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第498回:ゾンビだって不安なんだ

数年間経験していなかった、異様な空腹感に襲われている。
なんか、アレかもな。パニック映画に出てくるゾンビたちってこういう感情なのかもな。一言で言い表すなら、「不安」。そうとしか言いようがない。食っても食っても腹が減る。もうお腹いっぱい、もう十分食べたわ、これでしばらく大丈夫だわ、と思った30分後にはもうお腹が空いている。味の濃い、ガツンとしたものを食べればいいのかと思って、冷蔵庫の中を探してチョコレートを食べたりするけど、全然満たされない。自分の舌が、「こんなもんが食いてェわけじゃねえんだよ!」と不満そうに言ってくる。確実に「何かが食べたい」んだけど、何を食べても満たされない。甘いものもしょっぱいものも、酸っぱいものもミントみたいな爽やかなものも、揚げ物も焼き物も煮物も、私の舌と胃を十分満足させることができない。

満足していないとは言ってるけど、しっかり何かを食べているのは事実。
その事実があるからこそ、すっごい不安が襲ってくる。これ、めちゃくちゃ太るんじゃないの?  だって数ヶ月前までほとんど何も食べたくなくて、豆腐とか卵とか鶏むね肉しか食べてなかったよ?  っていうか、なんで満足しないの?  何かしらの栄養分が足りていなくて、体がSOSを発してるんじゃないの?  だとしたら何が足りないの?  そもそも栄養的にどうなの?  食べ過ぎも体に悪いでしょ?  でも常に何か食べてないと、お腹がすいたことに気が取られて全然集中できないんですけど?  元々集中力は低い方やのに、これ以上集中力下げてどうするんですか?

もしもゾンビたちがこんな「不安」に苛まれてるとしたら、なんか可哀想だなとも思う。不安だよね、分かる。「理由が分からない」って、この世で一番不快で怖いよね。私達もゾンビのことは怖いけど、きっとゾンビの方も意味の分からない空腹に襲われて恐怖に震えているんだろう。
だとしたら食べられても仕方ないかな。いや、嘘。食われて死ぬのはまっぴらごめんかも。確かに普通の人より「死にたい」という気持ちは多いタイプだと思っているけど、食われて死ぬのはなんか違うかも。もっと穏やかに死にたい。
久しぶりに『睡眠用かまみく』から順番に聴き始めたけど、自分が死ぬ時どんなクラシックを流したいかって話やってたじゃん。私「威風堂々」とかで全然死にたいもん。綺麗にメイクしてもらって、花ぎっしり詰まった棺桶の中で、手を胸のところで組んで、静かに微笑みながら死にたいもん。みんなに、「いい人生だったね」とか言われながらさ。みんな泣いてるけど、でもちょっと笑っちゃうみたいな大往生したいじゃん。
そんなこと言ったらかまどさんに「てめぇそんな死に方出来ると思うなよ!」って言われるかな。言われてぇ〜〜〜。言われたい、いっそ。かまどさんと永田さんになら恫喝されてもいいと思ってる。
でもまあ夢は自由なんで。私は「威風堂々」でお願いします。

なんの話だっけ。そう、終わりのない空腹の話だっけ。
異常な空腹に悩まされて、家のどこかしこからお菓子を発掘しては食い荒らしてるようじゃ、多分この先長生きしますわ。心配ご無用。

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