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【抜粋】分かりやすい公用文の書き方

こんにちは、白山鳩です! クルッポゥ!

マガジン『本を読んだら鳩も立つ』での本のご紹介です。


前回は『最新公用文用字用語ハンドブック』に紹介されている事例を見ながら、

「文章を書くときに気になる用字用語の使い分け」について見ていきました。


そして今回も、公用文の手引書である『分かりやすい 公用文の書き方』から、文章の書き方を見ていきます。

公用文の書き方に関する本は、何冊読んでも勉強になるものですよ!


1つの記事あたり、だいたい5分で読めますので、お気軽にスクロールしてみてください!


『分かりやすい 公用文の書き方』とは

「前回も公用文の話をしていて、まさか今回も、公用文とは……」

「本は『2冊』あった!」

そうお思いの賢明なる読者の皆さんも多いことでしょう。


前回ご紹介した最新公用文用字用語ハンドブックは、様々な語について、あいうえお順に紹介してくれているところに特徴がありました。


今回ご紹介する『分かりやすい 公用文の書き方』は、

「主語と述語」

「漢字と平仮名」

といった具合に、事柄のルールごとに章立てしてあります


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さて、本の内容そのものとは直接関係ないのですが、「はしがき」に役所勤めの心意気が伺える一節がありましたので、簡単にご紹介しておきます。

この本のオリジナルである「公用文の書き方」は、私が地方公共団体に勤務していた時期に、職員の啓発を目的として書き下ろしたものである。

昔は、文書に厳しい幹部や年配の職員がいて、よく注意されたものだ
最近は、そういう人もいなくなって、文書も乱れてきた。という声を、よく耳にする。
そうした中で、私は、先輩方に習って文書の書き方にうるさく接していたのであるが、職員から言っていることを一回まとめてくれないかという依頼を受けた。
そこで、早速まとめてみようということで作ったのが、この「公用文の書き方」である。

初めてこの「はしがき」を読んだときには、いきなりの説教臭い導入に面食らった鳩ですが、

こういう志を持っている人がいるからこそ、我々も文書の書き方の基準を学ぶことができると思うとありがたいですね。


では、ここからは本書に書かれている内容の一部を抜粋し、ダイジェストでお届けします!


接続詞は平仮名で書く、ただし……

前回の記事の『最新公用文用字用語ハンドブック』でも、

「〇〇は平仮名で書く」

というルールが多かったですね。

どうでもいいですが、平仮名は『ひらがな』じゃないんですよね。


01_04_ノーマル


さて、接続詞のルールを見ていきましょう。

接続詞は、原則として平仮名で表記する。
あるいは(×或いは)
かつ(且つ)
したがって(従って)

ただし、いつものように例外もあります

ただし、次の接続詞は漢字で表記する。
又は、若しくは、及び、並びに


又は、若しくは、及び、並びに

「又は」「若しくは」は全く同じ意味に見えて、その実、ちゃんと使い分けがあるのです。

①基本は、「又は」を使う。
②「若しくは」は、「又は」があるときにしか使えない。
③「若しくは」は小さいグループ分けに使う

例を挙げてみます。

これから夕飯を作ろうと冷蔵庫を覗いたとき、牛肉と豚肉があるとしましょう。


すると、「又は」を次のように使います。

「夕飯には、牛肉又は豚肉を使おう」
(×「夕飯には、牛肉若しくは豚肉を使おう」)


01_02_ノーマル・バスト


さて、このとき「外食に行く」という選択肢があるとします。

すると、夕飯の選択肢は、

1)自炊(①牛肉or②豚肉)

2)外食

となりますので……

夕飯は、牛肉若しくは豚肉を使って自炊するか、又は外食にしよう

このように「若しくは」「又は」にも使い分けのルールがあるのです!


