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オッペンハイマー映画感想文。科学者は罪を知ったか(ネタバレあり)

遅かれながらオッペンハイマーの映画を見てきた。クリストファー・ノーランのインセプション、インターステラーなどは自分も好きで、以前にTikTokとかで予告かなんかを見た時「イミテーションゲームっぽいなぁ」というので観たいなと思ってたものだ。

普段はTwitterでやや長文の感想を書いたり箇条書きで済ませる程度だけど、それだと読まれないしすぐ流れてしまうしでブログという形で残しておきたかった。といってもいまいちいい文章を書ける自信はない。

メタルギアの影響で核に興味を持つ

もともとオッペンハイマーの名前を知ったのは、ゲーム『メタルギア・ソリッド』を小学生の頃にプレイしていたため。平成元年世代で、ほぼファミコンからプレステ2くらいまでそこそこ王道な作品はプレイしてきたが、小学生で核や政治も何たるかわかってないながら、性格もあってかムービーは全部見ていた。

出身は佐賀なんで修学旅行で長崎の原爆ドームや原爆資料館?なども2回は行ったことがあり、自分の祖父母は戦争経験世代だが、場所だけに戦闘機が捨てていく鉄の薬莢を拾って換金してたとかそんな話を聞いたくらいで親類で核により苦しんだ人がいるわけではない。

映画オッペンハイマーのあらすじ

だいたい3つのパートに分かれていると思う。

  1. 量子力学者のウィットな人生

  2. 原爆の恐ろしさ

  3. ある人物との妬み政治バトル

パート1では、「海外の大学教授ってウィットでユーモアがあって、講義も面白そうでいいよね」って割と呑気な感じで観てて、「知的な大人のカッコ良さみたいなのを日本も真似したいよねー」とか思ってた。

自身、機械工学の大学を一応卒業したんだけど、自分にとって日本の大学というものは受験ゴールで、その後の講義をおもしろいと思ったことはあまりない。でも毎回、海外の大学の講義は実際にTIME誌やNATURE誌などに出るような有名な物理学者が教えていたりするらしくおもしろそうだなと普段から思っていた。今回のパート1もそんな感じ。

パート2:原爆の恐ろしさ

まずIMAXで観たこともあり鼓膜が痛くなりそうなくらい音がデカかった。がこれくらいの音量で見るからこそ映画に入り込めたりドキドキしたり手に汗握るのかなとも。

核実験に必要な資源を各地から集めるため、その交差点にあるロスアラモスに研究のための街を作るってシーンはシムシティやサバイバル的なのが好きなのもあって開拓前線的で楽しいし、そこでの研究シーンはチームワークの難しさに共感することも。

それで肝心の実験当日、20分前からカウントダウンまで、映画と分かっていても手に汗握りドキドキしてしまったのは自分だけではないだろう。それだけ臨場感とか映像がすごかった。ただ思ったより爆発や炎の映像は少なかった印象。

一番日本人としても胸糞というか、顔をしかめることになったのは爆発実験成功でオッペンハイマーが称賛されてるシーンがあるが、その賞賛の嵐が原爆の被害者の幻覚にみえてしまうシーンは、はだしのゲン的な目を背けたくなるようなグロさが少しあった。

核の話だけでなく人間の争いは結局進撃の巨人でマルコが言っていたようにお互いがちゃんと話し合えてない、理解できていないことが原因だと思うのだけど、僕らが日々の口論やイラッときてしまったり相手を拒絶したくなるようなことの延長上に、こういった戦争や虐殺があるのだろうなと思うと、原爆を作った人もそれを日本に落とすと決めた人も、それを終戦のための偉業だと称賛してる人達も簡単に責める気持ちにはなれない。

このシーンでは当事者なりの葛藤が描かれているのでそういった意味では日本人がアメリカ視点を理解する点でもいい映画かもしれない。まぁ批判もあるらしいが。

世界を破壊..

