見出し画像

【失敗/組織事故】④ 高信頼性組織の構築

こんにちは、白山鳩です! クルッポゥ!

マガジン『能ある鳩はMBA②  ビジネススキルで豆鉄砲』での、ビジネススキルにまつわる情報の紹介です。


前回の記事はこちらです。↓↓↓


今回は、引き続き失敗や組織事故に関する重要な要素である「高信頼性組織」について見ていきます。


1つの記事あたり、だいたい5分で読めますので、お気軽にスクロールしてみてください!


なお、全て無料で読めますが、

「良い記事だったなあ」

と思っていただけるようでしたら、記事代をいただけると励みになります!


不測の事態の5つの類型

さて、世の中ではよく「想定外の事象だった」といった表現を使われることがありますね。

経営者の責任を問う際には、「経営者がその事象を予見できたか」という意味の「予見可能性」なんて言葉が使われることもあります。


余談ですが、リスクマネジメントに関するセミナーに行くたび、

「想定外なんて言葉は経営者の怠慢」

「不祥事や事故を起こした会社ではリスクマネジメントが1ミリも役に立っていない」

といった強気のコンサルタントをよく見かけて鳩は思わず「げえっ」となるのですが、みなさんはいかがでしょうか。


画像1


さて、『高信頼性組織の条件』の著者である中西晶さんは、「不測の事態は5つに累計されるとし、次のように指摘しています。


不測の事態① ブラック・スワン

「ブラック・スワン」とは主に金融界で使われる用語です。

多くの人に多大な影響を与えるような、従来の知識や経験からでは予測できない極端な現象のことを指します。


近代までは全ての白鳥は白色だと信じられていたところ、

オーストラリアで「黒鳥」が発見されるというこれまでの常識では全く考えられない事象に遭遇したことで、

鳥類学者の常識がひっくり返ったことに由来します。


要するに、「完全なる想定外」というわけですね。

こんな事象が起きたときには「まいった」という言葉しか出てこないでしょう。


16_あせり2


不測の事態② 問題に対して、原因を見誤る

これは、ここに書いてあるとおりですね。


「オイスターバーに行ってお腹が痛くなった」という問題に対して、

その原因を「カキを食べたこと」ではなく「食べ過ぎたこと」だと考えている人は、

「食べ過ぎなければいいや」とカキを食べて、またお腹を下すかもしれません。


このとき、カキを食べた人にとって突然の腹痛はまさに想定外でしょう。

「原因に対して対策を取ったのに、なぜ……」とトイレの中で悔やむことになります。


03_02_悲しみ・バスト


不測の事態③ 問題と原因は理解しているが、問題が顕現するタイミングを見誤る

「周りを崖に囲まれたところで伏兵に襲われると、大変なことになる」

というのは賢明なる読者のみなさんはよくご存じかと思いますが、


(まさか、こんなに早く伏兵に出くわすとは……)


と、敵の現れるタイミングを見誤るのもまた、想定外の事象と言えるでしょう。


画像4


「ジャーン」「ジャーン」という敵の銅鑼の音を聞くのはもう少し先だと思っていると、大変な目に遭います。


不測の事態④ 問題の継続期間を見誤る

「そろそろ終わるだろ……」と思って行動すると、意外と事象が継続していて足をすくわれる、というのがこのパターンです。


株の世界では、

「そろそろ底を打ったかな……」

と株価の下がった銘柄を買いに行ったら、

なんとまだまだ株価は下がり続けた

といういわゆる「二番底」と呼ばれる現象がこれに当たるでしょう。


これを喰らった人は、気分が悪くてお茶漬けさえ気にならないはずです。


画像5


専門家と呼ばれる人々がいくらでも読み違えるように、事象が継続する期間を読み違えて「想定外」に陥ることはあるものです。


不測の事態⑤ 原因を一個人のエラーに収斂してしまう

これは、ここまでの記事で何度も言及してきた内容ですね。

事象の原因究明ではなく、

「甘えていたんじゃないのか!」と個人の責任追及で事を済ませていると、

「もう済んだな……」と思った事柄が別の部署や別の担当者から噴出しかねません。


画像6


「高信頼性組織」と、その三層構造

さて、こんな不測の事態をマネジメントするために提唱されているのが「高信頼性組織」です。


高信頼性組織とは、

「惨事となりかねない事態に数多く接しながらも、その事態を初期段階で感知し危機に陥ることを未然に防ぐ仕組みを体系的に備えた組織」

だと言われています。


代表的な事例としては、原子力発電所や管制塔といった失敗が許されないような組織が挙げられます。


画像8


では、高信頼性組織はどのような構造になっているのかを見てみましょう。

これは、3つの階層から成り立っていると言われています。


画像11


高信頼性組織の第1層:組織行動

これは、組織が普段からどのようなプロセスを辿って行動しているかを表しています。

目に見える組織の一人ひとりに見える行動の要素です。


《フェーズ1:不測の事態の予防》
○正直さ

・些細な兆候も報告させ、報告を称賛する
・成功より失敗に注目

○慎重さ
・念には念を入れ、単純に解釈しない
・集団浅慮に陥らないためにも、多面的な視点で慎重に議論
・多様な解釈をもたらす人材を歓迎する

○鋭敏さ
・現場管理者は、オペレーションへの感覚を鋭くする
・「現地、現物、現人」の三現主義を重視
※現場を頻繁に訪問すればいいというわけではなく、
現場で何が起きているか把握し、
現場では手に入りにくい情報を収集して提供する
《フェーズ2:不測の事態発生時の収拾》
○機敏さ

