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恐怖の時代

平安時代とはよくいったもので、8世紀後半から12世紀後半という約400年、地方での騒乱以外、大した戦争も起こらず時を重ねた時代です。
第二次世界大戦後、平和ボケとか言われている現代が、たかだか60年ということを考えれば平安時代がいかにボケてたか。貴族・藤原氏が権力を握る官僚政治の時代、途方もない“平和”はなにをもたらしか?

まず、朝鮮への出兵もやめ、遣唐使も切り上げ、外的刺激がなくなった。
中国を仰ぐ必要がなくなり、日本独自の文化が花開きます。一番特徴的なのは「枕草子」「源氏物語」などの女流文学ですね。さらに“平和”は社会の女性化を促すのか、占いが相当はやった。今日は北東の方向へ行くなと占いで出ると、仕事の予定をも断る公の口実になりえた。(今でもこういう人いない事ないですけど)バカみたいですけど、科学がないとはこういうことです。

また、流罪が最も重い罪で、死刑というものがなかった。この裏にあるのは怨霊信仰ですね。人を殺すと祟られる、坊主を殺すと3代まで呪われるってやつが怖くて大変だった。だから貴族でも軍事に関わる兵部大臣,警察組織の長である刑部大臣とか「死」に近い職は成り手がなかった。

その時代最大の怨霊といわれたのが、菅原道真(すがわらみちざね)で、時の大臣が大宰府に左遷され憤死した話は多くの人々の話題に上り、何かというと道真の祟りという話が出、彼の怨霊は無限大に大きくなっていったのでした。生前・道真を虐めてた貴族が続々と変死、皇居に落雷が落ちるに至って、(やはりそうだったのか!)平安京は恐怖のどん底に落とされたのでした。

当時の最先端科学・阿部晴明で有名な陰陽道、修験道(山伏ですね)、仏教、神道みんな揃ってこの問題に対処した。
怨霊信仰というのは何宗というのはないんです。古くは以前の支配者であるオオクニヌシノミコトの出雲王朝に「祟るなよ」という気持ちをこめて日本最大の神社、出雲大社を建ててあげたことから始まり、今でも怨霊ものや祟りの映画ってやっぱり独自の怖さをもってて、それゆえウケるじゃないですか。

つまりこれは日本人が元々持っていて、今でも死んでない信仰なんですね。 
平安時代はそうした信仰が人々の脳内で暴走した恐怖の時代だったのです。
現代人からみれば、つまらないことにおびえる毎日。藤原道長とか名のある貴族でもそうですから、平和の末の文化の醸成もいいのかどうなのか微妙な気持ちになりますね。
(2005.2.5初出)

◆更なる恐怖の時代に続く

【たんす屋の古代~中世考】
◆恐怖の時代
 https://note.com/mazetaro/n/necc41b776ca7

◆更なる恐怖の時代
https://note.com/mazetaro/n/n31e341e69e1f

◆いい加減と適当(1)
https://note.com/mazetaro/n/n9064a5c9f8fb

◆いい加減と適当(2)
https://note.com/mazetaro/n/nc660bc6e93c3

◆将軍~GENERAL(前編)
https://note.com/mazetaro/n/nbba5de87d528

◆将軍〜GENERAL(後編)
https://note.com/mazetaro/n/n0e3dc3b8d351

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