見出し画像

【議論/詭弁】⑥ 反論理的思考のための『論より詭弁』 その2

こんにちは、白山鳩です! クルッポゥ!

マガジン『能ある鳩はMBA②  ビジネススキルで豆鉄砲』での、ビジネススキルにまつわる情報の紹介です。


前回の記事はこちらです。↓↓↓


今回は『論より詭弁』の続きです。

「一般的には正しいと思われているが、思わぬ落とし穴がある」

「詭弁のように見えて、実際にはまともな考え方だ」

という例として、

・正しい根拠が多すぎてはいけない
・詭弁とは、自分に反対する意見のこと
・人と論とは別ではない
・問いは、どんなに偏っていてもかまわない

といった内容を見ていきます。


1つの記事あたり、だいたい5分で読めますので、お気軽にスクロールしてみてください!


なお、全て無料で読めますが、

「良い記事だったなあ」

と思っていただけるようでしたら、記事代をいただけると励みになります!


正しい根拠が多すぎてはいけない

議論ではつい、

「根拠が多ければ多いほど、正しさが補強される」

と考えてしまいがちですが、必ずしもそういうわけではありません。


論より詭弁』での事例を見てみましょう。


(学生を、奉仕活動に参加させるための根拠として)

a「社会奉仕は、現代社会に生きる者の義務である」

b「奉仕活動に参加したことが内申書に記録され、進学や就職に有利になる」


この場合、bの意見が追加されることで、

崇高な理念であるaの考えが汚されてしまっています。


このようなことは、現実社会でも見られますね。

例えば会議において、

自分以外の別の誰かが助け舟のつもりなのか意見を述べるものの、

自分が言いたかったこととは全く異なるとんちんかんなことを言われ、

かえって議論が漂流してしまうことがあります。


ビジネススクールの授業でも、

グループワークの発表の際に、きれいにまとまったプレゼンだったのに、

授業で爪痕を残そうとするグループ内の別の人間がめちゃくちゃな意見を発表した結果、

他の生徒たちから集中砲火を浴びるという様子をよく見かけます。


画像1


詭弁とは、自分に反対する意見のこと

『論より詭弁』では、

詭弁とは、
自分たちの仲間が使ったときは単なる言葉のあやで、
敵が使ったときのみ詭弁となるのである。

と解説しています。


他罰的な人間ほど、「自分への批判の声」=「攻撃」と見なすもの。

特に自分の心の奥底を見透かすような批判の声を聞いた場合は、

「詭弁だ!」とか、

「やっかみだ!」

などと処理する傾向にあるのでしょう。


画像2


「人に訴える議論」5つのパターン

ここでは、

「論理的思考最大の急所(弱点)」

と同書で述べられている、「人に訴える議論」について語られています。


「人に訴える議論」については、以前の記事でも取り上げました


画像5


以前の記事では、

「おまえが言うな」

という言葉に要約しましたが、

『論より詭弁』では、より詳細に5つの類型を用いています。


(1)「悪罵」型
ある人物の発言を、
その発言内容に対する批判によってではなく、
彼の人格等を攻撃することによって否定しようとする。
(2)「事情」型
ある人物の発言を、
「彼の行動との不一致や、過去の発言との矛盾を指摘する」
ことによって否定しようとする。
(3)「偏向」型
ある人物の発言を、
「彼の立場が偏向している、あるいは公平でない」
ことを指摘することによって否定しようとする。

「Aは○○によって利益を受ける立場にある」
⇒「Aの発言は受け入れられない」
(4)「お前も同じ」型
相手が、こちらのある行為を非難してきたときに、
「それと同じ、あるいは類似した行為を相手もまたなしている」
ことを指摘して、その非難を骨抜きにしようとする。
(5)「源泉汚染」型(「偏向」型の強化)
「そもそもその論者の立場は根本的に偏っている」
⇒「その主張は到底受け入れられない」
と突き放す。