01_03_ノーマル・バスト・集中線


「箇」と「か」

「1か月」「3か年」などの「か」について。


〇漢字:箇
五箇年計画

〇算用数字:か
3か年分割

※箇の略字である「ヶ」は使わない


ビジネススクールの修士論文で、漢数字+箇所となっているところを「箇」と書いていた際、「か」とするよう指導教員から直されたときには、『分かりやすい 公用文の書き方』を示そうかとよっぽど思いましたが、
面倒くさいヤツと思われるのが関の山なのでそのままにしてしまいました。


03_02_悲しみ・バスト


平仮名で書くもの

本書では「漢字で書くもの」「平仮名で書くもの」一覧が載っています。

平仮名で書くもののうち、鳩が「ほ~ん」と思ったものを抜粋しますと……


・いちず(×一途)
・ふだん(×普段)
・見いだす(×見出す)
・むなしい(×空しい)
・もろもろ(諸々)


どうでもいいですが、かつての同僚で、中学生でもあるまいにやたらと漢字を使いたがる人がいて、

此方(こちら)、其方(そちら)

とメールに文字が躍っているのを見かけるたび、「おまえは奈須きのこか」と一人で思っていたことがあります。


07_01_ぽかーん



副詞は漢字、接続詞は平仮名、ただし……

さて、最後は再び接続詞の話に戻ってきましょう。

今度は、「副詞」と「接続詞」の比較です。


副詞は原則として漢字で表記するので、接続詞の場合と副詞の場合で表記が異なるものもある。

「さらに」
〇さらに(接続詞)
さらに、財政状況についても検討することが必要である。
〇更に(副詞)
財政状況について、更に検討することが必要である。


ちなみに、

〇接続詞
文の頭にきて、文と文をつなげる。なお、接続詞の後には「、」がつく。

〇副詞
「動詞」「形容詞」「形容動詞」を修飾する。

という違いがありますが……。


誰がこんなややこしい使い分けを考えたのでしょう


02_02_怒り・バスト


さて、そんな中、注意の必要な語として「例えば」「特に」が挙げられています。


分かりやすい 公用文の書き方』では、

「例えば」「特に」の2語は、接続詞ではなく副詞でしか使わないので、文頭に来ても漢字で書くし、「、」は打たない

としています。


ただし、日本語の研究で有名な一橋大学の石黒圭先生は、著書の『文章は接続詞で決まる』の中で、

「例えば」「特に」の両方を、それぞれ「たとえば」「とくに」と接続詞として紹介しています


言語学者がこういう紹介をしているのを見ると、「はしがき」の中で、

「最近は、そういう人もいなくなって、文書も乱れてきた。という声を、よく耳にする。」

と、やや強気な発言をしていたのが思い出されてしまう鳩です。


08_02_驚き


もっとも、『公用文の書き方』でも、副詞であるかどうかについては、

しかし、そうきめ付けてしまっていいのか、研究が必要である。

と、若干の迷いを見せるカワイイところもありますので、これ以上は追求しないであげましょう。


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というわけで、「例えば」「特に」の書き方については、皆さんでご判断ください


以上、『分かりやすい 公用文の書き方』に紹介されている事例でした。

今回は、

接続詞は平仮名で書くが、「又は、若しくは、及び、並びに」は例外
「又は」「若しくは」の使い分け
「箇」と「か」
平仮名で書くもの
副詞は漢字、接続詞は平仮名
ただし、「例えば」「特に」は自分で考えよう

といった内容を見てきました。


「最新公用文用字用語ハンドブック」と併せて手元に1冊置いておけば、あなたもきっと立派な公用文マスターです!


さて、次回は森博嗣さんの『諦めの価値』から、

「夢を叶えるためにも、諦めることに価値がある」

という逆説的なその主張を見ていきます。


お楽しみに。

to be continued...


参考資料

・石黒圭(2013)『文章は接続詞で決まる』(光文社新書)


・礒崎陽輔(2018)『分かりやすい公用文の書き方 改訂版(増補)』( ぎょうせい)


・瀬口至(2019)『最新公用文用字用語ハンドブック (間違いやすい用字用語の解説)』(夢の友出版) 





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