・ただちに問題解決へ当たる
・犯人探しや自己保身はご法度:責任追及よりも問題解決を優先

柔軟さ
・適切な能力や知識を持っていない情感が指示命令すると問題が拡大する
・組織のトップは現場の管理者へ、適切な権限移譲をする


 
鳩も、普段の業務でリスクマネジメントを担当しており、経営層向けの地震対応訓練を企画することもあるのですが、

有能な経営陣であればあるほど、「適切な権限移譲」という柔軟さを発揮できないと感じています。

現場へ首を突っ込もうとするのですが、最前線で地震被害への対応をしている作業員たちにしてみれば百害あって一利なし

一方、経営層は現場から情報を仕入れたところで直接的には何かをできるわけでもなく、ただ野次馬的に情報を仕入れようとするだけに終わってしまいます


まして、たとえば津波が迫っているシナリオなのに、

「作業現場付近の人たちをできるだけ助けろ!」

など、できもしないことを現場に向けて指示などしてこられては溜まったものではありません


画像9



高信頼性組織の第2層:マネジメント

では、第1層のこれらの要素はどうやって育まれるのか。

それは、組織のマネジメントに由来するにほかなりません。

というわけで、第2層の組織マネジメントの要素を見てみましょう。


・評価報酬:失敗から学ぶための仕組みや仕掛け
・情報共有:第1層の要素の情報共有
・内部統制:アカウンタビリティの担保
・教育訓練:メンバーの能力向上
・意思決定:冗長性を意識した意思決定


これら第2層の要素は第1層の要素と影響しあい、互いに高め合う関係にあると言えるでしょう。


さて、災害時等に際して、企業が事業を永らえさせるための事業継続計画のことをBCP(Business Continuity Plan)と呼びます。

このBCPはあくまで、有事になったときに初めて発動される「計画」に過ぎません。

有事において速やかかつスムーズにこのBCPを発動させるには、平素からのマネジメント活動であるBCM(Business Continuity Management)の発想が求められます。


この第2階層に挙げられた要素はまさしく、有事に備えた活動を普段からどのようにマネジメントするか、すなわちBCMの視点が詰まっています。

「いかに普段の失敗から学んでBCPをブラッシュアップするか」

「有事に必要な組織行動の要素を組織全体でいかに共有しておくか」

「規程を整備するなどして、『精一杯準備しておき、やれるだけのことをやりました』と有事後に証明する準備をしているか」

「教育訓練でメンバーの能力向上を図っているか」

「有事に権限移譲された現場が意思決定をできるだけの冗長性を備えた組織づくりをしているか」

といった要素が求められるわけですね。


04_01_指


高信頼性組織の第3層:文化

高信頼性組織を一番下から支えているのは、これらマネジメントを推進するために必要な組織文化です。


・信頼:メンバー同士の相互信頼
・正義:正義や公正の重視
・学習:常に学習する
・勇気:やるべきこととやるべきでないこと


第1層と第2層が互いに影響しあっていたように、

第2層のマネジメントと第3層の組織文化もまた、互いに影響しあうものです。


いずれにしても、組織文化を変え、そして組織をマネジメントするには、まずは経営陣から変化する必要があるでしょう。


画像11


みなさんも権力を手中に収めたときには、全ての退廃を一掃して高信頼性組織を構築してください。



第1階層の5つのポイントを束ねるのは「マインド」

『高信頼性組織の条件』では、第1階層に見られた、

「①正直 ②慎重 ③機敏 ④鋭敏 ⑤柔軟」

といった、組織が行動するときに見られる5つの要素について、

これらを束ねているのが組織の「マインド」だと指摘し、3つの要素を指摘しています。


①問題解決思考
・問題の本質を追求し、問題解決に向かう

②プレッシャーからの自由
・特定の手続きの遵守やタイムプレッシャーなどがない

③防御への投資
・不測の事態の予測・抑制のための資源の投資の必要性が認識されている


組織行動が十分に発揮されるには、これらの3つのマインドが不可欠です。

高信頼性組織も最後は、指じゃなく心で動く、というわけですね。

画像12


以上、高信頼性組織について述べてまいりました。


「不測の事態」の5つの種類として、

①ブラックスワン
②問題に対して、原因を見誤る
③問題と原因は理解しているが、問題が顕現するタイミングを見誤る
④問題の継続期間を見誤る
⑤原因を一個人のエラーに収斂してしまう

を見てきました。


そして不測の事態に対抗するための「高信頼性組織」について、

3つの階層構造、そして第1階層の組織行動を束ねるマインドの重要性を見てきました。

画像13


次回は、失敗や組織事故、最後の記事です。

組織と心理学の関係性を見ていきます。

お楽しみに。

to be continued...


ここから先は

255字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?