世界で戦う日本人レーシングドライバー イタリアF4で戦う山越陽悠選手へインタビュー

今回はイタリアF4選手権に参戦中、記事公開時点でここまで2勝を挙げてシリーズランキング2位につける、Van Amersfoort Racingの山越陽悠選手への独占インタビューを行うことができました。


お名前と年齢と出身、今シーズン参戦しているレースシリーズを教えてください。
「山越陽悠(やまこし ひゆう)です。今17歳で、今年の10月13日で18歳になります。東京都出身です。今年はイタリアF4選手権(以下:イタリアF4)と、夏場から開催されるユーロ4選手権に参戦します。」

イタリアF4に参戦されているということで、お住まいはどちらですか?
「今はスイスに住んでいます。スイスの学校に通いつつ、レース活動も行っている感じです。」

生活やレースはもちろん英語だと思いますが、言語面に関してはいかがですか?
「はい、やりとりは全部英語ですね。自分で学んだり学校に通っているのでそこで学んだりもしています。エンジニアやチームメイト間とのやりとりも今年に関しては全く問題ないです。」


レースを始めることになったきっかけを教えてください。
「昔からスーパーGTが好きで、特に2012~2013年あたりのシーズンが大好きだったんです。2014年の家族旅行でレンタルカートに初めて乗ったときに、『これ、楽しいじゃん!』と思ったので、2015年の1月にフォーミュランド・ラー飯能でカートの体験走行をして、そこでも楽しいと感じたのでカートの世界に入っていったのがきっかけですね。その前はゴルフをやろうと思っていたんですけど、たまたまレンタルカート場があったのでたまたま乗ったら楽しかった。たまたまの連続だったんですよね。」

「カートのレースに出場し始めたのは2015年の夏で、2022年までカートでレースをしていました。2019年のTOYOPET SLカートミーティング全国大会で、大会内の最高峰クラスのYAMAHA SSクラスというカテゴリで優勝して日本一に。2020年はヤマハ『Formula Blue』というトヨタとヤマハがスポンサーをしてくれる、いわゆる”アカデミー”のようなチームに加入して、全日本カート選手権FS-125クラスの東地域の開幕戦と最終戦の東西統一戦で優勝を挙げランキング2位になりました。」

カート時代は主に日本で走られていたんですね。
「そうですね。2022年は海外のレースにも数戦参戦しましたが特に目立った成績はありませんでした。あと、2021年までは”山越ヒユウ”の名前でエントリーしていたので、漢字で”山越陽悠”と検索してもカート時代のリザルトがあまり出てこないのはそれが理由だったりします。」


続いてはフォーミュラにステップアップしてからのお話をお伺いします。
「初めてフォーミュラをドライブしたのは2021年ですね。前の世代のスーパーFJのクルマをドライブしました。そのあと、2021~2022年あたりに岡山でF4をドライブしましたね。ちなみに今のトヨタのF4ドライバーの佐野(雄城)だったり鈴木(斗輝哉)だったりも僕と同じくらいにドライブしていたはずです。」

フォーミュラでのレースデビューについて教えてください。
「フォーミュラでのレースデビューは2023年の1月末に行われたF4 UAE選手権(以下:F4 UAE)の第2戦クウェート戦です。」

ヨーロッパのドライバーがF4 UAEでフォーミュラデビューをすることは珍しくないことだと思うのですが、日本人ドライバーがこれを行うのは非常に珍しいことだと思います。参戦することになったきっかけは何でしょうか?
「マネージャー側から『ピンナクルVARからF4 UAEに出れるけどどうする?』というような話があって、VAR(Van Amersfoort Racing/ファン・アメルスフォールトレーシング)がサポートしてくれるという話だったので参戦することになりました。クウェートモータータウンの2戦に参戦して、1戦目は初レースだったのもあって苦戦しましたが、2戦目は予選で2回ともシングルグリッドを獲得して、レースでも2レースでポイントを獲得できました。」

F4 UAEに参戦された後、フランスF4選手権(以下:フランスF4)に参戦されました。フランスF4にはチームという概念がありませんが、参戦はどのように決まったのでしょうか?
「えー、早い者勝ちですね(笑)。枠が25台くらい(2023年は26台)あるので、それを申し込んだ者勝ちみたいな感じだと思います。多分経歴とかも関係なくて、去年参戦していた2号車のエドゥアール・ボルグナはカート経験無しで参戦していましたね。参戦に必要な資金も安くて、今年だと日本のF4よりも安いと思います。というのもあってフランスF4の参戦条件は緩いと思います。」

