ポール・バトラーを評価する

■「倒れなければいいのか」井上尚弥の苦悩 旅立ちを決意したKO勝ち
(朝日新聞デジタル - 12月14日 06:05)
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別にアンチとか逆張りではなくて(笑)。

昨日の井上尚弥選手VSポールバトラー選手、当然ながら井上選手を応援していたし勝利も確信していたが、格上相手に戦う経験が多かった身としては「格下が格上と戦う」「奇跡の逆転狙い」という意味でバトラー選手がどんな作戦を用いるかを注視していた。

結論から言えばバトラー選手は最善を尽くし「とても良い戦い方だった」と評価している。

誰が何と言おうが、卑怯だとかつまらないだと言われようが、当の対戦相手に腕を後ろに組んだ挑発をされようが「ガードを固めて致命傷を避けつつも隙を狙う」という意味では、ほぼあれ以上は望むべくもないだろう。最善を尽くしてなお敗北するというのは格上との戦いではよくあることだ。

タイマンの勝負を考える場合、何も考えないのなら「自分の全力を尽くす」というのがとりあえずの正解だ。だが、明らかに相手が格上の場合、相互に全力を尽くすと格下は吹っ飛ばされる。

ドネア2やロドリゲス戦などがまさにそれで、彼らは強者であったがゆえに勇敢にも真っ向勝負を挑み、より格上の強者である井上選手にともに早々に敗れ去った。はた目には「スリルのある濃密な2ラウンド」ではあったが。

一方で昨日のバトラー選手は「自身がそこまでの器ではない」と認め(バトラー選手はロドリゲス選手に判定で負けてるレベルなので)「まずは短期決戦を避けて長い勝負に徹する」という方針を定めたのだろう。

そしてブーイングや批判、徴発を受けても自分のスタイルを貫いた。私がバトラー選手のトレーナーでもほぼ同じプランをすすめる。

格下が格上相手に間違い(奇跡)を狙うには

「相手(格上)のペースを乱す」

これに尽きる。

「自分の全力を尽くす云々」はスポーツマンシップとやらに任せておけばよい。そんなお行儀のよい「いつも通りのこと」をしていては奇跡は起こせない。(いつも通りのことでは勝てない相手だから「格上」なのだ。

ワールドカップにおける日本がドイツやスペインに勝った試合などもこれに近しい。

基本は「ディフェンシブに戦いチャンスを待つ」そして「ときおり意表を突くタイミングで仕掛ける」のもいいだろう。まあ、昨日の井上選手に奇襲を仕掛けたところで抜群の集中力でいなされるのがオチだろうが。

ということで井上選手に「ノーガード挑発をさせた」のは、勝利にこそ結びつかなかったものの、バトラー選手の一定の成果だと評価している。ノーガード挑発の際にガードを固めつつ突進するくらいはしてもよかったかもしれないが。

勘違いしてはいけないのは「格下が最善を尽くしたとて必ず勝てるわけではない」と
いうことだ。だからバトラー選手が敗れたとしても彼が最善を模索したことが全否定されるわけではない。

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CIA(内部監査人)や行政書士資格から「ルールについて」、将棋の趣味から「格上との戦い方」に特化して思考を掘り下げている人間です。