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アベノマスク

「ウィルスの大きさは約0.1μmしかない。スカスカのマスクではウィルスは筒抜けだからマスクをしても意味がない」

このような主張をしている人が「専門家」を自称する人の中にも見うけられますが、彼らは微生物学においては「素人」であると言わざるをえません。

細菌の大きさはウィルスの10倍の1μm。これを除菌する為にはポアサイズ0.1-0.5μmの薄いメンブレンフィルターを使います。

培養液等を除菌する時は圧力をかけてこの膜を通過させるのですが、0.5μmならまだいいのですが0.1μmだとすぐに目詰まりしてしまいます。

この原理でウィルスを除菌するには0.01-0.05μmのマスクを使う必要がありますが、こんなマスクをしたら通気が悪くてほとんどの空気は膜を通過せずマスクと顔の間から入ることになります。マスクなんて無意味なのです。

「綿栓」を御存知ですか?

綿栓:山下秀行、生物工学,89, 606 (2011)より転載

微生物を培養するときに使う「綿の栓」ですが、雑菌が入るのを防ぎ、かつ、通気は確保できる優れものです。ひと昔前は微生物学教室の門を叩いた学生は綿栓作りから修行したものです。

微生物の培養に通気性の確保は必須です。「綿栓」のかわりにメンブレンフィルターで密封したら微生物は死滅します。同様にメンブレンフィルターのマスクで口と鼻を密封したら窒息死するでしょう。

無菌的に生物を生育するには通気性を確保しつつ細菌やウィルスの侵入を防ぐことが必須の条件となります。

「綿栓」は布団綿で作ります。繊維の隙間は細菌の大きさよりもはるかに大きいのですが菌は入りません。菌が入らないのは隙間が小さいからではなく微生物やこれを運ぶ微小な水滴や粒子を吸着するからです。

「ゴキブリホイホイ」をゴキブリが通過できないようなものです。

たまに根性のあるゴキブリは脱出しますが、これは「廊下」が短いせいです。細菌の大きさは1mmの1/1000。細菌が1mmの布を通過することは3cmほどのゴキブリが30mのべとべとの廊下を通過することに匹敵します。脱出は絶望的ですね。

「布マスク」の効果も「綿栓」と同じです。繊維の隙間がウィルスよりも大きくてもいいのです。むしろ通過できないと困るのです。

通過する過程でウィルスがマスクに吸着するからです。細菌の1/10の大きさのウィルスにとって厚さ1mmの布マスクを通過することは、ゴキブリが300mの「ゴキブリホイホイ」を通過することに相当します。

仮にゴキブリ100匹が体長の10倍の30cmのゴキブリホイホイに入ったとします。根性で粘着液から抜け出すのもいるし、くっついたゴキブリを踏みつけて通過するのもいるかもしれません。

そんな通過率を10%とすれば、無事に最初のゴキブリホイホイを通過したゴキブリ10匹も、次にまた30cmのゴキブリホイホイがあれば10%がトラップされて1匹しか通過できないことになります。さらにもう1つおけばこの1匹もトラップされて100匹いたゴキブリはゴキブリホイホイ3つで完全に駆除できることになります。

最初のゴキブリの数を$${N_0}$$、単位距離あたりの通過率を$${p}$$、ゴキブリホイホイの長さを$${x}$$とすれば、通過するゴキブリの数$${N}$$は次の式に従って指数関数的に減るのです。

$${N=N_0p^x}$$

$${N_0}$$をマスクに入るウィルスの数、$${p}$$をウィルスの10倍の長さの1μmあたりの通過率、$${x}$$をマスクの厚さとしても同じ式が成り立ちます。

マスクに1億匹のウィルスが入り、1μmでウィルスが1%しか吸着されないとしても、厚さ3mmの「アベノマスク」を通過すればマスクを通過できるのは、$${1}$$x$${10^8}$$x$${0.99^{3000}=8}$$x$${10^{-6}}$$匹。十分すぎるくらい完全にウィルスを除去できます。

厚さ0.4mmの不織布マスクなら、$${1}$$x$${10^8}$$x $${0.99^{400}}$$=$${1,795,055}$$匹。100万匹以上通過してしまいます。アベノマスクの2000億分の1の効果しかありません。

通気性のよいスカスカで分厚いアベノマスクは薄い不織布の使い捨てマスクよりも優れたマスクと言えます。

「アベノマスク」の繊維の隙間がウィルスよりも大きいから「役に立たない」と言っている「専門家」は微生物学を下足番あたりからやりなおさなくてはいけません。

最近ではマスクが感染拡大にほとんど効果のないことが明らかになり世界中でマスクの着用を義務づけることをやめているようです$${^{1)}}$$。

これはマスクがウィルスの除去をできないからではなく、コロナというウィルスが空気を媒介として感染するウィルスではないからではないでしょうか?

空気感染するインフルエンザは2020年のコロナの流行以来ぱったりと流行が止まっているのです$${^{2)}}$$。コロナは消化管に存在し、糞便から半年もの長期にわたって排出される糞口感染であることが示されています$${^{3)}}$$。マスクがコロナの感染防御に効果がない所以ではないでしょうか。

しかし、80%の国民がワクチンを接種した日本では今こそマスクを着用することが必要になってきたのではないかと思われます。

ワクチン接種者から排出されるウィルス粒子やスパイク蛋白を含むエクソソーム$${^{4)}}$$やホルムアルデヒドなどの有毒物質$${^{5)}}$$は空気を媒介して鼻や口から体内に入るからです。

マスクによってウィルスと同様に吸着除去できるはずです。近頃は、混んでいる電車や人ごみでは加齢臭$${^{6)}}$$のような悪臭がして気分が悪くなったり、頭痛がしたりすることがあります。

これはワクチン接種者からのシェディングである可能性があります。アベノマスクを着用することにより防げるかもしれません。

もちろん、風邪をひいて咳やくしゃみをしている人はマスクを着用すべきです。できればそういう人は風邪をなおしてから外出してほしいのですが。

結局、コロナの感染拡大の防止は今まで日本で普通にやっていた常識的なやりかたでよいということになります。

1) Spira B. Cureus doi: 10.7759/cureus.24268
2) 感染症週報、2021年第51,52週
3) Natarajan et al, Med doi: 10.1016/j.medj.2022.04.001 (2022)
4) 荒川 央、note 2021.10.24
5) あらんが note 2022.3.3
6) Wikipedia 加齢臭