人と論とは別ではない

研究者の間では、「人に訴える議論」は詭弁と見なされるそうです。

「ある事実そのものではなく、人物の方に問題点をすり替えている」

ことが理由だそうです。


ところが、香西さんは「論点をすり替えて何が悪い」と主張します。

しかし、開き直るようだが、論点をすり替えてなぜいけないのか。

そもそも、
「論点のすり替え」
などというネガティブな言葉を使うから話がおかしくなるので、
「論点の変更」あるいは「論点の移行」
とでも言っておけば何の問題もない。

要するに、発話内容と言う論点が、
発話行為という論点に変更されただけのことである。


たしかに、ネコ型ロボットを親友に持つヤツから、

「しかし、機械で友だちをつくるなんて、かわいそうだね。」

なんて言われた日には、

「おまえが言うな!」

と言いたくなることでしょう。


画像6


人と論とを切り離さず、人に訴える議論をするなんて詭弁だよ

と言われたとしても、

「いやいや、単に論点が変わっただけでしょ。

自分のことを棚に上げるヤツの文句を言って何が悪い!

と、ほとんどの人は思うはずです。


02_03_怒り・バスト・集中線jpg


「社会では、論理より常識が優先される」

という香西さんのご指摘も、しごくごもっともです。


先決問題要求の虚偽

それ自身、証明が必要とされる命題を根拠として組み立てられた議論

のことを「先決問題要求の虚偽」と言うそうです。

具体例を見てみましょう。


A「K西先生が今度お出しになった詭弁に関する本を読んだけど、すばらしい名著だったな。まさに、眼から鱗が落ちたよ。」
B「僕も読んだけど、つまらなかった。」
A「馬鹿な! 君は勉強が足りず、読みが浅いからそんな愚かな評価をするんだ。

