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第515回:『少女地獄』を読んで、女に生まれてよかったと思う

夢野久作『少女地獄』を読んだぜ!

めっちゃ面白いじゃ〜ん!え、なになに、久作くんなんでこんな面白いもん隠してたわけ〜? やっぱ久作くん的には『ドグラ・マグラ』で勝負したい感じ〜? もっと全面に『少女地獄』出してった方がよくな〜い? ちな今夜とか空いてる?

私ドグラ・マグラは3回挫折してんのよね。今度4回目の挑戦をするつもりなんやけど、それはさておきマジで『少女地獄』は面白かった。
これ、1本の長編小説だと思ってたんやけど違うんやね。短編集みたいな感じなんや。知らんかった。どの作品にも、「少女」が出てくる。でもその「少女」たち、全員曲者というかなんというか。薄い感想しか言えんけど、まさに「地獄」みたいな経験をしていく少女たちが出てくるんよね。彼女たちの経験する出来事がね〜、本当に地獄。でもその地獄、とっても丁寧な地獄なんだよな。そこが美しい。タイトルの通り、少女たちが「少女」であったからこそ直面してしまった地獄。ようやく自我が安定しつつあり、でも自己の形成が完全であるとは言えず、不安定な精神を抱えているものの、「美しい」とされる年齢であるからこそ搾取され、決意を固めても小さな出来事で簡単に揺らぎ、それでももう子供では無いからどうにかして自分の力だけで解決したいと願う。そうやってなんとか足掻く「少女」たちだけど、やっぱり行く末は地獄しかない。

少し前に初めて村上春樹氏の作品を読んだ時、なんかうっすらと自分が女性であることを馬鹿にされている気がしてしまった。
この作品も、若い女性である「少女」たちが酷い目にあっていくので、同じような感情になるんじゃないかと思いつつ読んだんやけどね。

これがね〜、面白いことに、全く「馬鹿にされている」という感情は湧かなかった。むしろ読後は「ひゃっほ〜!!!!! ワイ、マジ女に生まれてよかったぜイエ〜イ!!!!!」くらいの感情になる。あんなにも女の子たちが酷い目に遭うのに。
もちろん、書かれた時代が時代なので今ではあまりよろしくない単語とかは出てきたりする。でもね、なんだろうね。逆にあれだけ酷い目にあわされてるからかも。なんて言うか、少女たちも自分たちの身を自分で守るために、必死で思考して行動してるんだよね。そのゴールがたとえ地獄だとしても、「私が地獄を選ぶ!」くらいの心持ちというか。
男がいないと生きていけないとか、男のケアをする性別とか、そういう対象として「少女」が描かれているわけじゃない。そうやって搾取されたとしても歯を食いしばって、「てめえマジで私が許すと思うな、お前も一緒に地獄行きじゃ」くらいのメンタルで突っ走る少女たち、気持ちいいにも程がある。

無駄に女性の体について言及されていないあたりも好感度高かったかも。なんかさぁ、女性の美しさを表現したいのかなんだか知らね〜が、やたらめったら肌が綺麗だとか裸の形がどうとか描写する『芸術作品』あんじゃん? お前はガワにしか興味がねえのか。内を描かんかい、内を。内面に滾る嫉妬心、虚栄心、復讐心、乙女心、優柔不断、葛藤をもっと描かんかい。
まあね、確かに『少女地獄』に出てくる女の子たちは大半が「美少女」として描かれているんやけど、でも地の文の大半は美少女関係ないっていうかさ。マジで心の中の意味分からんぐちゃぐちゃを、そのまんま出力しました!って感じの文章になってんのよね。
普通に、これを男性が書けてるのすげえなと思っちゃったな。勝手な想像で申し訳ないけど、男性って、創作物の中でくらい女性を自分の理想像に仕立てあげたいと思ってる節ありそうじゃん? 違ったらごめんけど。
『少女地獄』の中の女の子たち、最終的には全然男の思い通りにならないヤバい女ばっかじゃない? これを男性が書けるのすごくない? え、夢野久作って男で合ってるよね? 怖くなってきた。Wikipedia見よ。

〜Wikipediaを見る時間〜

男でした。すげえ。
……そういう性癖だったのかなぁ。

兎にも角にも、マジで面白かった。ありがとう、夢野久作。私もハイテンション地獄の中で女として生きていきたいと思ったよ。

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