フランスF4に参戦しながら、スペインF4選手権(以下:スペインF4)にも日程が被っていないラウンドは参戦されていました。こちらの参戦経緯も教えてください。
「スペインF4に関しては『カンポスレーシング(Campos Racing)に入りたいな~』と思ったので『カンポスレーシング入れますか?』っていうのを連絡したら、カンポス側が『シートはもう埋まってるけど、テクニカー(Tecnicar - Fórmula de Campeones)というチームでカンポスジュニアとして走ることなら出来るよ。テクニカーで良い成績を残せたら来年カンポスで走らせてあげられるかも』という契約でテクニカーで参戦していました。『カンポス乗りたいんだけど~』っていうのはマネージャーに軽く言っただけなので細かいやりとりは分からないですけど、資金が用意できれば乗れる感じだと思います。ちなみにスペインF4の参戦費用も安くて、フランスF4の次に安いくらいだと思います。」

ここまでのお話を聞く限り、マネジメント側が海外のシリーズのシートの獲得に大きく貢献しているように聞こえますね。
「僕の方からこっち(海外)でレースをしたいって話があったので、マネジメント(Stratos Motorsports)も全部海外で日本とは関係ない状態でやってます。海外でレースをするために僕と僕のお父さんとマネージャーで話をして参戦シリーズを決めた感じですね。カート時代はマネジメント無しでやっていたのですが、2022年の夏頃に知り合いのカートチームと現在のマネジメント会社の人との繋がりがあったので、そこからですね。」

2023年はフランスF4はフル参戦で年間ランキング5位、スペインF4は2戦欠場がありながらランキング14位(チーム最上位)の成績でした。そして今シーズンはイタリアF4に参戦されますが、こちらに参戦することになった経緯を教えてください。
「どれぐらい契約の優遇が効くのかっていうところですね。スペインF4では2チームからオファーがあって、テストではMP(MPモータースポーツ)にも乗ったので、MPにするか、VARにするか、サンテロック(Saintéloc Racing)にするか、テクニカーにするかみたいな感じでしたね。特にスペインF4ではテクニカーであれだけ走れてた(山越選手が19ポイント獲得する中、チームメイトの獲得ポイントは1ポイントのみ)のもあったのでサンテロック(去年のドライバーズチャンピオン獲得チーム)からのオファーがありましたね。一方でVARに関してはF4 UAEでの走りを見てのオファーでしたね。その中で一番優遇がいろいろ効いた契約内容だったのがVARだった感じです。VARが参戦するイタリアF4についても世界一レベルの高いF4シリーズだと言われているので、『その中で結果を残せれば凄い良いんじゃない?』っていうのもありました。過去のシーズン*を見てもランキングトップ5のドライバーはF3、F2まで行ってることが多いので。ただ開催サーキットのほとんどが経験がない状態で参戦するので、”賭け”でもありますね。」

*(F1参戦が噂されるオリバー・ベアマンやアンドレア・キミ・アントネッリもイタリアF4でチャンピオンに輝いており、F3で現在ポイントリーダーのガブリエレ・ミニもイタリアF4のチャンピオン、F2で現在ポイントリーダーのポール・アーロンもイタリアF4の卒業生である。)


ここからはイタリアF4のシリーズについて伺いたいと思います。
まず、レースウィークの流れについて教えてください。

「コレクティブテスト(練習走行)が木曜日にある場合は、水曜日の午後3時、4時くらいにサーキットに到着します。コレクティブテストが無い場合は木曜日の同じ時間帯にサーキット入りしますね。基本的に金曜日から始まるはずなんですが、開幕3戦は木曜日から走行があります。コレクティブテストが2時間~4時間程度あって、金曜日にフリー走行と予選がある感じですね(第3戦は予選が土曜日なのでラウンドによって変更あり)。予選は15分間のセッションが2回続けて行われます。」
(予選1回目(Q1)の結果がレース1のグリッド、予選2回目(Q2)の結果がレース2のグリッドに反映される。レース3のグリッドはQ1とQ2のそれぞれの2番目に速かったラップタイムの速い方の順番で決定される。)

イタリアF4は40台近くがエントリーしていますが、予選は全車が同時に走行するので非常に難しそうに思うのですが、いかがですか?
「第2戦のイモラに関しては、エンジニアが凄く良いストラテジを立ててくれたので、トラフィックはあまり気にならなかったですね。F4はF3などと比べてもクルマが小さくてダウンフォース量も少ないので、ダーティエアの影響を受けづらいというのもあると思います。F4の場合は(前車との間隔が)1秒離れているとギリギリ影響を受けない感じですね。」

