当科の分子標的薬使用状況
当院は、エールホームクリニック、エールホームクリニック長岡の両院ともに、日本皮膚科学会の乾癬分子標的薬使用承認施設(以下、承認施設)認定を受けています。本コラムでは、当科における分子標的薬による乾癬、アトピー性皮膚炎の治療実績について報告したいと思います。
分子標的薬使用承認施設
近年、乾癬やアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患に対して、新規治療薬である分子標的薬が次々と認可されています。これら分子標的薬の登場によって、既存の治療でコントロールすることが難しかった患者さんに対して治療選択の幅が大きく広がりました。
高い治療効果と安全性を兼ね備えた分子標的薬が次々と登場していることは、患者さん、医療者双方にとって朗報です。その一方で、分子標的薬の使用に際しては、的確な診断に基づいて患者さんの病状評価をしっかり行った上で投与の可否について検討することが重要です。
そこで日本皮膚科学会では、乾癬に対する分子標的薬の使用、特に新規導入については一定の要件を満たした施設に対して投与を承認しています。
2024年7月現在、承認施設は全国に約1,000施設あります。新潟県においては、17施設があり、内12施設が総合病院、5施設がクリニックという内訳です。県内においてもクリニックの承認施設が増えており、患者さんにとっては望ましい環境が整いつつあるといえます。
当科の治療実績
当科の治療実績をグラフで示します。実績は皮膚科を開院した2021年4月からコラム執筆時点である2024年7月までの期間投与データをもとに作成しました。
乾癬・化膿性汗腺炎
主に乾癬に対しての分子標的薬の投与件数は合計276件であり、内、維持投与件数が254件、当院での初回導入が8件、製剤変更投与が14件でした。
製剤別には下記のグラフの通りの内訳の通りでした。クリニックに通院される患者さんでは、投与間隔が長く、利便性と効果を兼ね備えた抗IL-23抗体製剤の投与が好まれる傾向や、内服薬の投与件数が増えている傾向が明らかとなりました。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎に対しても、2018年から抗IL-4/13抗体であるデュピルマブが使用できるようになりました。以降も続々と新規の分子標的薬が開発・認可され、重症アトピー性皮膚炎に対する治療の選択肢が広がりつつあります。
当科でも積極的にアトピー性皮膚炎に対して分子標的薬を使用しており、投与件数は合計127件でした。内、維持投与件数が113件、当院での初回導入が13件、製剤変更投与が1件でした。
製剤別には下記のグラフの通りの内訳でした。最近の傾向としては、乾癬と同様、内服薬の投与件数が増えている傾向があります。
まとめ
分子標的薬の登場により、患者さんの病状に合わせた治療法の選択が可能となり、治療効果の向上が期待されています。
当科でも、分子標的薬を用いた乾癬およびアトピー性皮膚炎の治療を行っております。これらの新規治療によって、これまでの治療だけでは病状をうまくコントロールしきれなかった患者さんに新たな選択肢を提供できるようになりました。
治療にあたっては、適切な診断と病状評価を行った上で、安全な治療を提供していくことが重要であると考えます。今後も、新規治療法をはじめとして最新の知識を取り入れる機会を積極的に作っていきたいと思います。
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