甘えられてイラっとする。
私は看護師をしている。
先日、10歳以上年上の女性の患者さんと関わった際、イラッとすることがあった。
その方は病気の症状が強く出ており、どうすればいいかわからないと私に助けを求めてきた。
普段だったら、大変ですねと、自分ができる支援を淡々と行う私。
しかしその時はなぜかイラッとしたのだった。
もちろんイラッとしたことは表情や態度に出さず、いつも通りの支援をした。
だけど、なぜイラッとしたのか、ずっと疑問だった。
こんなこと普段からあることなのに。
病気で苦しんでいるんだから、看護師を頼って当たり前。
こんな風に感じる私が心が狭いのかな。
ずっとぐるぐる頭の中で考えていて、私の心がたどり着いたのは母親だった。
私は小さい頃から繊細な気質で、何かあるたびに心が傷つくことが多かった。
そのことを母親に言うと「あなたは弱いんだから、強くなりなさい」と何度も何度も言われた。
いつしか私は自分が傷ついても母親に言うことはなくなった。
どうせ、「あなたが弱い」と言われるだけだから。
私はずっと自分が弱いことがコンプレックスだった。
だけど、数年前からコーチングを受けるようになり、弱い自分を少しずつ受け入れられるようになったのだ。
現在、母親はALSという病気で、私と2人で暮らしている。
ALSとは簡単にいうと、筋肉が破壊され、体が少しずつ動かなくなり、最後には自分で呼吸もできなくなる病気だ。
母親も少しずつ動けなくなり、今は車椅子に乗っている。
時々、気分が落ち込むのか、申し訳なさそうに
「こんな病気になってごめんね、迷惑をかけてごめんね」と言う。
その度に、「大丈夫」と言葉ではいっているが、なんだかちょっと心がモヤッとするというか、イラっとするというか、なんとも言えない気持ちになっていた。
なんだろうとずっと思っていたが、患者さんとの出来事でわからなかった気持ちが心の底から浮かんできた。
私は弱い自分を受け入れられるようになった一方、弱い自分を否定した母親を恨んでいたのだ。
「私には強くなれといったくせに、甘えないでよ」と私の心が言っていた。
患者さんにイラッとしたのは、その方の役割が母親だったからなんだと思う。
自分の母親に重ねていたのだ。
母親も強くあろうとたくさん傷ついてきたのかもしれない。
だけど、このことがわかったからといって、すぐに母親を許せはしないと思う。
「じゃあこれからどうしたい?」と聞かれたら、
言える時がきたら「あなたに弱いと言われて、ずっと傷ついていた」ことを伝えたい。そしてお互いに弱いままでも認め合えたら最高だなと思う。