプレイヤー)上等のシノビガミならば犯人役もプレイヤーに背負わせることができる。PvPというだけならばシノビガミと同じくらい好きなルールであるジャイアントアレージでも組めそうなんだけど、ジャイアレは「シナリオランダム作成」まで含めて一つのルールなので、私の介入する余地がないわけで。

時間がある昔は従来通りプレイヤー同士が協力して困難を乗り越えるルールやシナリオ中心に遊べてたけど、時間がない最近は素早く盛り上がれるPvPが専ら主流になっている。

PvPって実質、カードゲームやボードゲームと同じで、同等条件のプレイヤー同士のの分殴り合いだから、事前にバランス取りの準備をさほどしなくとも盛り上がれるんですよね。たぶん。将棋や人狼は言うに及ばず対戦格闘のスト2があれほどのブームになったのも対CPUではない「同等の条件のPvP」だったからでしょう。…私の大好きなボクサーキャラは性能的に異様に不利だった気もするけど(笑)。もとい、ボクサーは「性能的に不利だからこそ愛するようになった」なので、因果関係が逆転した文章で誘導してますな。ボクサーキャラの悲哀について書きだすとそれだけで1か月くらい続きそうなので、その願望は抑えるとしまして<いや、強いキャラで勝っても当たり前でしょ?弱いキャラで工夫してどうにかあがくことにこそカタルシスがあるわけで。スト2も将棋も「格上にヘンテコな工夫で挑みあがく」という根本が変わらないw>。

まず、「表の使命」はほぼ全員共通。「あなたはある組織の組織員である。」としておいて、「裏の秘密」でそれぞれの役割を割り当てる。必要なキャストは・・・

●<1 犯人> この人がいなければ話が始まらない。この人の真の使命は「①期間内で発覚を避けて逃げ切る」「②発覚したとしても証拠(プライズ)不十分で摘発を避ける」「③摘発されても監査員を論破してごまかす」の3段階の目標でしょう。①や②が容易に行えてしまうとゲーム的に盛り上がらないので、普通は③になるようにバランスを組む必要がありますな。監査のリアリティという意味では①を抜けるかどうかがメインですが、ゲームとしてのも盛り上がりを重視しないとあかんので。

●<2 監査人> 影あるところに光あり。ルパンあるところに銭形あり。ジェリーあるところにトムあり。真の使命は「証拠のプライズを抑えたうえで犯人を摘発すること」でしょう。わかりやすい。

なおメインフェイズの数々は事前調査に該当し、クライマックスフェイズの殴り合いは「糾弾会議」と解釈。

●<3 幹部黒>
犯人役の上役など、事件が発覚するとダメージを負うであろう人。もしかしたらこちらこそが黒幕というパターンもありか? 自分がダメージを受けないのが主眼なので発覚が明らかになったらトカゲのしっぽ切りにはしるかなぁ。

●<4 幹部白>
無関係の幹部。こちらは監査人を支援して事件解決に向かうのだけど、公表の仕方という意味では監査人と対立しそうな感じ。監査人に糾弾はさせるもののプライズは自分が抑えて、情報公開については支配権を持とうとする感じ。

【対立軸としては】
発覚の賛否 犯人と幹部黒は反対 監査人と幹部白は賛成
証拠の保持 全員が証拠(プライズ)を保持したいと考える

プレイヤーの利害がぶつからなければPvPにならないので対立軸は重要。特に私は1つよりは2つくらい対立軸があるほうが好みか。対立軸1つの争奪戦方式って有利不利がはっきりしすぎてしまうので。2つあると対立軸Aで不利でも、対立軸Bで頑張ろうというゲーム的なモチベーションを保てると思うので。

【必要な情報】
必要な情報は以下の通り。デザインによって「情報」にするか「プライズ」にするかを決めていく。「情報」は一度知ってしまえば基本的に消すことはできないもの。「プライズ」は保持が重要で争奪戦の材料になりえるもの。

●プライズ1 在庫帳簿(オリジナル)
重要な証拠。これと現物を突き合わせることで摘発が可能。
初期は「犯人」が所持するプライズだが、他のPCが「よこせ」と言ったら無抵抗で渡さなければならない。むろん、「犯人」や「プライズ」は調査するまでは非公開情報。プライズの内容のみならず、プライズを保持してる事実が非公開情報。無抵抗譲渡は最初の1回のみで、以降は通常のプライズのようにある場所が分かったうえで争奪戦が可能。

●プライズ2 倉庫のカギ(オリジナル)
重要な証拠その2。幹部黒が所持。やはり非公開情報であり、1回目は無条件譲渡がある。扱いは在庫帳簿に準じる。

●情報としての扱い
「在庫帳簿」「倉庫のカギ」は1度手に入れレ場、その後、争奪戦で奪われても「現調(現場調査)」は可能になる。多分、入手した時点でコピーを取るのだろう。ただし、証拠能力はオリジナルでなければダメとする(リアルではコピーでも相応に証拠能力はあるけれど、コピーにまで証拠能力を万全に認めると悪役が降りすぎるので)


・・・とりあえずここまで思いついたけど、楽しく遊べるにはまだ色々と不足してる。現場調査の扱いをどうしようかなぁ。あと監査人や幹部白にも攻められるポイントがなければフェアじゃない気もする。やはり政治的圧力などの特技が悪役に必要かもしれない(笑)。あと、ダウトをかけた時に、カラぶった場合には逆転裁判のようにペナルティをつけるとかかしらねぇ。


CIA(内部監査人)や行政書士資格から「ルールについて」、将棋の趣味から「格上との戦い方」に特化して思考を掘り下げている人間です。