起業家の方程式のメモ①

先日、スタートアップ界隈で有名な方のセミナーに参加し、講義的に教えてもらったことと、1対1でお話して教えてもらったことを、自身の事業計画書と照らし合わせる形でメモとして残しておきます。

前置き

現在こちらの橋本ゆのさんのバズったツイートを見て「自身も痛みを感じていて、解決する価値があるものはこれだ」と思い、この課題を解決するスタートアップをやろうと事業計画を書きました。

一方でこの課題は世界最強の企業Googleが解決できてない課題であり、Googleに喧嘩を売ることになるし、そもそも「あったら良いよね」というアイデアはスタートアップには向かないということは聞いていたので田代雅之さんの『起業の科学』をベースにこの数ヶ月アイデアを検証しておりました。

そしてリーンキャンバス・ペルソナ・エンパシーマップ・カスタマージャーニーというフレームワークにより課題仮説を検証した後、「よしこれから想定カスタマーにインタビューだ」というタイミングで今回の事業計画書を見てもらう機会を得られたので、これまでの検証をベースに事業計画書を書き、提出しました。

しかし、教科書通り進めているにも関わらず(このマニュアル通りに丁寧に進めていくということを出来る人は少ないからこそ大事だと思っています)僕の事業計画に欠けている点を多く指摘されました。

そこで初めは起業家の方程式としての知識・学びのメモを書き、その後に指摘された点について「なぜ今のままじゃダメなのか」という考察付きで書いていきます。

スタートアップの4つのポイント

成功するスタートアップは次の4つのポイントを押さえているそうです。

①ビタミンでなく痛み止めを売れ

ビタミン剤は健康や理想的な栄養バランスのために取った方がいいものですが、誰もが必ず欲しいほどのペインはないということですね。「痛くて辛くて仕方なくて、お金なら払うから痛み止めをくれ」と言われるようなプロダクトを作れということです。

ただ個人的な話として、僕は花粉症なのですが花粉症にはビタミンが効くと知って「もう本当に仕事にならないほど花粉症が辛かった」ので、このくらいのペインであればビタミンでも良いですね(実際に数千円もしたが症状がかなり緩和した)。

②どうせやるなら Big Problem を選べ

スタートアップにとって比較的小さな(スモールビジネスという意味ではない)会社を創るのも、ソニーのような大企業を創るのもリスクは同じということ。

どちらも失敗した時の痛手は同じくらいで、また成功するためのノウハウやフレームワークも同じだから、どうせやるならリターンが大きい方を選ぼうよということらしい。

ただ日本はアメリカと違って、株式会社で登記して融資を受けてもほとんどが代表者(社長)が個人保証をするケースが多い。

株式会社とはパイレーツオブカリビアンとかに出てくる東インド会社が発祥だ。ヨーロッパからアジアの香辛料を輸入すれば莫大な価値があるけど、そのビジネスを行うための軍資金と、海難事故などのリスクがデカすぎて誰もチャレンジできずにいた。そこで株式を発行して投資家から資金を募り、そのお金で船や仲間を集め香辛料を仕入れてくる。もし失敗してしまってもその会社の資産分さえ払えば、それ以上の取り立てをされない(有限責任)という仕組みが株式会社だ。なので株式会社なのに個人保証を取り付けるのは本末転倒していると個人的に思う。

またそもそもスタートアップとはまだ未開拓の市場に挑む場合がほとんどなので、そういったアイデアやビジネスモデルに銀行は融資をしてくれない。もしあなたのやろうとしているビジネスに銀行が融資をすると言っているなら、そのビジネスはスタートアップではなくスモールビジネスである可能性が高い。

話を Big Problem に戻すと、もし日本でも個人保証せずに株式会社を始められる(いわゆる投資家からの出資)のなら、よりリターンが大きい課題やアイデアに取り組んだ方がいいようだ。

③競合なし=マーケット無し

これは解釈にちょっと自信がない。ただ恐らく「私たちの競合はいません」という業界初のサービスをやろうとしているスタートアップの言葉が本当に正しいのなら、そのビジネスは上手くいかないということらしい。

どういうことかと言うと、世界でヒットしたスタートアップのアイデアは『類似』サービスはないことが多いが、『代替』サービスはほとんどあって、この代替サービスをやっているような企業こそ正しい競合の捉え方であり、代替サービスがないようなアイデアは上手くいかないということである。

例えばAirBnBの「他人の家に安く宿泊する」というアイデアの類似サービスは無かったはずだが、それまで私たちユーザーは安いモーテルやホテルなどのB2Cサービスを利用していた(費用の面ではそれで我慢していた)。これが代替サービスだ。

Uberの代替はタクシーや電車だし、iPhoneの代替は電話だけでなくDVDプレーヤー、地図、手帳、音楽プレーヤー、デジカメ…と数えきれない(だからこそこんなにヒットした)。

なので現代の社会においてユーザーは類似サービスはなくても代替サービスで(本人はそれと意識せずとも)我慢している訳で、代替サービスがないようなアイデア、もしくは代替サービスという競合がいることに気づいていないスタートアップは危険ということらしい。

