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『闘争領域の拡大』ミシェル・ウェルベック

胸糞悪いことが200pに渡って書いてある。
資本主義社会において、経済の自由化が進むにつれ必然的に所得の格差が生まれる。それと同様に自由な性的行動システムが広まるとその領域でも格差が生じる。「経済の自由化とは、すなわち闘争領域が拡大することである。」 欲望も闘争心もとうの昔になくしてしまった主人公は、その領域外に自らの身を弾き出してしまった。でもどうだろう、私にはこの話の中でそれらを最も強く渇望しているのは主人公のように思える。結局はどうしたって、この社会に生きている限りなんらかの闘争からは逃げられないのだ。

訳者あとがきから→「ウェルベック作品の語り部(=主人公)は、いつも観察している。」「ウェルベックの語り部にとって苦しみは他人事ではない。彼は世界に属しており、苦しみを免除されていない。彼もまた苦しみの当事者である。」「同情というのは、他人の苦しみを自分のものとして共感することだ。これが語り部と他人の苦しみを連結する。本の中に描かれた他人の苦しみが、いきなり、自らのものになる。」

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