遺言書を書こう

はじめに

若干でも資産のある人は、65歳を過ぎたら遺言書を書きましょう。
遺言書がないことによって、遺された大切な人が争いに巻き込まれて、悲しい思い、嫌な思いをすることもあります。あなたが亡くなった後に、大切に思っている配偶者や子ども等が残されるという場合は、遺言書を書いてあげてください。それによって死後に醜い争いが起こるのを少しでも食い止めることができます。

家族仲が良ければ遺言書はいらない?

例えば、残されるのが娘2人で、2人の仲はいいとします。この場合、遺言書がなくてもいいのでは、という声を時々聞きます。けれども、この場合も遺言書があった方がよいです。娘のその時の経済状況、配偶者・子の有無によっては、今は仲が良くても争いが起こることは十分にあります。相続は、えてして代理紛争になります。代理紛争というのは、この場合、双方の娘の夫や子ども間の争いになる、ということです。相続問題では、相続を受ける可能性のある人だけでなく、外部の人(この場合、娘の夫や子ども)の利害にも大いに関わってきます。そして大抵の人は自分の家族が一番可愛いです。そうすると普段の仲の良さが一変して争いが生じるということもままあります。相続をきっかけに兄弟姉妹と疎遠になった、というのはよく聞く話です。特に、再婚しており前妻との間に子がいるなどの複雑な家族関係がある場合には心して遺言書を書いてください。

法定相続分で分ければいいから遺言書はいらない?

法定相続人間で法定相続分で分けてくれればいいという場合でも遺言書があった方がよいです。確かに、遺言書がない場合には基本的に法定相続分で分けられます。もっとも、分ける前に、様々な考慮要素があります。    その一つが「特別受益」です。例えば、子どもAに対して多額の留学費用を出しており、子どもBは留学に行っていないといった場合、Bはそれを不公平に感じ、Aの取り分からそれを引くべきだと主張するかもしれません。すると、Aもそれに応じて、Bの特別受益について争ってくる可能性もあります。こうして争いが泥沼化する可能性があります。
また、あなたがAと同居しており、晩年はAに介護してもらっていたとします。その場合は遺言書でAに何らかの配慮をしたいものです。遺言書がなくても法律上の「寄与分」でなんとかなるだろうと思っていたら大間違いです。争いがある場合、寄与分を主張するには多大な時間と労力を要し、認められないことも多いですし、認められても数百万円程度です。仮にAに感謝してるという場合は何らかの形で遺言書でそれを示してあげてください。

財産があまりないから遺言書はいらない?

確かに、借金だけが残るという場合には、遺された人は相続放棄をすればいいので、遺言書はなくてもいいかもしれません。ただ、若干でもプラスの財産がある場合は作成しておくことをお勧めします。若干しかないからこそ、そこから最大限をもらおうと遺族が揉めることもあるのです。また、特定の財産をもらいたいということで揉める場合もあります。さらに、同居の家族がいてその家族に家を遺すつもりであったのに、不動産価格が高く、それに対して現金があまりなかったという場合も考えられます。その場合に同居していなかった相続人がきっちり法定相続分を主張して譲らなかったとき、最終的に家を現金化して分ける(同居していた相続人は家を立ち退かなければならない)ということもあります。
逆に、莫大な財産がある場合であっても争いは生じます。人はあればあるだけお金がほしいのが通常ですし、他の相続人と比較して不公平ということがあったりすると最後の1円まで争いになったりします。

まとめ

遺言書を書くことによって資産が整理でき、相続における税金対策についても考えるきっかけとなりますので、一石二鳥です。また、遺言書は状況の変化によって書き直していくことも可能です。ぜひ死後に争いを残さないように、きちんとした遺言書を早めに作成しておいていただきたいと思います(遺言書があっても書式や遺言能力で争いが起きますが、それについては後日お話しします。)。

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