ただアストロスケールという宇宙のゴミを掃除するスタートアップがある。これは代替サービスは無さそうなのだがどうなのだろう。

④アンフェアなレベルまで強みを高めよ

これはリーンキャンバスで『競合優位性』と言われる点だけど、スケールした後くらいの段階では、新規参入してくる競合他社が「今からあいつに勝つのなんて無理ゲーやん」というくらい自社の強みを圧倒的に高めようということ。

例えば今からAirBnBのような個人間の民泊サービスをやろうと思っても既に知名度があって、ユーザーが囲い込まれているので中々シェアを奪えないよね、というお話だと思う。

ただ現にUberよりもLyftを使う人もいるわけで(確かUberの人が独立して作ったのがLyft)、Google検索じゃなくDuckDuckGoやノイズレスサーチを使う人もいる。

またスケールする準備が整ったスタートアップで、アンフェアなレベルの強みを持っていないケースってあり得るのだろうかとも思ってしまう。

そう考えると、スタートアップが大きくなる上で強みを高めるのは大事だが、逆に他の新規参入企業はその強いスタートアップでは解決できていないニッチな痛みにチャンスがあるということのようだ(UberとLyftがどう違うのかは使ってみても分からなかった)。

狙うべきニッチな市場の見分け方

よくニッチな市場を狙えと言われるが、それがニッチかつ当たりそうかを定量的に見分ける方法はあまり語られない。

狙うは「当事者同士は価値を感じているが、部外者は価値を感じていない」課題や製品であるそうだ。当事者とはスタートアップ自身と初期の想定ユーザー(エバンジェリストカスタマー・アーリアダプター)である。部外者とは大企業などの後に類似サービスを出してくるであろう大人たちである。

例えば超音波で排便のタイミングを知らせるトリプル・ダブリュー・ジャパン、圧倒的に操作しやすい次世代の車椅子WHILL、美容整形についての情報をシェアするMeilyなんかは、部外者である大企業からは出なそうなアイデアである。

スタートアップが失敗する原因の第1位

スタートアップが失敗する原因は(本などによればチームが不適切だったとかが上位によくきてるが)創業者たちが自分のプロダクトを愛してしまうこと(これをパッショントラップと言う)らしい。

上手くいく「一見アンセクシーだが実はセクシーなアイデア」は最初はほとんどの人に「そんなの誰も使わないよ」と言われるので、創業者たちが自社の使命やプロダクトを信じないのも良くないと思う。

けどそれを(我が子のように)信じすぎて「理解できない皆んなの方がおかしい」と孤立無援になってしまって失敗するケースが非常に多いと言う。

つまり「初期ではマジョリティーの意見は聞かなくていいが、アーリーアダプターたちの声には真摯に耳を傾けよ」ということのようだ。

起業家の仕事とは

まず起業家とは1つの職業であるそうな。それは経営者(社長)とも違っていて、起業家の役割とは見える面で言うと「(広い意味では)会社を創ること」だが、見えない面で言うと「(まだ顕在化していない)価値をお金に変換すること」らしい。この価値をお金に変換する仕組みがビジネスモデルである。

ちなみに個人的な意見ですが、フリーランスになるとか、1人会社とか、受託開発や飲食店を開業するような人たちを起業家だと思っていない。僕自身、最近まで起業家やスタートアップの意味を履き違えていたし、今の世の中に出回っている起業本やネット記事には起業家について意味を履き違えているものが凄く多い気がする。

僕の事業計画書に欠けていた点

ようやく本題ですが、実際に上記のことを教えてくれた方に事業計画書を見てもらってダメ出しされた点を書いていきます。

読み手の立場を理解していない

計画書を読むような投資家たちは、例え数あるスタートアップ志願者たちのピッチを聞き、多くの計画書を見て(ほとんどは最初の動機や創業者の経歴しか見ていないよう)、自身でもビジネスを手がけていても「あなたのビジネスには素人である」という点を理解していなければならなかった。

だから専門家である自分視点で計画書を書いているので伝わらないそうだ。

営業をやっていた頃に「小学生でもわかるような説明をしろ」と言われたのを思い出した。

経歴で他者より優秀なことがアピールできていない

投資家は事業やアイデアでなく人に投資をするという。

僕らは履歴書なりSNSの自己紹介欄なりで過去にどんなキャリアを歩んできたかという事実を書いていく。「どこどこ大学を出て、東証一部上場の○○に入社して〜」という具合だ。それ自体は悪いことではないのだが、その経歴の文章に「なぜあなたがこのビジネスをやるのにベストな人材なのですか」という問いへの答えが書いていないといけないそうだ。

たとえ「東大を出て、ハーバードでMBAをとって、Googleに入社して、あの有名なWebサービスを作った」という経歴でも、どうやら話を聞いていると不十分に思える。

