お墓が見える部屋に住むこと

私は都市部のマンションの2階に住んでいるのだが、隣が墓地なので玄関前からもベランダからもお墓が見える。

お墓が見える部屋は多くの人が避けたいと思うだろうが、私も実はその1人であった。新卒で入社し初配属地域が言い渡されるタイミングで体調を崩したので、勧告が遅れ引越しがギリギリになった。そしてほぼ強制的に内見無しで部屋が決定し、いざやって来てみるとこの絶景に驚かされたのである。

初めて親元を離れて、海を越え、初の一人暮らしが墓の横である。

ここからは私の心境の変化を述べていく。

始めはやっぱり怖かった。特に夜は帰宅時に玄関前に行くのもドキドキしたし、あまりお墓の方を見ないように努めた。

しかしある会社の先輩の一言で考えが変わった。その先輩は使ってないものがあるからとまだ家電が少ない私に色々と譲ってくれたうえ、私は車もないので持ってきて戴いた時もあった。その時先輩はお墓を見てすごい所に住んでるなと言った後にこう言った。

「でも沢山の仏様が見守ってくれてるってことや」

どこかハッとした。それからはそもそも何もイタズラしてないので襲われることもないだろうと考えるようになった。さらに言えば襲われない為にも人として努めて真っ当に正直に生きるような意識になれた。

今やお墓との生活に完全に慣れて、横はお墓だと自虐も飛ばすようになった。

今朝は眠気覚ましにベランダに出ていたが、おのずとお墓は目に入る。少し冷たくなった風に当たっていると、ふと幼少期に家族でお墓参りに行ったのを思い出し懐かしくなった。

お墓参りは決まって朝で、山にある所だったので寒いしめんどくさかった記憶がある。私はいつもその後の朝マックを楽しみにしていたなあ。

自分が望んでいなかった事象からも素敵な思い出が呼び起こされたりするので、ランダム性のある決定も時には良いのかもしれない。


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