熱中症対策に潜む罠、水中毒

今年、2020年はコロナウイルスから始まり、様々なことが起きています。数十年に一度の豪雨が降り注ぐ梅雨、日本の観測史上で最高気温である41.1度が記録され、世界に目を向けるとアメリカカリフォルニア州で近代的な観測機器を用いて観測史上で最高気温54.4度も記録されました。人間が今までおこなってきた行動に対する地球の免疫反応なのだろうか?そんなことにも感じてしまう異常事態です。そんな中、今ニュースで取り扱われる話題に熱中症があります。この記事の直近1週間(8月10日〜16日)の熱中症による救急搬送者数は12,804人、コロナウイルスのPCR検査陽性者数は7,281人と、毎年起こっている熱中症の方が人数が多いという状況です。毎年この時期は気をつけましょうと注意喚起がされるものの10年くらい前と比べここ数年は搬送数や死亡数が増えています。

熱中症って何?

高温多湿な環境に、私たちの身体が適応できないことで生じる様々な症状の総称です。大別すると下記の4つに分けられます。

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出典:https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/heat-disorders/type/


熱中症をの要因は?

熱中症を引き起こす要因は3つあります。
①環境、②身体、③行動で、この組み合わせにより起こります。
環境とは気温やエアコンの有無、急な温度変化などのことです。
身体とは年齢や基礎疾患の有無、コンデイションの悪さ(寝不足や二日酔いなど)などのことです。
行動とは運動の強度や作業時間・場所、水分が取れない状況などのことです。


熱中症のメカニズムは?

ざっくりお伝えすると外部環境に適応しようとして起こる身体内部環境の動きが限界をむかえたことによる反応です。

もう少し詳しくお伝えしますと、私たちの身体は体温という言葉がある通り、温度があります。生きるためにおこなっている身体内部の働きにより産熱されたものが体温です。身体は内外部の環境からの刺激に大きな変化を出さないように一定に体温などを保とうとします(ホメオスタシス)。熱中症の場合は外気温の高まりや運動することによって体温上昇が起こり、それを元に戻すために放熱しようとします。その際の体の働きとして抹消血管の拡張をおこない皮膚直下の血液量を増やすことや、汗を作り出し蒸発させることで体温を下げようとします。この働きは正しく身体が作用してくれているからこそ起こることで問題ないのですが、これが過剰に起こることで熱中症の症状が出現します。

対処方法や予防方法は?

熱中症になった際の対処方法は

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出典:https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_checksheet.php

予防方法はざっくりお伝えすると涼しい環境での活動を心がけ、小まめな水分補給を行うこと、日頃からコンディションを整え、急な激しい運動は行わないことです。

さて、ここまでタイトルとは無縁のような内容を説明してきましたが、本題に入りたいと思います。この対処・予防方法の中にある水分補給がニュースでも話題になっていたことがあります。それは熱中症予防・対処に水分を取りすぎると水中毒になる危険性がある!!ということでした。

水中毒

初めてこの言葉を耳にされた方は水に中毒とかあるの???
と思われたかもしれません。

安心してください、水自体に中毒性はございません

じゃあどういことなの?

ステッドマン医学大辞典によると
「水を体内に入れすぎたために生じる代謝性の脳障害」とのことです。

つまりどういうこと?


それは熱中症のメカニズムで説明した放熱システムが関係します。メカニズムの発汗の部分をもう少しだけ詳しく説明します。放熱するために私たちは汗をかいていますが、その際に汗と一緒に身体に必要な電解質(多くはナトリウム)も一緒に体外に排出されています。そうすると身体の中にある水分と塩分(電解質:ナトリウム)は少ない状態です。そこに水を大量に飲むと体内の水分量は増えますが、塩分が変わらないため体内全体としては濃度が薄くなります。さらに細胞の内と外で考えた場合も濃度差ができ浸透圧が生じます。これにより普段の細胞内・外の濃度に整えようとしますが、塩分が不足しているため普段の細胞に適した濃度にならず細胞が生きにくい環境になります。これが水中毒と呼ばれる状態であり、こうなると意識障害や痙攣発作、嘔吐、多尿、錐体外路症状、発熱、自律神経症状など様々なことが起こり、最悪の場合は死に至ります。

この水中毒は精神疾患にたずさわる現場では、よく目や耳にします。それはなぜかというと抗精神病薬の副作用に口渇(抗コリン作用)というものがあり、その状態を呈する時に通常の行動として喉が渇いたと感じれば水を飲みます。それが精神疾患の病状と組み合わさり飲水行動が慢性化することがあります。そうなると際限なく水を常時飲むため、多い方では水だけで5〜6L飲まれることもあります。なのでよく現場では目や耳にするということですね。

まとめ

今の時期は熱中症に気をつけなければなりませんが、その注意喚起にも注意が必要です。善意で安易に伝えるのではなく、水中毒並びにその方の特性を熟慮しながら伝えることが必要ですね。水分を補給の際は塩分・糖分も適度に摂取しましょう!!
※通常の運動で脱水などが起きていない時であれば、某スポーツ飲料と水を1:1で割ると吸収が早くなるので良いかもしれませんね。


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