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文藝賞優秀作・佐佐木陸さん 静かに現実と闘うひとへ

連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」第八回にご登場いただいたのは「解答者は走ってください」が、文藝賞優秀作に選ばれた佐佐木陸さん。

最終候補での落選を四度経験した佐佐木さん。インタビューの答えの端々から、同じく小説家を目指すひとへの応援の思いが伝わり、毎度思うことなのですが、早くこれを記事にしてみなさんに届けたいなと思いました。

記事中のなんとも居心地のよいお部屋に、注目された方も多かったようです。私もあまりの理想の環境に、泊まりたい……ここの本棚にあるものについて佐佐木さんの解説つきで読みふけりたい……と思いました(実際、口に出してましたw)。

「世界毒舌大辞典」や、フェミニストの筆者が世界の神話を独自の解釈で綴ったという「神話・伝承事典」。気になる本がありすぎました。撮影/武藤奈緒美

色々勧めてくださったのですが、なかでも心に響いたのがモリ―・ドレイク(Molly Drake)。26歳で急逝した伝説のシンガーソングライター、ニック・ドレイクのおかあさんだそうです。

撮影/武藤奈緒美

音源を聞かせてもらいました。

自宅で子どもたちに聴かせるために歌った自作の短い歌たち。
優しい声とこぼれる陽の光のようなピアノの音色。
佐佐木さんは、「こんなふうに誰かに認められたいとか、名を成したいという気持ちもなく、ただただ静かに自分の創作をしている人たちを尊敬しています」と話してくれました。

音楽の詳しくない私は、ニック・ドレイク自体はじめて知ったのですが、作品と成功が結びつかなかった彼は思い悩み、うつ病に。26歳で薬の過剰摂取で亡くなった時、発見したのはモリ―だったそうです。

私はひとが亡くなったとき、どうしてもその人生を悲しく不幸なものとだけは思いたくないのです。遺された側の傷を浅くするエゴなのかもしれないけれど、それこそが人が物語を想像する一番の動機ではないかと個人的に思っています。

ニックの死の経緯を知ってから、この歌をあらためて聞き、やっぱり私は思ってしまいました。

ニックの人生は悲しいだけではなかった。
お母さんがニックのためだけに作った歌をニックのためだけに歌った、幸せでしかない瞬間があったのだ、と。
ニックに先立たれたモリ―もまた、悲しいだけの母親ではなかったと。

この歌を発掘し、世に届けた人々にも感謝の思いをもちました。

本当に美しい創造物を教えてもらいました。また佐佐木さんちに遊びにいきたい!(こいつ、居座る気だ……)

最後に、プロフィール写真で赤松さん以降恒例となったふぁにーちゃん的ポーズ。これは、相手がきつねに化けたやつかどうかを見破る「きつねの窓」というポーズらしいです。知識が多岐にわたりすぎ!

もちろん撮影は武藤奈緒美さん。

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