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いつまでもチルドレン【アルバム「miss you」感想】

 ついにミスチルのニューアルバム「miss you」が発売しました。そして、聴きましたよ。発売日(フラゲ)、同僚に理由を話して会社を早めに退社し、急いで聴きましたとも。そしたらもうびっくりした。うわあ、そうきたか、と。いや、そうきたか、ではないな…どうきたんだ?って正直見失いそうになるなか、その日は一旦眠りについた。
 それから数日間、会社の行き帰りで聴いて、徐々にようやく自分の心の中にストンと落ちた。間違いなくミスチルのアルバムだったし、まだまだミスチルはこれからも突っ走るんだ、って思えた。どういうことかって?まあ、落ち着いて。その前にいったん「miss you」自体と一曲一曲の感想を述べていこうじゃないか。

miss you~アルバムとして~

 ミスチルは時折変わったアルバムの売り出し方をしてくる。5thアルバム「深海」と6thアルバム「BOLERO」は短期間でずらしての発売で、中に入っているシングルの時期はBOLEROの方が古かったり、16thアルバム「SENSE」は発売日一週間前まで正式なCMをしないでみたり、と思えば17thアルバム「(an imitation)blood orange」ではCMやりまくりでほぼ全曲タイアップで出してみたり、18thアルバム「REFLECTION」では23曲という膨大な曲数をUSBに入れて発売してみたり…。そして、今回の21stアルバム「miss you」も変わった売り出し方をしている。収録曲にシングルもタイアップも一切なしという状態での発売である。ミスチルというのは非常に実験的で50代になった今でも試行錯誤をし続ける稀有なバンド。アルバムの売り出し方、アレンジの仕方や手法、どんどん新しい仕掛けを試している。Mr.Childrenというのは、その名のとおり、いつまでもチルドレンなのだな、と思っている。子どものような好奇心、夢、謙虚さ。こんなに有名になった今でもなお挑戦をやめない。(一周回って若い子は知らない人も多いという悲しい事実はあるが…)顕著な出来事としてはミスチルをビッグに育てあげた小林武史との決別があるだろう。
 前置きは長くなったが、アルバム「miss you」は収録曲も含めて、非常に実験的なアルバムのように感じられた。まずは収録曲について一つずつ感想を書いていくとしよう。

1.「I MISS YOU」

 いきなり暗めの曲で始まった。問題作であり名盤「深海」やその深海からの脱却と言われた「SENSE」のようなはじまり。なるほどなるほど、今回はそういうアルバムなんだな、とここで少し気を引き締める。嫌いじゃない。いや、とても好きだ。心に来る。哀愁のただようメロディ。サビの「I miss you」の繰り返しは落ち着きのあるフレーズだが、後半の情熱的なメロディがたまらない。そして、何と言っても感想のエレキギター。なんでだろう、「DISCOVERY」を思い出させる。
(85点/100点)

2.「Fifty's map ~ おとなの地図」

 これぞミスチル。発売前に曲の全貌が明かされていたのはこの曲と「ケモノミチ」のみだったわけだけど、この二曲を聞いたときはまさかこういうアルバムだとは思わなかったよね。正直、すごい刺さったかというとそんなことはないんだけども、聴いてるうちに心が浄化されていくというか、うん、そんな感じ。でもやっぱMVがずるい。自分がミスチル好きになって間もないころの「くるみ」のアンサーソングみたいになっていて。やられたなあ。
(85点/100点)

3.「青いリンゴ」

 イントロかっこいい!目立つような曲ではないけど、とても自然に心に溶け込むなあ。イントロがかっこよかったので、もっともっととびぬけてほしさはあったけど。
(80点/100点)

4.「Are you sleeping well without me」

 正直、最初は理解するのに時間がかかった。どういう曲なのだろう。何度か聴いてわかった。この曲は全体で聴く一曲なんだと。当然音楽はどれも部分的に聴くものではないのだろうけど、ここがいいんだ、このフレーズが。みたいな、そういうことを言う曲ではない。なんとなく流して聴くことで感じられる切なさとか哀愁とかを体で心で感じる。そういう一曲なんだ。多分。
(75点/100点)

5.「LOST」

 正直サビのメロディがケモノミチに似てない?ってトレーラーの時から感じてたから、あまりちゃんと聴けてなかったんだけど、評価めちゃくちゃ高いんですよ。他の方の。で、ちゃんと聴いてみたら、めっちゃ良かった。ってそんな曲。「HOME」でいう「SUNRISE」。あの曲もそんな感じのステップを踏んだんだけど、「SUNRISE」いまだにものすごい好きなので、たぶんかなり好きになりそう。この曲。メロディもいいんだけど、なんてったってアレンジが秀逸。
(90点/100点)

6.「アート=神の見えざる手」

 歌詞は驚いたが、考えてみればミスチルというか桜井さんは元々結構思い切った歌詞を書く方なので、なんてことはない。むしろ、これが桜井さん節ともいえる。そして、ラップというかほぼポエトリーリーディングなのかなって感じなんだけど、これが聴けば聴くほどくせになる。
(90点/100点)

7.「雨の日のパレード」

 でました。桜井さんのファルセットと地声のオクターブユニゾン(そういう言葉があるのかは知らない)。とても落ち着く一曲だよね。ここは素直に書くのだけれど、あまり自分にはヒットしなかった。とにかく雰囲気重視というイメージ。
(65点/100点)