イタリアF4はピレリタイヤが使用されていますが、予選アタック中でもタイヤの性能劣化は感じるものなのでしょうか?
「ピレリタイヤは基本的にはマキシマムグリップが強いタイヤなので、そこを逃すと『あ、タイヤ(の性能が)落ちてるな』っていうのは感じますね。」

タイヤについては1ラウンドで何セットが使用可能なのでしょうか?
「予選からレースにかけては2セットです。練習走行のセット数は毎回違うのでわからないですね。2回の予選それぞれで新品タイヤを使ってアタックして、レースでは予選で使ったタイヤを使います。」

3レースあるのでどこかのレースでは1レース走ったタイヤでさらに走ることになりますよね。その状態だとタイヤによるペース差がありそうですが、どうなのでしょうか?
「そうですね。でも、ミサノとイモラでのここまでの2戦はタイヤのデグラデーションがあまり無いサーキットなので、そんなに差は無かったですね。ただ、タイヤに厳しいポールリカールやバルセロナ、ムジェロに関してはその差が相当出ると思います。」

シーズン中に使用可能なエンジン数は何基なのでしょうか?
「1基のみですね。壊れない限りそれを使う感じです。やっぱり当たりエンジンと外れエンジンがあって、みんな当たりエンジンを使いたいので極力変えたくはないですね。交換すると外れを引いちゃう可能性があるので。(最高速で)3~4km/hくらい変わってくるので、お話にならなくなっちゃいます。」

イタリアF4のクルマはチームとの無線でのやりとりは出来るのでしょうか?
「はい、できますね。スペインF4でもできます。やりとりの内容はF1などと似たような感じで『後ろとの差はこれくらい』とか『アイツ凄いトラックリミットしてるよ』みたいな感じで、あとはFワード言ったり(笑)。」


次にイタリアF4のここまでの2ラウンドについて伺いたいと思います。
開幕戦のミサノではイタリアF4初レースながら、3レースとも上位グリッドから、レースも全てシングルフィニッシュでした。振り返ってみるといかがでしたか?
「ミサノに関しては、練習走行でマシントラブルがあったせいでセットアップを煮詰めきれなかったところがあったり、僕らのチーム(VAR)自体がタイヤの内圧の設定を少しミスっちゃって、それでペースが伸び悩んでいたのもあったので、結構苦しい中でのレースでした。でも、その中で上手くマネジメントしながらしっかりディフェンスして、自分のポジションを守り切ることができたのは凄いポジティブでした。ただ、僕の中でもチームの中でも『もっと行けたよね』という反省が残るレースでしたね。」

ミサノでのレースを見ていると、セーフティカーのリスタート後に毎回前の集団から離されてしまうのが気になりました。これは先ほど仰っていたタイヤの内圧の問題が原因でしょうか?
「そうですね。それもありますし、マシンのセットアップを煮詰めきれてなかったのもありましたね。」

そんな苦しい中でも3レースともポイントをしっかりと取れたのは選手権的にも大きかったのではないでしょうか。
「そうですね。やっぱり長いシーズンの一番初めのレースなので、良い結果を残してポイントを稼げたという面で考えると良いレースでした。」

第1戦 ミサノでの山越選手の成績

レース1:5位スタート→6位フィニッシュ
レース2:5位スタート→5位フィニッシュ(4位のドライバーにペナルティが出て最終的に4位に)
レース3:4位スタート→4位フィニッシュ


続いて第2戦のイモラについて伺います。
ミサノから1か月ほどのインターバルがありましたがこの間にテスト走行などはあったのでしょうか?

「ミサノとイモラの間には確かテストは無くて、次にドライブしたのはイモラのコレクティブテストでしたね。」

イモラでは2つの予選セッションでトップタイム、セカンドベストも最速で3レースともポールポジションを獲得されました!この結果についてはいかがでしたか?
「Q1に関しては大きなミスをしてコンマ2~3秒失った中でのポールポジションだったので、『あれ?これでポールなんだ』みたいな感じで・・・。F1でよくマックス・フェルスタッペンが言ってるみたいな感じでした(笑)。」

Q1は2位に0.038秒差でしたが、Q2では2位にコンマ3秒以上の差をつけての圧倒的なポールポジションでした。さっきの話を踏まえるとQ2ではミスなくラップが刻めたということですかね。
「そうですね。何もミスなく、うまく決め切ったラップでしたね。」