このAの論法を使えば、どんなことでも主張できる。

自分の判断は真であると確定させてしまえば、
それが真であることを理解できない側に問題がある
ことになってしまうのだから。

これが先決問題要求の虚偽である。


たしかに、このパターンは日常でしばしば目にすることができます。


たとえば、「努力は必ず報われる」という言葉。

努力が報われない人は、
努力が足りないか、
努力の方向が間違っているからだ。

本当の努力は必ず報われる

などと言う人もいますが、これも、

「努力は必ず報われる=真」

を前提とした、先決問題要求の虚偽の1つでしょう。


「努力する者が楽しむ者に勝てるワケがない」

という考えだってあるわけです。


画像8


訳知り顔の大人が、若者に向かって、

「おまえもいつか大人になればわかるよ」

などという場合も同様に、

「わからなければ、十分に成熟していない

=まだ、真の意味で“大人“になっていない」

と言い訳ができます。


あるいは、

「『無理』というのはですね、嘘吐きの言葉なんです」

といった発言をした人もいましたが、これも、

「 途中で止めてしまうから無理になるんですよ」

という自分の考えを勝手に「真である」とし、

「途中で止めてしまう」人間は「嘘吐き」と考えるやり口です。


先決問題要求の虚偽……無敵の論法ですね。


画像12


議論とは本来、「根拠⇒主張」を訴える行為ですが、

一方で、

「全く反論の余地を与えようとしない主張は、議論に値しない」

とも言えるでしょう。


相手が、

「それは“本当の意味“で理解していないからだ」

「君、それは“本質“を理解していないんだよ」

などと言い逃れをしていたら、

十中八九、「先決問題要求の虚偽」に陥っていますから、

“本質“大好きおじさん」にはそのことを指摘してあげましょう。


01_03_ノーマル・バスト・集中線


「先決問題要求の虚偽」のパターン① 循環論法

「先決問題要求の虚偽」には、いくつかの派生したパターンがあります。

ここでは、3つのパターンをご紹介します。


まずは、「循環論法」。

循環論法とは、

「主張」と「根拠」を入れ替えても成立する構造

のことです。


例を見てみましょう。

【主張】
「『幽霊を見た』という、昔の人の話は信用できない。」
【根拠】
「なぜなら、昔の人は迷信深かったから。」

【主張】
「昔の人は迷信深かった。」
【根拠】
「なぜなら、昔の人は『幽霊を見た』などと言ったりするから。」


根拠⇒主張が見事に、循環する構造となっています。


「先決問題要求の虚偽」のパターン② 名づけ

前回の記事でも「言葉の黒魔術」として「名づけ」は登場していました。


例えば同じ「議員のヨーロッパ旅行」でも、

これを非難したいときには「見物」「物見遊山」と表現し、

これを擁護したいときには「現地視察」などと表現できます。


名づけた瞬間に話者の恣意性が生まれる時点で、

言葉を使うこと自体が詭弁なのであり、

そこに先決問題要求の虚偽の要素が入り込んでいる、というわけですね。


01_02_ノーマル・バスト


「先決問題要求の虚偽」のパターン③ 多聞の虚偽

「多聞の虚偽」とは、

Yes/No形式の疑問文で尋ねることで、その前提を相手に認めさせる

という手法です。


「君は、もう奥さんを殴ってはいないのか?」

(中略)

右の例文は、形式上、「はい」か「いいえ」という答えを要求する。

もし、「はい」と答えたら、
かつては殴っていたが、今はやめたということになる


「いいえ」と答えたら、今でも殴っているということになる。


この詭弁の手法は、交渉術の本でも「有効な手立てだ!」と紹介されることもあります。


しかし、本当にそうでしょうか。

相手の不誠実な質問に対して、必ずしも誠実に答える必要はない

というのは前回の記事でも見たとおりです。


「質問に答えてください!」「聞いているのはこちらです!」

と叫ぶ人がいますが、なぜ質問に答える必要があるというのでしょうか


画像10


Yes/No型の質問に対しては、

逆質問をして、なぜ相手がそんな質問をしようと思ったのかを説明させる

のも効果的だと、本書では説かれています。


議論においては、
何かを主張した側に、それを論証する責任がまず課せられる。

これが立証責任ということだ。

相手よりも先に、こちらがその主張の非なることを論証する義務はない。


01_03_ノーマル・バスト・集中線


まとめ

さて、ここまでの内容を振り返りましょう。

【正しい根拠が多すぎてはいけない】


根拠が多すぎると、1つの根拠が、別の根拠の説得力を弱めることがある
【詭弁とは、自分に反対する意見のこと】

詭弁とは、

自分たちの仲間が使ったときは単なる言葉のあやで、
敵が使ったときのみ詭弁となる
【「人に訴える議論」5つのパターン】

(1)「悪罵」型
人格攻撃

(2)「事情」型
「言動不一致」「過去の言動との不一致」の指摘

(3)「偏向」型
立場が偏向していることの指摘
(この主張で、Aは利益を受けようとしている)など

(4)「お前も同じ」型

批判してきた相手も、同じ行為をしていると指摘

(5)「源泉汚染」型(「偏向」型の強化)
「そもそもその論者の立場は根本的に偏っている」と突き放す。
【とはいえ、人と論とは別ではない】

人に訴える議論は「論点の変更」あるいは「論点の移行」に過ぎない
【先決問題要求の虚偽】

・それ自身、証明が必要とされる命題を根拠として組み立てられた議論
全く反論の余地を与えようとしない主張は、議論に値しない
“本質“大好きおじさん」は先決問題要求の虚偽に陥っている
【「先決問題要求の虚偽」のパターン】

①循環論法
「主張」と「根拠」を入れ替えても成立する構造


名づけ
相手の行為を、恣意的に名づける

③多聞の虚偽
Yes/No形式の疑問文で尋ねることで、その前提を相手に認めさせる
「君は、もう奥さんを殴ってはいないのか?」

※対抗法
相手の不誠実な質問に対して、必ずしも誠実に答える必要はない
逆質問をして、なぜ相手がそんな質問をしようと思ったのかを説明させる


さて、次回で、「議論/詭弁」に関する記事は最後です。

ここまでの議論をまとめをつらつらと並べます。


お楽しみに。

to be continued...

ここから先は

147字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?