【感想】『わかったつもり~読解力がつかない本当の原因~』
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【感想】『わかったつもり~読解力がつかない本当の原因~』

【国内MBA/"社会人"博士/体験記】白山鳩

こんにちは、白山鳩です! クルッポゥ!

マガジン『本を読んだら鳩も立つ』での本のご紹介です。


前回の記事はこちらです。↓↓↓


今回は、西林克彦さんの『わかったつもり~読解力がつかない本当の原因~』を通して、

「どうして人はわかったつもりになるのか」

「どうすれば『わかったつもり』から脱出できるのか」

を見ていきます。


1つの記事あたり、だいたい5分で読めますので、お気軽にスクロールしてみてください!


「わからない」と「わかる」

今回紹介する『わかったつもり』が紹介しているのは次のような内容です。


文章を一読して「わかった」と思っていても、
よく検討してみると、「わかったつもり」に過ぎないことが多い。

「わからない」より重大なこの問題をどう克服するか、
そのカギを説いていく。


同書では主に、

文章を読むときの「わかったつもり」について解説してあります。


今回の記事では、これに加えて、

「現状分析」「問題解決」の落とし穴にも触れていこうと思います。


さて、同書では文章を読解するときの

わからない

わかった

といった概念は、次のようなイメージで説明されています。


◆わからない
一文を読んでも、意味がわからない。
文の前後の関連が理解できない。

◆わかった
一文を読み終わって、理解できない点は無い。
文の前後の関連が理解できる。


ある例で考えてみましょう。

「小銭がなかったばっかりに、車を持って行かれた」

このままだと、なんだかピンとこない文章かと思います……。


つまり、普通の人は、

「わからない」

状態にあると言えるでしょう。


07_01_ぽかーん


ところがここに、

「いまいるのは、路上のパーキングメーターの車の前」

という文脈を補助線でいれると、途端に前後の関係性がわかってきます


ああ、小銭が足りず右往左往しているうちに、
レッカーされてしまったのか……

というわけですね。


このように、ごく普通の単語が並んでいる文章でも、

文脈がわからないためにピンとこないときが、

「わからない」

状態です。


逆を言えば、

文脈さえ見つけられれば、「わかる」状態になる、

というわけですね


「もっとわかりたい」と「よりわかる」

さて、文脈の力で「わからない」が「わかる」になる過程を見てきました。


人間というのは何にでも因果関係をつけたがるもので、

前後の文のつながりがわからない状態というのはムズムズするものです。


そんな状態を、同書は「もっとわかりたい」状態と表現されています。


さて、さきほどの「小銭と車」の文で行くと、

「パーキングメーター」

という文脈のおかげで、

わからないものがわかるようになりました。

一件落着です。


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ところが、問題はここからなのです。


01_05_ノーマル


みなさんの中には、ここからさらに、

「もっとわかりたい……!」

という欲求が湧いてきたでしょうか?