1周が5km弱のサーキットでワンメイクシリーズで0.3秒差というのはかなり大きな差に思えます。上手くいった要因は何でしょうか?
「まずはチーム側がミサノからの反省を活かしてタイヤの内圧をいいセットアップを見つけてくれたおかげで、タイヤを上手く稼働域に持って行けたのと、イモラは去年のウィンターテストと今年のプレシーズンテストで良いタイムが残せていたので、自分の中でもドライビングに自信があって、チームもセットアップに自信があった状態で挑めたのが大きかったかなと思いますね。セットアップがうまく決まってたので、走ってて快適なマシンを作れたのが大きかったです。」


そしてレース1。ポールポジションスタートでしたがいかがでしたか?
「ポールポジションからスタートするのは2回目で、去年のフランスF4のレドゥノンでのリバースグリッドでのポールポジションはあったんですけど、予選トップは初ですね。」

F4カーでのスタートは難しいですか?
「そんなに難しくはないですね。クラッチ踏んで半クラにして、ブレーキ踏んでアクセルを踏むだけなんで、基本的には大失敗することはないはずです。ただ、リアクションスピードだったり、ローンチの仕方でクラッチを早めに離しすぎるとホイールスピンしてタイムを失ったり、逆に安牌に踏みすぎちゃってると加速しないっていうのがあるんで、そこでの上手い下手の差は結構出ますね。FIA F4の0-100km/hの加速の一番速いタイムが確か3.4秒か3.5秒だったはずなんですけど、僕のこの間のイモラでの3レースのアベレージが3.65秒とかだったんで、3レースともほぼ完璧なスタートを決められていたっていうのがあります。」

なるほど。イモラはスタートしてから最初のブレーキング(ターン2)までが長いので、スタートが良くないとそこまでに抜かれてしまうというのを他のシリーズで見ていたのですが、今の話を聞くと守り切れたのも納得です
「ただ、それだけギリギリを攻めたのにも理由があって、(フレディー・)スレイター(プレマレーシング #27)のスタートがいつもめちゃくちゃ速いので、それを警戒してだったんですよ。イモラで2番手スタートのドライバーが(レース1は)スレイター、(レース2と3が)ジャック(・ビートン)(USレーシング #45)だったんで、スレイターはスタートがめちゃくちゃ上手くて、ジャックもスタートがめちゃくちゃ上手いんですよ。なので、スタートにめちゃくちゃ集中しないと抜かれちゃうっていう状況だったんで、よりギリギリを攻めたって感じですね。」

スタート直後の後方でのクラッシュでセーフティカーが出ましたが、そのリスタートで2番手のスレイター選手に抜かれてしまいました。それについてはいかがでしたか?
「(隊列の先頭での)リスタートに関しては経験がかなり少なかったので、あれは自分にとって凄くいい経験になりました。悔しかったは悔しかったんですけど、ポジティブな面だと今後に向けていい経験になったなっていうのが大きいです。一応去年のイタリアF4やその前のイタリアF4、F2やF3のイモラのリスタートも見まくって予習をしてはいたんですけど、ちょっと足りなかったかなって(笑)。先頭でのリスタートはあまり経験できるものではないので。誰かの後ろで走ったりリスタートを切ることはいつでもできるんですけど、トップっていうのは特別性があります。」

その後はスレイター選手についていく展開でした。イモラはオーバーテイクがやはり難しいサーキットですか?
「そうですね。もう、ほぼ無理です(笑)。」

レース1は2番手でフィニッシュとなりましたが、トップチェッカーのスレイター選手が失格となり繰り上がりで優勝となりました。優勝を知ったのはいつでしたか?
「その日の夜の10時くらいですね。エンジニアから『彼(スレイター)が失格になったから君が優勝だよ』っていうメッセージが送られてきました。その時は全然意味わかんなくて『失格?スレイターが?』みたいな感じで(笑)。優勝した実感も全然なかったです。」

繰り上がりで優勝になると優勝トロフィーは送られてくるのでしょうか?
「はい。スレイター本人が持ってきました。僕の(2位の)トロフィーは(3位でフィニッシュしたアクシャイ・)ボーラのUSレーシングに渡しましたね。」


翌日のレース2もポールポジションからでしたが、今回の相手はジャック・ビートンでした。レース2を振り返っていかがでしたか?
「ジャックは結構アグレッシブなドライバーなので、逃げ切らないとまずいなっていうのはあったんで、かなりプッシュしてましたね。」

