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なくしもの対策

最近(これを書いている現在)、雨が多い。雨が多いとなると、傘の出番が増える。傘の出番が増えるとなると、自分の場合、気をつけなくてはいけないのが、傘の置き忘れだ。
 
というのも昔から結構、ものをなくす。傘はもちろん、ストールとかアクセサリーとか、買ったばかりの化粧品とか花とか、とにかく色んなものをこれまでよくなくしてきた。運よく、拾われたものもあるけれど、そのまま一生再会できなかったものも、悲しいかな、ある。
 
どれも自分の不注意といえば不注意なのだけれど、でも、自分としては忽然と姿を消されたような、まるで神隠しにでもあったような、そんな感じでものが自分のもとから突然去っていくような気がしてならない。なので、落とさないよう、なくさないようにと、神経質になるほど気をつけてみるのだけれど、それでも気がつくと手にしていたものが突如として消えていることがある。
 
一体、自分はなぜものをよくなくすのだろう。そんな疑問を抱かずにはいられなかったのだけれど、あるとき、そのなくす瞬間とやらをこの目で目撃してその原因が判明した。
 
それは、買ったばかりの雑貨を入れた紙袋を片手に持って、デパートの廊下を歩いていたときのことだった。ふと、「あ、そういえば」と別の買うものを思い出してユーターンしようとしたその瞬間、私は手にしていた紙袋を思い切り廊下に放り捨てていたのである。本当に、今思い出しても不思議な現象なのだが、その瞬間、私はそんな自分の姿をスローモーションで見ていたのです(急にホラーみたいですが、笑)。それで急いで我にかえって、廊下に捨てられた紙袋を拾い上げたのでセーフだったのだけれど、要は、意識が別のところに向いたとたん、手を握っている方の意識が完全にゼロになっていたというわけなのだ。よく子供が一方に気を取られると、それまで遊んでいたおもちゃを雑に放り投げるみたいなことがあるけれど、そんなことが大人になった今でも起きていたらしい。まさか単なる置き忘れだけでなく、手に握っていたものを無意識に放り出すことまでしていたなんて!思いもしなかったので、自分でもちょっとびっくりだった。
 
でも、その不思議現象のおかげで原因がよく分かってからは、何かに気を取られそうなときほど、手にしているものに意識を分散させる努力をしてきたおかげもあってか、ものをなくす頻度はすごく減ったし、最近に至ってはほとんどものをなくしていない(家のなかで「あれ?どこ置いた?」はしょっちゅうですが)。けれどもやっぱり傘に関してはなくしやすいなあという懸念がぬぐえないので、ここ数年前からは新たな方法を編み出して実践している。それは、傘自体に直接どこかにいかないようお願いしてみる方法なのだ。
 
たとえばバスとか電車にのって、傘を立てかけたりした場合、傘の柄をそっと撫でてやりながら「よろしくね」とか、「今日はずっと一緒だよ」とか、心のなかでこっそり声をかけておく。すると不思議なもので、「わかったよ。ちゃんと一緒にいてやるよ」と傘が言わんばかりに自分についてきてくれるのだ。イメージとしては傘とみえない糸で結ばれるような感じになって、意識がそこから完全に離れずにいるという感じだろうか。つまり、信用置けない自分の代わりに、いっそのことものの方に頼ってみるというわけなのだ(私から離れないでね、と)。なので傘に限らず、大事なものを手にしていくときには意識的にものに一声かけるよう心掛けている。
 
こんなことを言うと、そんな眉唾的な方法~、と思われるかもしれないけれど、案外、自分には効果があったので、よくものをなくす方がいましたらぜひ、おまじない感覚でこっそりと、「よろしくね、一緒にいてね」とものに一声掛けてみるのをおすすめします。


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