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【失敗/組織事故】② エラーとルール違反の種類

こんにちは、白山鳩です! クルッポゥ!

マガジン『能ある鳩はMBA②  ビジネススキルで豆鉄砲』での、ビジネススキルにまつわる情報の紹介です。


前回の記事はこちらです。↓↓↓


今回は、引き続き失敗や組織事故に関連して「エラー」や「違反」とは何かについて見ていきます。

1つの記事あたり、だいたい5分で読めますので、お気軽にスクロールしてみてください!


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2つのエラーと3つのルール違反

エラーが起きるとき、エラーは2つの種類にわかれると言います。

①実行者が悪い
計画は適切であるが、計画通り行為を実行することに失敗

②計画が悪い
行為は完全に計画どおりであるが、計画自体が不適切


実行者がちゃらんぽらんだと、当然その行動はエラーになります。


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一方、実行者たちがまともでも、計画そのものに不備があると、結果はエラーにつながります。


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『三国志』において、自分の戦略眼に絶対の自信を持っていた武将・馬謖(ばしょく)は、山に陣を張るという計画を立てた結果、山の周囲を取り囲まれ大敗を喫してしまいます。


兵士たちが優れていても、兵士たちを動かす計画そのものに不備があると、それはエラーにつながってしまう、というわけですね。


01_02_ノーマル・バスト


さて、実行者に問題がある場合をもう少し考えてみましょう。

これは、

実行者が能力不足であるときと、

実行者がルール違反を犯しているときとがあります。


実行者がルール違反を犯すときには、ルール違反の3つのパターンがあるといいます。

①ルールがあることを知らない

②ルールを正確に理解していない

③ルールを理解していても守らない


①②は「過失」のルール違反……

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③は「故意」のルール違反と言えるでしょう

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「過失」と「故意」の間に大きな違いがあるのはたしかでしょう。


しかし「過失」「故意」いずれのルール違反も、

「事故にならずに無事に仕事ができた場合、

悪い成功体験からルール違反を繰り返すようになる」

という問題点を持っています。


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エラーマネジメントの基本原則

さて、ここまで2つのエラーと3つのルール違反を見てきました。

どんなに優秀な人間でも、過失か故意かのいずれかのルール違反を通して、最悪のエラーを起こしうるものです。

そんな「人はミスを犯す生きものだ」という考えを前提に、エラーマネジメントにはいくつかの原則が存在します。


①人間はどんなときでもエラーを犯しうるが、
 人間の働く条件を変えて不安全行動を減らすことはできる

たとえば、眠気を催す時間帯の作業の場合は、

事前に仮眠の時間を設けたり、

「眠ってしまった場合、額に巻いた剣山が刺さる」という恐怖心で眠気を予防したり

といった事例が挙げられます。


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このとき、別の労働災害を引き起こさないように注意してください。


②エラーを犯した人間を非難しない

人間は、何の遠慮もなく他人をつるし上げられる状況になると、ドーパミンがドバドバ出てくるそうです


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しかし、これまで何度も見てきたとおり、

「ヒューマンエラーは結果であって原因ではない」

というのが、失敗について考えるときの原則です。


「責任追及型」でエラーを犯した本人を詰めても、計画や組織風土が変わらなければ、別の人間が再びエラーを繰り返すだけでしょう。


また、「この組織は、ミスを犯すと詰められるぞ……」と広まれば、人々は自分のエラーを隠ぺいするようになり、組織には失敗の経験値が溜まらなくなります。


加えて、責任を追及された本人自身においても、

「次からは気を付けよう……」

という抑止力にはつながらないため、結果、再び同じエラーを犯してしまいかねないそうです。


プロセスと結果の区分が必要

さて、安全を守ろうとする組織では、

「一人ひとりがルールを順守しているか」

と、プロセスをコントロールしようとしがちです。


しかし、これまでも見てきたとおりエラーとは、

「①実行者が悪い」パターンと、

②計画が悪い」パターンとに分かれます。

そして、計画が悪いパターンの場合、実行者がいかにルールを順守してプロセスを守ったところで、エラーは発生してしまいます。


「死亡を伴う労働災害の発生数」

「休業を伴う労働災害の発生数」

といった、結果を表す指標を確認することも必要です。

 

ただし、結果を表す指標については、次のような指摘もあります。

・マイナスの指標が有効なのは、事故の発生率が十分に高い場合のみ

・標本数が少ないと、個別の事柄の原因要素がバラバラで偶然性が高くなる

軽微な事故が度重なるような職場の場合、

「事故の数が90%から80%に減りました!」

と、結果が意味を持つ一方、


「死亡を伴う事故の数が3件から2件に減りました!」

というように、元々の標本数が少ない事柄については、結果にだけ注目してもあまり意味がありません。


この場合は、

「実行者がどのようなプロセスを追ったのか」

「そもそもプロセスに問題はなかったのか」

と、プロセスに関する着目が重要になってきます。


「結果」「プロセス」を区分し、事柄に応じて使い分けろ、というわけですね。

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プロセスの事前点検:リスクアセスメント

さて、「結果」は事が起きなければ判断しようがありませんが、

「プロセス」は事前にその内容を点検することができます


このようなプロセスの事前評価は、「リスクアセスメント」と呼ばれ、リスクマネジメントの要素の1つでもあります。


どのようなリスクがプロセスの中に潜んでいるかを事前に見積もっておく。

そして、最悪の事態に至るシナリオを想定してその危険度を評価し、

優先して対処すべきリスクには前もって低減策を講じることにより、リスクを抑えこむ

というのが一連の流れです。


リスクアセスメントでは……

①不安全行為
②ローカルな現場要因(作業現場の計画、作業環境、要員体制、道具、教育、チームワーク、リーダーシップなど)
③組織要因

これらの項目に関して、事前に見積もりをするとよい、とモノの本には書かれています。


安全文化とは何か

事故をゼロにすることは何よりも難しく、これはいつでも達成できるものではありません。

そして、同じように難しいのが、「どのような経営環境であっても、安全性の高い方向に向かい、この状態を維持し続けること」です。


01_04_ノーマル


「経営状況が良くなってきたから、生産力を上げるための設備投資に回そう!」

「経営が悪くなってきているいま、安全に手を入れる必要なんてないだろ!」

と、まあ、安全にかかわる重大な事故を起こした直後でもない限り、経営者というのは放っておくと生産性や利益を追求してしまうものです。


事故が発生していない状態でも、

正しいデータを集め続ける情報に立脚した文化、

最前線の現場の人間が自らのエラーやニアミスを報告する文化が必要です。


安全文化とは、経営トップの性格や経営状況にかかわらず、安全性を最大にするという目標に向かってシステムを動かし続けるエンジン


だと、組織事故に関する心理学の大家ジェームズ・リーズンは言っています。


そしてこれは、コーポレート・ガバナンスの要諦そのものとも言えるのではないでしょうか。


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「安全」に関わる話を、自社のマネジメントやガバナンスに置き換えて考えてみると、おもしろいかもしれません。


以上、

「実行者と計画に関わる2つのエラー」

「過失と故意からくる3つのルール違反」

「エラーマネジメントの原則」

「結果とプロセスの区別」

「安全文化」

について見てきました。


次回は、引き続き失敗や組織事故についての記事です。

「報告文化」の重要性について見ていきます。

お楽しみに。

to be continued...


参考記事

脳科学者の中野信子さんの著書『人は、なぜ他人を許せないのか』を通じて、

「人をつるし上げる心理」

をまとめています。


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