価値とは相対的なもので、投資家が創業者という人間の価値を評価する時も他者との相対評価で行われる。

なので(上記の例はほとんどの他者よりは優れているとは思うが)経歴の書き方としては「このアイデア・課題・事業に対して○○という点で他の誰よりも自分が理解している・秀でている・実現するためのスキルを持っている(だから自分がやるのがベストなんです)」という言い回しになるべきである。

言われてみればそりゃそうだとなるが、他者の誰よりも優れている点を持っている・見つけるのって結構難しいように思う。確かに億単位の資金調達した同期や、数千規模の人が関わるような団体を運営している後輩などは皆大学の時点で優秀だった。特に「人を動かす」と言う点で人間性や突破力が優れていたと思う。

また20歳前後でITスタートアップの代表をやっているような人たちは、遅くとも中学までにはプログラミングを始めていて、大学に入る頃には仕事を請け負って新卒より稼げるくらいのスキルを持っている(あんまりお話したことはないが、すごい天才扱いされがちだけど実際には超難解なプログラムを組んでるとかそういう感じじゃないようだ。ただ中学高校という若さで新卒3年目くらいのプログラミングスキルを持っていたり、アイデアを形にしたり、SNSでの影響度が高いとかそういった点がすごいのだと思う)。

これまでの話を聞くと事業計画書の経歴を考える時にで「そもそも自分がスタートアップなんかやれるのか」という不安が出てくると思う。

個人的には「上手く行かなそう」という不安の時にやると失敗するが、「やってみないと分からない」という場合の不安はやってみるべきだと思う。

とにかくやってみろ、話はそれからだ。

理念にお客さんの話が抜けている

事業計画書の「経営理念・目的・動機」の欄には以下のように書いた。

現在のWeb検索ではアフィリエイト目的のサイトやNAVAR等のまとめサイトばかりが上位ヒットするようになり、前置きなどの無駄な情報が多かったり、最後に商品に誘導することを目的にした信用性の低い情報が多かったりと、結論に辿り着くまでの時間・精神的ストレスが非常に多くなっている。これを解決してWebにおける情報収集のUXを高めることで、より良い世界作りに貢献したい。

理念は一言で誰もがわかるものが良いと思うが、参考の書き方に上記のような長い文章で動機を書いていたいので真似して長くしっかり書いた。これをもし一言で表すなら「Webにおける情報収集のストレスをなくす」だ。

ただ上記の内容で見てもらっての感想は「お客さんの話が抜けている」だった。つまり「誰々の痛みを解決します」というメッセージ性が弱いのだと思う。もしその点を踏まえて書き直すとしたら以下のようになると思う。

現在のWeb検索ではアフィリエイト目的のサイトや商品を売る為の業者の記事などが増えてしまい無駄で信用性の低い情報で溢れてしまっている。ITに疎いお母さんやお祖父ちゃん、お婆ちゃんなどはググり力が低く、昔に比べ身近に相談できる人が少なくなってきている背景もあり、こういったネットの情報に騙されて不要な商品を買ってしまったり、詐欺まがいの高額な情報商材を買ってしまうことが多くなった。そういった人たちのために信用性が高く、営業のバイヤスのかかっていない“生産者の顔のみえる情報”のみを収集できるプラットフォームを作り、情報弱者たちを不条理から救いたい。

計画書の他の項目はたぶん見てない

計画書の他の項目については特に何も言及はされなかった。具体的には以下の項目だ。

- 事業コンセプト
- 事業内容
- 雇用・人員計画
- 地域連携・情報発信計画
- 補足事項(計画の実現性・実行スケジュール・その他)
- 販売先・仕入先
- 必要な資金と調達方法
- 収支計画(売上高と経費、利益、軌道に乗った後のそれら)
- ビジネスモデル図

たぶん投資家たちも経歴と理念や動機以外の項目はほとんど見ないのであろう。今、Readyforなどのクラウドファンディングサイトも応募が殺到しているらしく運営も気になる応募にしか返信しないらしい。それほど出資者や支援者たちはあなたの細かな計画を聞いていられるほど暇ではないのだ。

まとめ

起業だなんだと大学生から言いだしてから5年経っており、カフェ起業したり個人事業主になったりはしたが、実際に事業計画書を見てもらったのは今回で2回目だった。

これまでは「そもそも人生で何をやりたいのか」「どういうキャリアを歩みたいのか」「何で起業したいのか」という質問にハッキリ答えられなかった。本は結構読んでいたけれど、あまり納得できるような答えはなかった。

しかし今回の起業家の方程式にまつわるノウハウや事業計画のレビューを通して、今まで本では得られなかったようなことを知れた。

もし過去にもどって5年前の自分に何かアドバイスできるとしたら、こういったスタートアップ支援系の門戸は開かれているから(当時はあまり知名度がなくとも)、一人で本をちまちま読んだり、なんか「起業家…なのか?」みたいな中途半端な社長とかに付き合わずに、ど真ん中にこういうスタートアップ支援団体の助けを借りればいいし、ど真ん中に自身が憧れるような本物のIT起業家たちに会いに行って、助言なり刺激なりをもっと早く貰いなよと言いたい。











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