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キャラクター創生のすゝめ#4

なんでもいいのでキャラクターを思い浮かべてくださいと言われたら、あなたは誰を思い浮かべるだろう。おそらく大半の人はメインキャラクターを思い浮かべるのではないだろうか。
 メインというだけあって、印象に残りやすく好まれやすいのはメインキャラクターが多い。主人公やそのチームメイト、敵のボスなどである。そんなメインキャラクターが魅力的に映るように支えている存在がいるのだ。そう、モブと呼ばれるキャラクターたちである。
今回は、影の功労者であるモブキャラクターについて解説していこう。

 モブキャラクターとは何か。簡単に言えば、その他大勢にくくるような名もなき群衆のことである。丁寧な作品であれば、簡単な設定と名前をもらっていることもあるが、場合によっては顔すら描かれていない。別に重要な台詞があるわけでもない。印象に残らない背景のような存在の彼らが、どうしてメインキャラクターを支えているといえるのか。答えは、情報量がなく、背景だからこそメインキャラクターを支えているのだ。どこにでもいる存在だからこそ、欠かせない存在なのだ。

具体例を上げてわかりやすく説明しよう。例えば美しい人魚のお話。人魚がいつも通り海底を泳いでいた時に、「おはよう」と声をかけるものが複数存在したとする。その誰にでも「おはよう」と返す人魚は、どんな人柄に見えるか。気さくで話しかけやすく、親しみやすい人柄に見えることだろう。
反対に、誰にも話しかけられず寧ろ人魚を見たものはみな眉をひそめ陰口を叩いていたらどうか。親しみやすさとは程遠い、煙たがられる存在に見えるだろう。このように、名もなき群衆のリアクション、モブキャラクターとの掛け合いで、メインキャラクターである人魚の印象がガラリと変わるのだ。

別の例を挙げよう。今度はとある国の王子のお話だ。
王子の名前はアレクサンドロス。見目麗しく人柄も良いとあって国民からも愛されている。そんな王子の右腕がアルフレッド。剣の天才で王子の幼き頃からの友人である。アルフレッドの部下に、クリスチアンとシブリアン。教育係はバルテレミー。乳母はフランソワ。アレクサンドロスがアルフレッドとクリスチアンとシブリアンを連れて街に出たとき、フランソワの夫で村長のバンジャマンが話しかけてきたとする。さて、教育係の名前は何だったか、と問われた時にあなたは瞬時に答えられるだろうか。ちなみに私だったら絶対に答えられない。このように、情報量があまりに多いと、何がなんだかわからなくなるだけでなく、一人ひとりの印象が薄く分散してしまうのだ。
 では、こちらならどうか。王子の名前はアレクサンドロス。見目麗しく人柄も良いとあって国民からも愛されている。そんな王子が右腕と部下二人を引き連れて街にでかけたとき、村長が話しかけてきた。さて、王子が連れてきたのは何人か。これなら答えられる。右腕と部下二人で、計三人だ。
どうだろう。登場人物が名前も設定もあるメインキャラクターから、モブキャラクターに変わっただけで文がスッキリとし、読みやすく頭にも入ってくるようになったではないか。

メインキャラクターをつくるのが楽しいからといって、メインキャラクターばかりつくっていると情報量がパンクし、混乱してしまうため注意してほしい。
冴えないモブキャラクターではあるが、その存在の及ぼす影響は大きなものなのである。たまには息抜きにモブキャラクターのことでも考えてみてはどうか。