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その先にはきっと何もない。

要点:夕焼けから生まれるノスタルジー、人生の捉え方。

眩しい夕暮れに目を細めている時に不意にわいてくる喪失感。西日の淡いオレンジに染まった壁に等身大の自分の影が映っている。

希望なんて大袈裟なものではないのだけれど、まだ知らない何かが世界には溢れていて、まだ何者でもない自分に可能性を感じていた時があったはずだった。

気がつくとそんな近未来のわくわくはどこかへ廃棄されていて、こうやって可もなく不可もなく、無難なままで人生終わっていくんだという確信めいた予感だけが手元に残っている。何者でもない自分というのは変わっていないけれど、それは何者にもなり得る可能性があるのではなくて、ただただ平凡な一市民でしかないことが確定したという意味だ。何者にもなれないまま、きっとこの先もこのままなのだろう。

それが嫌なら今からでも努力しろだとか、何も行動をしなかった自己責任だとか、そういう輩はどこにでも湧いてくる。そんな話はしたくないし、そもそもそんな努力しなければ手に入らないもので、欲しいものなんてない。

生涯をかけて欲しいものがないのだから、どう人生が転ぼうが、その先にはきっと何もない。行き着く場所で感じる虚無は一緒なのだから。

そうやって自分を理解したことこそが豊穣な収穫であった。

いつか何者かになるのだろうと感じていた幼子は、結局何者にもなれず、何者にもなれなかったことを自らの大切な宝物として時折思い返す。そうして薄暮はいつしか深い青の中に失われる。

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