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第497回:ヤバい大人になっていく、ただいい人になりたいだけなのに

ここ数日、毎日悪夢に悩まされている。
もう学校を卒業して7年も経つのに、いまだに体操服を忘れる夢を見る。職場の道具の配置がすべて変わっていて、その中でいつも通りの仕事をしないといけない夢を見る。どうやら今日が締切だったらしい仕事が終わっていないことに気づいて、もう既に終わらせている人たちの中で大量の冷や汗をかく夢を見る。約束の時間が迫っているのに何故か自分は服を着ておらず、服を取りに行くためには人のいる場所を通らなくてはならない夢を見る。誰かが作った料理が誰かによってひっくり返され、作り手がもうすぐ帰ってくる中で私一人がなぜか取り残されて責任を押し付けられる夢を見る。大量の動物たちをどうやら任されているのに、数ヶ月餌を与えていなかったことに気づく夢を見る。

その度に息を切らして飛び起きて、何らかの措置を講じないといけないと思って頭をフル回転させる。そしてしばらくして、「全部夢やないか」と気づく。
頭がフル回転している間、私が考えていることといえば、結局「どうやってその危機的状況を打破するか」ではなく、「どうやって自分は悪くないことを言い訳するか」のことが多い。その度に自分が嫌いになっていく。自己保身のことしか考えていない。夢だからよかったやないかと思われるかもしれんけど、咄嗟に自分が取る行動は、もちろんリアルにも反映される。きっと私はリアルで同じことが起こった場合でも同じ態度を取るんだろうな。情けなくて悲しい。本当は正直に、謙遜に、純粋に生きたいと思ってる。なのに自分の染み付いたキモすぎる性格が、そうしない。すぐに自分を守ろうとして、嘘をつき、それを塗り重ねて身動きが取れなくなっていく。もうやめたいと思ってるのに、咄嗟のときには冷静な判断っちゅうもんができない。私の沸騰した頭は、いかに自分がここから逃げるかしか考えない。

良くなったと思ってたのに、やっぱり情緒が安定していない。とんでもなく悲しくなったり、自分でも意味分からんくらいイライラしたりする。
今日、買い物に行くとレジが混みまくっていた。誰にも罪は無いけど、ただ「待つ」という状況に立たされただけでイライラが蓄積されてしまう。
お会計が、5,555円だった。それを見た私の後ろに並んでいたおばさんが、「あらーゾロ目! 珍しいわねこんなことなるの、こんなことになったら何か特別な割引とかなっちゃったりして〜?」と話しかけてきた。
無視してしまった。もう話しかけないでほしかった。でもさぁ、おばさんの言ってることは何も間違ってない。会計がゾロ目になることなんて滅多にないんだから、ちょっと楽しめばよかったのにさ。しらっとした顔で淡々と会計を済ませて、サッカー台で袋詰めしながら情けなくなってきてちょっと泣いた。なんなんだよ、もう。どうしてこんな嫌な奴に育っちゃったんだよ。こんな人間になりたかったわけじゃないよ。私だって会計がゾロ目なことで、周りの人とひと盛り上がりしたいよ。なのにもうどうしようもないイライラが、「いいひとでありたい」っていう願望を簡単に越えていってしまう。

いい人になりたい。心の底からそう思ってるし、そうあるべきだとも思ってる。私なんてもんは何も持ってない。だからせめて性格くらいは良くあるべきなのに。そうしたいと思っているのに、そうできない。
一生懸命、人間性を磨くにはどうしたらいいのか、なんて調べたりする。人ってこうやって自己啓発本とかにハマっていくんだろうな。私は絶対に自己啓発本なんかにハマらないぞと思ってるけど、このまま本当に自分がヤバい奴であるという自覚を持ったままどんどん大人になっていってしまったら、さすがに自己啓発本とかに縋るしかないのかもしれない。
いい人になりたい。ただいい人になりたいだけなのに。

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