半額食堂(2) とうもろこしのスープ
毎日蒸し暑い。東京はもうすっかり夏の気配だ。
青果売場の店頭には黄色や白色のとうもろこしが並んでいる。子供の頃からとうもろこしのスープは大好物だ。いつも母にねだって作って貰っていた。
母が作るとうもろこしのスープは、小麦粉をバターで炒めて、そこに牛乳を少しづついれてのばし、アヲハタのスイートコーン缶詰クリームタイプを投入するというもの。
こってりどっしりな食感が、子供の自分にはことのほか美味しく感じられた。
一方祖母が作るとうもろこしのスープは至ってシンプル。山間の村の畑でとうもろこしを作っていた祖母は、もぎたてのとうもろこしを大きな鍋で茹で、実を外して牛乳と一緒にミキサーで撹拌する。ただそれだけ。
「とうもろこしスープじゃなくて、とうもろこし牛乳じゃん。」と言いつつ飲んだスープは、あっさりとしているがとうもろこしの甘みが際立つ、極上のとうもろこし牛乳だった。
大人になった自分は母に習ったレシピでスープを作っていたが、子供が小さい時分には余裕がなく、キャンベルのスープ缶で済ませていた時期もあった。それはそれで良いのだが、ちょっと味気ない。
子供の手が離れた最近は半額のとうもろこしを入手し、ちょっとだけ手間をかけた季節限定のスープ作りを楽しんでいる。
材料
とうもろこし…1本 290円→半額
チキンブイヨン(粉末をお湯で溶いたもの)…1カップ
牛乳…1カップ
塩
作り方
1. とうもろこしを電子レンジ専用スチーマーに入れ、5分加熱し5分放置する。包丁で実を刮げ取っておく。
2. チキンブイヨン、牛乳、とうもろこしの実を鍋に入れて火にかけ、沸騰したら火を弱めて3分程煮る。
3. バーミックスかミキサーで撹拌し、網でこす。
4. 塩を入れる。この際塩味をつけるのではなく、とうもろこしの甘みを引き立てる程度の塩加減を心掛ける。
やさしい甘みのとうもろこしスープは温かくても冷たくても美味しい。パンチよりも素材の味を前面に引き出したスープは、祖母のとうもろこし牛乳に限りなく近い。
こういう素朴で繊細な美味しさには、ある程度年齢を重ねないと気付けないものなのかも知れない。