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「一番好き」を仕事にするな

幼い頃から自分の"成りたい"を語るとこう言われ続けた。

一番好きなものを仕事にしてはいけない。
それは逃げ道に残しておくのがベストだ。
一番好きが一番嫌いになった時、
それはもう凄まじく苦しい。


母は昔から洋裁がとても好きで、リリアンから始まり編み物・キルティング・ミシンと幅を広げ、専門学校に通い卒業してパターンナーになった。
母と買い物に出ると「これ可愛い形だなぁ〜」と言ってはお店に売っているものを手に取りバーっと全体を見やる。「ああ、これなら作れるからいいや」なんて言って戻す。生きた3Dスキャナー。そして実際に作ってみせるから凄い。パターンナーをしていたから、一から型を作って具現化してしまうのだ。
私が幼い頃に着ていた服やセーター、小学校で必要な連絡袋なんかは買ったことがない。作れるものだと思っていたので、友人が購入したものを使っていたと気付いたのは小学校も高学年になってきた頃だった。

服飾の世界はどうしても女社会になる。
今でこそメンズファッションにスポットライトが当てられる時代になったが、母の若かりし頃はまだその風潮も強い頃。
母は働いていた当時、その女社会に馴染めずに辞めた。新人いびりが凄かったらしい。
今も趣味で洋裁は続けてはいるが、もう仕事にはしたくないと言っている。

「好きを仕事にしてはいけない。2番目に好きなものを極めろ」
私が受験などで道を探している時にはきまってそう言われた。
専門学校に行きたいと言うと、極めたものがダメになった時、何も残らないからやめておけと。そう言うのだ。
相当自分のやり方に悔いがあるのだろう。
選べる道は広く作っておいて損はない。
そうしたらいくらでも極められるものも増えると。
「好きこそ物の上手なれだろ」と思っていた私は、まるでその気持ちが分からなくて、何度も母と衝突した。

私は今、モデル活動や役者活動、執筆に朗読と様々なことに手を付けている。どれが一番好きなんだ?と言われたら正直言ってない、というのが本音。
私が本当に一番好きなのは音楽だから。
だけど音楽から得た力は確実に今の活動に生きている。

だから今となっては分かる。
2番目に好きなものくらいが一番極めやすい。
好きなものにはなるべく雑念を入れたくない。
それは純粋に楽しむ心を忘れないための砦。

これが今生きる私の価値観。

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