見出し画像

第404回:not found

起きたらインターネットが繋がらなかったんよね。インターネットの中でしか生きれないしイキれないワイ氏、大発狂。大発狂は嘘やけど。とにかく、インターネットが繋がらんっちゅうのはめちゃくちゃ困る。通信費を払うの忘れたかと思ったけど、毎月口座引き落としにしてるし、口座の残高も確認したはず。ちゅうことはやっぱ機械の故障かなと思ってね。とりあえずリビングに行ってルーターをチェックしようとした。

ほんだらさ、ルーターがねえの。いや、ルーターが無いって何? ルーターが無くなるなんてこと無いやろ、普通。だって、昨日まではインターネット普通に使ってて、寝て起きたらルーターが無いなんて意味が分からん。泥棒? いや、泥棒にしては盗むもんが限定的すぎる。確かに私の口座にはろくな金額入ってないけど、それにしたって通帳とかカードを盗んだ方が手っ取り早いに決まっとるからね。

起きて来たパパに、「ルーター知らん?」って聞いたら、寝ぼけた顔で「はにゃ?」みたいな顔しよる。それ許されんのは可愛い女子中学生までやぞ、ええかげんにせえよ。とにかく、インターネットが繋がらんのやってことを伝えたら、一言。「インターネットて何」やと。だめだこの人。

仕方ないので朝ご飯を食べて、そういえばスマホやったらモバイル通信があるやんかと思い立つ。スマホを見たら、あんなに見慣れた「4G」の文字が無い。ということは、多分うちだけの問題じゃなくて、日本全体で通信障害か何かが起きてるんかもしれん。でも、ニュースをつけてもそんなニュースがやってない。全然街はパニックにもなってない。
首を傾げながら、家の前の電車に飛び乗る。そしたら、電車の中の人たち、誰もスマホを触っていない。おのおの、本を読んだり、音楽を聴いたり、新聞を広げたり、寝たりしている。この光景、どっかで見たことあるな。昔のテレビで見たことがある。それは、インターネットというものが普及していなかった頃の電車の光景。そうか、と腑に落ちた。ここは、インターネットの無い世界か。

そもそも、私はどうやって電車に乗ったんだっけな。何のために電車に乗ったんだっけ。インターネットが無いってことは、私は誰におはようを言えばいいんだっけ。
ふと、フォロワーの名前が浮かんだ。あれ、インターネットの無い世界ってことは、フォロワーはどこに行ったんだろう。Twitterのフォロワーはどこに行ったんだろう。私はふらふら駅の構内を歩いて、教室に辿り着く。教室の中はがらんとしていて、静かで、机が低い。私はその辺でかつ丼セットを買ってきて、廊下でそれを食べた。朝ご飯を食べたあとだったから、全部は食べきれなかった。
フォロワーに会いに行かなきゃ。だって私は、インターネットの中でしか生きられないし。たまたまやってきた羊を捕まえて、私はとりあえず東へ走り出す。海に行けば会えるんじゃないか。だってきっと、インターネットの中の人はみんな海が好きだから。インターネットの中の人は、みんな海と猫と虹が好きなんだ。だから、海に行きさえすれば、きっと私の友達に会える。私は海の中で大きく息を吸って、咳き込んだ。流れ込む水。ここにいるよ。私、一人じゃないよね。スマホは水没する。使えないなります。インターネットは、おしまいです。僕も、おしまいなる。またどこかで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?