おそらくは、因果関係がわかったので、

「もうわかった、安心安心」

と、思ったことでしょう。


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さて、ここで「車の持ち主」の性格について、

深堀りして考えてみましょう。


そもそも、

「パーキングメーターに車を止めようと思っているのに、小銭が無い」

というのは、

「ちょっと、おっちょこちょいなところがありそうだ」

と言えるでしょう。


また、いくら小銭が無かったからといって、

ほいほいレッカーなどされるものでしょうか


もうちょっとJAFと交渉すればよさそうなものを、

どうも諦めが良すぎるようです

いや、交渉力がなさすぎる、と言えるかもしれません。


そう考えると、

「小銭がなかったばっかりに、車を持って行かれた」

という一文からさらに、

「車の持ち主はどうもおっちょこちょいで気弱な、
情けなさそうな人物ではないか」

という推測が立ちます。


このように深みが生まれていくと、

「小銭がなかったばっかりに、車を持って行かれた」

一文の前後の関係性が深まった、とも言えそうです。


これを同書では「よりわかる」状態と呼んでいます。


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「わかった」が「わかったつもり」になってしまう

さて……。

「小銭がなかったばっかりに、車を持って行かれた」

この一文を見たときの感想についての、

ここまでの流れを振り返ってみましょう


最初は「わからない(から、もっとわかりたい!)」と思っていました。


次に、「パーキングメーター」という文脈の力で「わかった」へと変わりました。

ところが、「わかった」と思ったがゆえに、

さらに「よくわかる」状態にはもう進めなくなってしまったのです。


このことを、同書は「わかったつもり」と呼んでおり、

「わかったつもり」には2つの種類があると説明しています。


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1つ目は、ここまで見てきたような、

「物足りない読み」

に留まってしまう「不十分な」わかったつもりです。


後から考えてみると、理解が不十分だったという状態です。

「わからない部分は無い」と安定していた状態に留まっています。


そして2つ目は、

「間違った読みをしてしまう」、

すなわち「間違った理解による」わかったつもりです


「わからない」→「わかった」となるとき、

文章の部分の読みが不十分だったり、間違ったりしていると、

「わかったつもり」になってしてしまう、

というわけですね。


わかったつもりになると、思考停止する

さて、ここからは、

一度「わかったつもり」になると、
そこから脱却するにはかなりの努力を要する

という点について、

ここまでの事例を、鳩オリジナルで発展させながら説明してまいります。


さきほど、「わからない」から「わかった」へと移行する際、

「パーキングメーター」という文脈を利用しました。


ところが、この「文脈」というのが曲者です。


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では、再び、あの一文を読んでみましょう。

「小銭がなかったばっかりに、車を持って行かれた」


いまの私たちは、この一文を読んで何を頭に思い浮かべるでしょうか。

(あ、パーキングメーターから、車がレッカーされていくよ……)
(ちゃんと家を出る前に、
財布に小銭が入っているか確認しとけばよかったのに、
車の持ち主はおっちょこちょいだなあ……)

初めてこの一文を読んだときとは、

まったく違う情景が頭を巡っていることかと思います。


しかしこのとき、もし仮に、この文章を書いた人から、

「実は、お札を小銭に崩したくてコンビニに入った一瞬の隙に、
エンジンかけたままの車を盗まれたんですよ。
いやあ、小銭がなかったばっかりに、車を持って行かれたんです。」

と言われたら、どうでしょうか。


みなさんの心に、ちらっとでも、

「そんなバカな!」
「後出しジャンケンなんて、ズルいぞ!」

という思いはよぎりませんでしたか?


しかし、「発想できなかった」という現実は変わりません


一度「わかったつもり」になると思考停止してしまい、

その他の可能性を発想するのが、非常に難しくなってしまうのです。


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わからない点がなければ、

「もっとわかりたい」とは思わなくなる。

そして、「わかったつもり」になる

というのは、ここでも効いてくるわけですね。


「わかったつもり」になるパターン

さて、ここからは、本書内で紹介されていた、

「わかったつもり」になるパターン

をいくつかご紹介しましょう。


○結果から「わかったつもり」:終わり良ければすべて良し

例えば、

「文章の内容がずっと暗くても、

最後がハッピーエンドだと、

途中の展開も、ずっとハッピーな内容だったように勘違いする」

といった、終わりよければすべて良し、はこのパターンです。


〇最初から「わかったつもり」:先決問題要求の虚偽の派生

例えば、

「仲がいいからケンカする(=ケンカするほど仲がいい)」

と思ってしまうと、その後どんなケンカの描写があったとしても、

「友人同士の魂のぶつかりあい」

としか思えなくなってしまうでしょう。


論理学では、このように、

先に結論を勝手に決めてしまうような論法を、

「先決問題要求の虚偽」

と呼びます。


〇「いろいろあるんだなあ」でわかったつもり

「わかったつもりになると、人はそれ以上考えなくなる」

というのは、これまで指摘されてきましたね。


「あの人にも、いろいろあるのよ……」

という言葉を使うと、

本当はどのような状況にあり、

どんな対策をすればよいかを分析できるかもしれないのを、

「いろいろあって大変だ」

で、片づけてしまいます。


また、仕事上で、

「グレーゾーンがいろいろあって嫌になりますよね……」

などと、口にするひとはいませんか?


