ギリギリスとアリ ギリギリスの苦悩
2013年8月6日に書いた小説
改変アリとキリギリス
夏真っ盛りのある昼下がりに花達が冬の訪れの話をしている。植えられた花達は冬のつらく厳しい事をキリギリスに聴かせた。
殆どのキリギリスは今がよければいいとご機嫌だったが、とあるキリギリスは来年もこうして生きていたいと思うのだった。
でも自分は冬に死ぬのだとキリギリスは悲しく思う。
そんな時にキリギリスはアリに出会うのだった。アリは冬を超えてなお生き続けるのだと言った。
「そのために夏ずっと働くのだ。いや、冬だって、春だって、秋だって、生き続けるために働くのだ。そうすれば、ずっとずっと生きていられるよ」
アリはそう言った。
キリギリスはとても感心したけれど、けれどアリたちは自分のように楽に過ごしたりできない事を悲しく思った。
「そんなにずっとずっと働いて、苦しくないの?僕達のように、遊びたいとは思わないの?そんなのは悲しいよ」
けれどアリはちっとも悲しくないと首を振った。
「働くのは楽しい。みなと協力をして、餌を見つけた時は最高なんだ。みんなで持っていき、巣にたまった餌を眺めて、これで冬は平気だね。っていい合うのはとっても和やかな気分になる。どうだい?君も、来年も生きたいというのなら、そうしてみないかい?」
とアリは言った。
キリギリスは試してみようと思い、一日アリたちに加わって働いた。けれどもアリが言うほどそれは面白いものではなく、とても厳しくつらかった。それに彼がキリギリスだったから、アリたちの道をたどるのも、彼らと群れるのも下手で、できなかった。
キリギリスはその晩嘆いて、
「僕はやはり他のキリギリスみたいに、今だけの命を生きていればよかったんだ。来年も生きたいだなんて思ったらいけなかったんだ」
と涙した。けれどキリギリスは他のキリギリスのように、今更思う事もできずに、途方に暮れた。月明かりがキリギリスを照らした。
「ああ、お月さま、お月さま。僕をアリにしてください。働き者で長生きで、みんなと楽しく生きられる。そう言う生き物にしてください」
次の日アリが彼の元にやってくると、彼は死んでいて干からびていて、美味しそうだった。アリ達は彼を運び、糧とした。
キリギリスに魂があるとすれば、きっと彼はアリに生まれ変わったかもしれない。けれどそれを証明できるものは誰もいなかった。アリに食されたキリギリスは、確かにアリの一部となったので、その願いの一部は恐らくかなえられた。
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