8.「party is over」

 バンドで聴きたいという意見が多いよね。わかる。でも、この曲バンドでやったら、いつものミスチルが来たあああ!とはなると思うんだけど、おそらく新しさはないのよね。ミスチルがミスチルやっている。うん、よかった!という安堵を得られるとは思うし、間違いなく名曲にはなるんだけど、これをあえてアコースティック一本でやることに価値があったような気がする。ただ、いろいろ言っといてなんだけど、これをシングルカットでバンドバージョンでやるのを俺は待っている。とにかく、アルバムとしてはこのスタイルでいいとおもう。「DISCOVERY」の「I'll be」のシングルカットみたく思いっきり雰囲気変えてほしい。(I' LL BEあまり売れなかったからやらないかもなあ、でもやってほしいなあ。)あ、あと、言い忘れてたけど、イントロやばすぎ。とても良い。
(85点/100点)

9.「We have no time」

 「Q」とか「シフクノオト」、「I♡U」あたりに入ってそうな曲。こういう感覚は久しぶり。なんでこの曲人気ないの?メロディとかアレンジとかすべてに意外性があってよくない?Aメロはミスチルが時折出してくるブルージーな感じだし。今回のアルバムで一番好き。こういう曲を入れてくれたこと、本当に嬉しい。というか、声若返った?
(95点/100点)

10.「ケモノミチ」

 歌うと気持ちが良い。ミスチルの曲は歌うと気持ちがよい。これに限る。と昔は思ってたんだけど、「(an imitation)blood orange」~「重力と呼吸」くらいまではそういう感じではないと感じていた。でもこの曲は気持ちがよい。なお、この曲リードトラックなのだけど、リードトラックとしてはかつてないほどのダークさ。このアルバムの象徴的存在ではあると思う。
(90点/100点)

11.「黄昏と積み木」、12.「deja-vu」、13.「おはよう」

 3曲一気に。安心したまえ、ミスチルだ。そう伝えるような3曲。やっぱこういう曲は安心する。「おはよう」というか、これはもう「ただいま」であり「おかえり」である。つまり、「HOME」。あの時期のアルバムに入っていても違和感がない。とくに「deja-vu」が好き。
(90点/100点)

まとめ

 感覚的な感想が多くて大変申し訳ない。さて、このアルバム聴いてるうちになつかしさや感動や安心を覚えた。「間違いなくミスチルのアルバムだったし、まだまだミスチルはこれからも突っ走るんだ、って思えた」と最初に言ったが、これはなんでかというと、自分の中で前回のアルバム「SOUNDTRACK」がミスチルの集大成のように感じられていたことに原因がある。これは大変言いにくい言葉なのだけれど、ミスチルももう50代。前回のアルバムのDVDかなにかで桜井さんも言っていたが、終わらせ方というのを考え始める時期。歌詞にも年齢を意識させるものは前回も今回も多くあるのだけれど、それゆえ、どうしても新しいアルバムに完全体を求めてしまう。だけれど、今回のアルバムを何回も聴いてたどり着いたのはあくまでも道中の一つのアルバムなんだということである。ミスチルの過去の作品の中にこういうアルバムもあったよね。これからも続く旅の道中の一つとして、こういったアルバムがあった。完璧ではないけど、アルバム故のいろいろな試みが施されているね。そういうアルバムなんだと感じた。自分がミスチルにはまったきっかけのアルバムは「IT'S A WONDERFUL WORLD」だった。あの頃のミスチルは良い意味で肩の力が抜けていた。それゆえアルバムの楽曲はバラエティに富んでいた。完璧じゃなくたっていい。そう感じさせてくれた気がする。いつだったか、signあたりでミスチルの桜井さんがたしか「ちゃんと本気出そう」みたいな、いやそんな言い方ではなかった気がするんだけど、とにかくそんな感じになって、「sign」「しるし」「HANABI」とまたバンバンヒット曲を出していく時期に突入するのだけど、そこからアルバムも少し雰囲気が変わったなって自分は感じていた。そして、今このアルバムであの頃のミスチル(「IT'S A WONDERFUL WORLD」あたりの)が戻ってきたんだと、そう感じている。実は「HOME」~「SOUNDTRACK」の楽曲をかつての桜井さんの声で歌ってるところって想像つかないんだよね。でも今回のアルバムは当時の桜井さんが歌っているところって想像がついて、それがすごい嬉しいし、やっぱ、ミスチルは良い意味でいつまでもチルドレンでいてくれるし、常に変化しながらもいつまでも変わらないなつかしさや感情をくれるって思えた。
 最後に、小林武史と決別したミスチルだけど、前回のアルバムやベストの「生きろ」はイギリス人の方のプロデュースで、「永遠」なんて実は久々に小林武史とタッグを組んだ楽曲で。「REFLECTION」と「重力と呼吸」でセルフプロデュースでかなり苦労していた後でそれだったから、完全セルフは厳しいってなったのかな、って思ってたんだけど、ミスチルは無事今回セルフプロデュースでまたアルバムを出してくれた。「Mr.Childrenというのは、その名のとおり、いつまでもチルドレンなのだな、と思っている。子どものような好奇心、夢、謙虚さ。こんなに有名になった今でもなお挑戦をやめない。」そういうこと。


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