どんどん2位のビートンとの差を広げていきましたが、今回もレース途中にセーフティカーが導入されました。ですが、今回のリスタートではしっかりと先頭を守り切りましたね。
「そうですね。これは昨日の経験が活きたと思います。」

そしてそのまま逃げ切り、トップでフィニッシュ!トップチェッカーを受けた感想はいかがでしたか?
「もう言葉に表せないくらい最高ですね。」

イタリアF4で複数回勝利した初の日本人となりましたね。
「はい。今後僕以外の日本人ドライバーがイタリアF4に出ることがあるのかっていうのもありますが(笑)。」

VARとしては2021年のオリバー・ベアマン以来のイタリアF4での勝利となりました。チームとしてもこの勝利は大きかったのではないでしょうか?
「士気は凄い上がった感じはしますね!」


その良い流れのままレース3もポールポジションからスタート。外から見ていてレース時間残り1分までは完璧なレースだったように思えました。
「そうです、仰る通り完璧なレースでした。」
その直後、先頭を走っていたのに突然フロントウィングが壊れている映像が目に入ってきました。あの瞬間は何が起こったのでしょうか?
「あれはもう完全に・・・プレッシャーに負けましたね。(後ろから迫る)スレイターのプレッシャーに負けたのもあるし、3連続ポール&3連続優勝の歴史に名を刻むというプレッシャーにも負けた感じですね。それで、裏のシケイン(ヴァリアンテ・アルタ)でフロントウィングがイン側のボラードに当たって、壊れてしまいましたね。」

フロントウィングがボラードに当たるとウィング自体が壊れてしまうんですね。
「僕も初めて知りました(笑)。当たっても壊れないと思ってたんですけど壊れちゃいましたね。ほかのカテゴリとは違って強度が違うらしいです。」(実際、その前に行われたF3ではボラードに当たってもウィングは壊れなかった。)

ウィングが壊れてしまうと、もうレースにはならない感じでしょうか?
「あの時は壊れたウィングがタイヤに当たってパンクもしてしまったので、パンクしていなかったら多分生き残れてましたね。ウィングが完全に取れたうえでパンクしていなければ、2番手~3番手で帰ってこれたかもしれないですね。後ろとの差が結構あったので。」

少し余談ですが、壊れてしまったウィングは修復して利用することはできるのでしょうか?
「あれはダメですね。安全性の問題で基本的にフロントウィングは直せる状況でも直しちゃダメなんですよ。スレイターがレース1で失格になったのは修理したものを使ったっていうのが理由みたいです。」

ダメージを受けたあとはピットインし、結果的にレース3は27位でフィニッシュとなりました。しかし、ダメージを受けるまでは一番速かったのは山越選手でした。イモラの週末は全体を通してポジティブな結果になったのではなったのではないでしょうか?
「そうですね。全体としてはほぼ3連勝みたいな感じで走れたのでそこは大きいですし、トップを走れたのは凄く良い経験になりました。特にセーフティカーのリスタートの面では、どうやってトップがリスタートをするのかというところで、今後2~3番手でリスタートするような場面があれば今回の経験を活かすこともできるかなっていうのもありますね。」

第2戦 イモラでの山越選手の成績

レース1:1位スタート→2位フィニッシュ(1位のドライバーが失格で最終的に優勝)
レース2:1位スタート→優勝
レース3:1位スタート→27位フィニッシュ


2ラウンドが終わりましたが、ライバルとなりそうなドライバーは誰になりそうですか?
「チャンピオンシップの直接的なライバルとなるとスレイターになりますね。レースでのライバルとなるとボーラ(USレーシング #31)や(アレックス・)パウエル(プレマレーシング #80)ですかね。ボーラに関しては基本的に完走第一でポイントを取ってくるドライバーで、それに加えてペースもあって速いドライバーなので、警戒しておかないとすぐに食われちゃうドライバーですね。アレックス・パウエルは単純に速く、開幕戦のミサノや先週のヴァレルンガのテストも良さそうだったので警戒すべきドライバーかなって印象です。」