途中、計算間違いかもだが核分裂が止まらずに空気に引火し世界がそのまま破壊されてしまう可能性の話があり、その映像はターミネーター3でも似たようなのがあったが、なんとも悍ましいというか。

毎日の仕事などに疲れてしまったとき海を見に行く人は多いと思うが、そういうときは毎回「地球はかくも雄大で美しい」と、分かっていても実感する。その地球が人間の手によって全て破壊されてしまうかもしれないというのは同じ人間としても心痛いものがある。

余談だが波の音というのは赤ん坊が母体の中にいるときの音と近いヘルツの音らしく、だから海に行くとリラックス効果があるという説がある。

パート3:妬みと政治バトル

政治というより物理学者同士のいちゃもん合戦的な感じなのかもしれないが、正直ここはよくわからなかった。時系列も異なる映像が変わり代わり差し込まれるし。ただ「なんかサブ役で贅沢に使っているなー」くらいに思ってたラミ・マレックが最後色々喋ってるから重要な役なんだったんだろう。

家に帰ってから解説動画をYouTubeで探してみたけど、相変わらず前置きが長く正直どうでも良いことでかさ増しする動画ばかりでもういいやとなった(後述するが自分がこういったITやWeb, 情報, アテンションエコノミーを変えたいと思ってきた側の人間なのでこういうのはやはり気になる)。

今後の世界の未来について

映画の最後でオッペンハイマーは、アインシュタインに「世界を破壊した」というセリフを言う。世界を破壊しうる核兵器を人類に与えてしまった、という意味だと思うが、現時点で世界は破壊されてはいないものの、この映画の最後の映像やターミネーター、メタルギアで描かれるような悲惨な未来は本当にくるのかもしれない。

自分は原爆や戦争どころか、3.11の東北大地震も経験していない。その悲惨な映像はこれまたYouTubeでブクマしているのだけど。ウクライナなどで戦争は起きているけど毎日の悩み事は日々の仕事のストレスとか人間関係とか、やりたいこととか、お金のこととか女性のこと。

映画やゲームの影響で戦争に対して慣れてしまってる面もあると思うけど、多くの人が正直「今日、目の前のことの考えることで精一杯」だと思う。余裕がないって人もいれば、楽しくないから興味ないって人、そんなことに振り回されず家族やペットと心豊かに暮らすことが重要だと考えている人、それぞれだろう。

でも現実問題、こういった核戦争までいかなくとも、AIや監視社会、SNSによる人を市に追いやるほどの批判増強、スマホ中毒、高い社会保険料や税金分かりづらくされてる年金などの仕組み、資本家が労働者より裕福になり続けるこの社会に対して限界が来るときが近づいている感はある。

SF好きよろしくアニメ『攻殻機動隊』や『PSYCHO-PASS』も好きなのだが、これらで描かれるようなディストピア感ある社会が実際に中国では既に起こっているらしく(顔認証決済が普及してるし胡麻信用のスコアが下がると即色んなサービスが使えなくなるらしい)、大谷がどうだとか芸能人が不倫したとかそんなことを考えてられる平和?な時代はそう長く無い気がしている。

映画を観ること自体について

映画館で映画をみたのは半年ぶりくらいだろうか。前回の『君たちはどう生きるか』は正直つまらなかったが、やっぱりこう、ネットが使えない集中空間で大音量や大きな映像で感情移入できるような非日常は定期的に味わいたいと思った。それがこういったブログを久々に書こうという気にもさせてくれたわけだし、日々TwitterやTikTok, YouTubeなどでインスタントな娯楽を消費し続けることに警笛を鳴らしてくれると言うか。

ただ、日本が敗戦国となってGHQの統治がされたときか、トルーマンが言った3S政策(screen, sports, sex)に見事に嵌められてるような気もして、映画中毒にも気をつけないとなと思った。

最後にまとめると、、うーん、メタルギア面白いよ!くらいしか言えないかな..。演劇の通説に「景気が良いときは悲劇が好まれ、景気が悪いと喜劇が好まれる」というのがあるらしいが、今回のオッペンハイマーはまぁ喜劇ではないのは確かで重たい話題。でも自分も今は生き方をまた変えようとしているフェーズだから、こんな文を書いといてなんだけど自分のことでまだ精一杯かな..。こういった核抑止とかAIとか社会について、組織に所属していない人間でもX以外で語れる場があるといいなと思って書きました。おしまい。

#映画感想文 #オッペンハイマー

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