たしかに、本当にグレーゾーンとなって決着がついていない事柄もあるかもしれませんが、

それ以外のただ難しい事柄であっても、

「グレーゾーン」の箱の中に放り込んで思考を止めている事例も、

多々見受けられます。


どうすれば、「わかったつもり」を防げるか

最後に、「わかったつもり」を防ぐための鳩の持論で終わりとします。


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1つ目は、「もっとわかりたい」と常に意識することです。

「わかった」というのは、安定的な精神状態と紹介されていました。

こうなるともう、「わかりたい」という欲求と無縁になってしまいます。


ということは、

「あ、わかった!」と思い、安心したときほど、

「矛盾や疑問はないか?」

と、立ちどまって考える必要があるということです。


常に、メタ的で不安定な立場から、疑問の気持ちを持つこと。


特に「〇〇みたいなタイプは××だからなあ」というのが口癖の人は、

人を特定の枠にはめようとする傾向があります


「趣味は人間観察」という人は、実際には、

「目の前の人間を、自分の頭の中の分類に当てはめている」

だけだったりします。



2つ目は、「人間にはどんな認知バイアスがあるのか」を知ることです。

ある事柄から、正解に近い答えを導けるように類推することを、

心理学や行動経済学では、「ヒューリスティックス」と呼びます。

例えば、氷を見たら「あれは冷たいだろうな」と類推する、などですね。


ただ、この機能が予期せぬ方向に働くと、

「認知バイアス」といって、

誤った結論を招いてしまいます。


Wikipediaなどにも認知バイアスはまとめてありますので、

「人間にはどんな認知バイアスが備わっているのか」

を事前に知っておくことで、

「わかったつもり」を防ぐのに役立てられるでしょう。



最後は、「異なる視点」を利用する、ということです。

自分の中のヒューリスティックスや視点だけで物事を考えると、

視野が狭くなってしまいます。


そのようなとき、

「広く考える」ために役立つのが、いわゆる「フレームワーク」です。

3Cや4Pといったフレームワークは抜け洩れがないように考えるための道具ですので、視野を広げるのに便利です。


また、そもそも自分以外のいろいろな人の意見を聞くというのも、

手っ取り早く「異なる視点」を得るための方法です。


組織全体が「わかったつもり」になって大けがをしないためにも、

「多様性」が組織に求められている、というわけですね。


さて、ここまで3つのヒントを紹介してきました。

ただし、これらもまた、「わかったつもり」かもしれませんのでご注意を……。


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まとめ

さて、ここまでの内容を振返りましょう。

「小銭がなかったばっかりに、車を持って行かれた」

の文章から、「わからない」「わかった」「よりわかる」「わかったつもり」とはそれぞれ何かを確認しました。


また、「わかったつもり」にも、

○結果から「わかったつもり」:終わり良ければすべて良し
〇最初から「わかったつもり」:先決問題要求の虚偽の派生
〇「いろいろあるんだなあ」でわかったつもり

といった、いろいろなパターンがあることを見てきました。


そして、「わかったつもり」を防ぐために、

①「もっとわかりたい」と常に意識すること
②「人間にはどんな認知バイアスがあるのか」を知ること
③「異なる視点」を利用すること

という3つのポイントをご紹介しました。


以上、『わかったつもり~読解力がつかない本当の原因~』における、

「どうして人はわかったつもりになるのか」

「どうすれば『わかったつもり』から脱出できるのか」

でした。


次回は、『多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織』を見ていきます。

今回の「わかったつもり」を防ぐためのヒントになる話が出てくることでしょう、お楽しみに。

to be continued...


参考記事

「先決問題要求の虚偽」などの、論理学や詭弁についてもっと知りたい方は、こちらの記事をどうぞ!


○ヒューリスティックスによる認知バイアスの事例を知りたい方はこちらの記事をどうぞ!


参考資料

・西林克彦(2005)『わかったつもり~読解力がつかない本当の原因~』 (光文社新書)



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