今シーズンのイタリアF4では日本に関係あるドライバーとして中村ベルタ紀庵選手、同じヨーロッパのF4では加藤大翔選手がフランスF4に参戦していますが、交流などはあるのでしょうか?
「(中村ベルタ選手に関しては)話したことないですね。彼は日本語が話せないので。注目度でいうとあっちの方がありそうですけど、こっちもまあまあ頑張ってるので見てほしいなって(笑)。あっちはアルピーヌ育成ですけどこっちは気合で生き残ってるので、そういう意味では今年中にそういうの(育成プログラム)が付かないと僕のレース人生は終了かなって。上にあがるとなると億の世界になってきちゃうんで。どこか拾ってくれないかな~って思いながら(笑)。加藤選手に関してはぼちぼちありますね。一応僕から彼が良い結果を出したらおめでとうは言ってます。」


今週末は第3戦のヴァレルンガですね。先日テストがあったという情報も見かけました。意気込みなどを伺いたいと思います。
「そうですね、ヴァレルンガは2日間のテストがありました。目標としては表彰台を2回取って、あとはポイントを取れればいいかなってくらいの気持ちではあります。やっぱり上を見過ぎていると空回っちゃうこともありますし、僕はそういうのがあまり好きなタイプじゃないので。基本的には少し下を見ながらいつもチャレンジャーな気持ちで走るというのがモットーとしてあります。僕のTwitter(X)の『頑張ります!』系のメッセージって、具体的の順位を書いてないんですよ。あれが、『僕はこの順位を取りたいです!』ではなく『いい順位を取りたいです!』っていうのを表していて、『じゃあいい順位って何位なの?』って感じでぼかしているのもそこからあります。」

SNS関連の話題として、レース後すぐに山越選手本人からファンの皆さんのレースに関してのポストにいいねやリプライをしていますよね。世界的に見てもこのようなドライバーはとても珍しいと思います。
「この間の優勝したときは1時間後だったんですぐじゃなかったんですけど(笑)。」
レースが終わって1時間後に優勝したドライバーからリプライが来る時点でなかなかないと思うのですが(笑)。
「リプライが来る時点で結構ありえないレベルの話だと思います(笑)。この間のイモラでは15人くらい新規の方にリプライを返してました。これも僕のモットーで、フォロワーさんって応援してくれてる方々なので、”ドライバーと視聴者”っていう関係性ではなくしていきたいんですよね。モータースポーツ界ってどうしても”ドライバーと視聴者”っていう壁が厚くて、僕はそういう壁があまり好きじゃないんで、そこを無くしていきたいなっていうのがあります。でも僕がやってることって結構頭悪くて、日本のドライバーを見ても、ヨーロッパのドライバーを見ても、エゴサしてコメントしてる奴なんて見たことないんで(笑)。僕のTwitter(X)の検索欄の履歴って上から”Hiyu Yamakoshi”、”山越選手”、”陽悠選手”、”山越陽悠”…って感じなので、それで早く反応できるんですよ(笑)。ただこの間はちょっと大変でした。嬉しい大変さですね。いいねとリポストがめっちゃ多くて、コメントがすぐ埋もれちゃうんですよ。なので、今後は自分のハッシュタグを作るかとかをしないといけないかもしれないですね。イモラでは1時間以上かかったんで。」
レース時間より長いじゃないですか!(笑)

この記事の掲載前にハッシュタグが決まりました!今後は#HY6をつけて応援しましょう!


今シーズンの全体的な目標を伺いたいと思います。
「今シーズンの目標に関しては具体的な目標があります。年間ランキング3位以上ですね。来シーズンのことを考えるよりも、とりあえず年間ランキング3位以内を目指してなるべくいい順位を取っていけるようにやっていきます。」



山越陽悠選手の各種SNS
X(旧Twitter)https://x.com/HiyuYamakoshi 
Instagram https://www.instagram.com/hiyu.yamakoshi


イタリアF4選手権のレースはYouTubeでライブ配信が無料で視聴可能!
第3戦のヴァレルンガは6月15日~16日に開催されます!
レース1:6月15日 午後10時40分 配信開始
レース2:6月16日 午後3時55分 配信開始
レース3:6月16日 午後9時20分 配信開始

今後のイタリアF4選手権とユーロ4選手権のレース日程
7月13日~14日 イタリアF4 第4戦 イタリア:ムジェロ
7月20日~21日 イタリアF4 第5戦 フランス:ポールリカール
8月24日~25日 ユーロ4 開幕戦 イタリア:ムジェロ
9月14日~15日 ユーロ4 第2戦 オーストリア:シュピールベルク
9月28日~29日 イタリアF4 第6戦 スペイン:バルセロナ
10月5日~6日 ユーロ4 最終戦 イタリア:モンツァ
10月26日~27日 イタリアF4 最終戦 イタリア:モンツァ

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ユーロ4選手権 ホームページ


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