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ヘルプマークのトリセツ(ボクとママと発達障がいアナザーストーリー)

この話は、私がボクママを書くのにあたり、ストーリーコーディネーターをしてくれた方の息子さんの話です。偶然にも、その子の名前は「ヒカル」と言います。我が家の息子と仲良しのヒカルくんとは別人です。

ヒカルは、あるフリースクールに通っていました。ヒカルの症状は「広汎性発達障害(ADHD含む)アスペルガー症候群」という名称でした。元気だったり落ち込んだりのムラが激しく、でも群がることもなく。ちょっとすっとぼけで、教室の隅っこにいて何か寡黙に取り組んでたかと思えば興味のあることにはとことんなヒカル。
そんなヒカルがあることに興味を持ちます。
それが「ヘルプマーク」でした。

ヒカルと同じクラスには体が不自由で通常学校に通うことが出来なくて、あるフリースクールに通う女の子がいました。
その子はあゆ、という女の子で彼女は心臓にペースメーカーを入れていました。あゆの家庭は、母親はあゆを産むときに引き換えに命を落としてしまい、父親はまだ、彼女が幼い時に交通事故で亡くしました。また彼女には兄がいたので、施設と兄が就職してからは2人で暮らしてきました。
ですが、中学に上がる学校の入学身体検査で心臓の疾患が見つかり、心臓にペースメーカーを入れなくてはいけない病気であることが発見されます。手術は無事に終えることが出来ましたが、そのことが原因で、あゆは兄に不自由ばかりかけているとの思いから、心を閉ざしがちになって行きます。(不登校)それは高校生になってからも変わらず、そのフリースクールは中高一貫だった学校なので、人数も多かったせいか、あゆはどうしても浮きがちになってしまっていました。
(でも実際にそう思っていたのはあゆだけで、なんせ空気の読めない子供達が多いフリースクールですから、通う子供達には全く気にならなかったのですがね)

実は、あゆはカバンに「ヘルプマーク」をつけていました。それは彼女の兄が役所の福祉課にいたので余計に思いが強く、発行されてからあゆにすぐにつけさせたそうです。ペースメーカーを入れているからと言っても、心臓発作が起きないという保証はどこにもなかったからです。
その「ヘルプマーク」とあゆに、ヒカルはいつか一目で心奪われるのです。
いつも透き通るような、あゆの存在・・・ヒカルはヘルプマークを見るまでは、あゆの存在すら理解できてなかった。ある日、ヘルプマークを見たヒカルに飛び込んできたものは、透明なまでのあゆとヘルプマークに描かれたそのマーク(ハートに十字がくっついた)でした。

その日を境にヒカルは必死にハートを集めます。
そう、同時に学校からはあらゆるハートが消えて行きました。
三つ葉から四つ葉からクローバー(確かにハート)、学校中からあらゆるハートマークが行方不明になりました。これは学校でも騒ぎになるくらいでした。ハートの形をした知恵の輪、それはトランプならことごとくハートマークだけ。演劇部からは桃太郎のハチマキまでなくなる(ハートが描いてある)ほどでした。

ある日、あゆが登校した時にヒカルはあゆに歩み寄り
「あげる」
と、集めまくったあらゆるハートマークを渡すのです。これにはびっくりしたあゆ。そしてあゆは怒ってしまいます
「私、ハートマークなんて好きじゃない!!」

よくよくヒカルの話を聞くと、あゆがつけているヘルプマークに描かれているマークのハートの部分が気になり、それを見たヒカルはあゆがハートが好きだと勘違いをし、いっぱいハートをあゆにあげれば、あゆの気が惹きつけられると思ったのでしょう。今思えば面白い話です。
それから教員を間に挟み、あゆには事情を説明しヒカルはあゆに謝り、その事件がきっかけでお互いは仲良くなって行きました。

ある日、あゆがヒカルにこんな話をしたそうです。
あ「私も普通の女の子みたいに、原宿行ってクレープ食べたり、ウインドーショッピングしてみたいんだ。」
ヒ「クレープって何?」
あ「クレープも知らないの?」
ヒ「それって美味しいの?」
あ「お兄ちゃんが作ってくれたことあるけど、なんかイメージと違うんだよねー。なんかこう、もっとあまーくてフワーッとしてて」
ヒ「行こう!クレープ!!」
あ「え??ヒカルが行けるわけないじゃん」
ヒ「行けるもん、クレープ!!僕もそのクレープ、あゆと食べたいんだ」
そんなこんなで、あゆと2人で原宿へ。(実は教員たちもヒカルの母親も尾行していました。まあ勘のいい2人にはすぐにバレてしまうのですが)
目一杯遊んで駅で別れることになり「また明日ね」と別れたのでした

でもそれが、あゆとの最後でした
帰り、あゆは駅で心臓発作を起こし、帰らぬ人になってしまいました。
駅のベンチで座り眠るように亡くなっていたそうです。
あゆの兄は言います。「どうして誰もあゆに手を差し伸べてくれなかったのか・・・もっと通報が早ければ、あゆは助かったかもしれない。でも全てそれは僕の都合なんですね」

ヒカルはあゆのお葬式に参列するも、死が理解できない状態で。棺で眠るあゆに「あゆ、冷たくなっちゃったね」と言葉をかけるだけでした。

そのことから、どうやってヒカルが気持ちを立て直したかはわかりません。ただ、成長したヒカルは大学に進み、教育学部を専攻、ヘルプマークの普及団体のお手伝いをしていたそうです。ヒカルなりに、あゆの死を受け入れ、今自分にできることをやっていくと決めたのでしょう。
今、ヒカルもヘルプマークを持つようになったそうです。

そう、「ヘルプマーク」は体が不自由な人だけがつけるマークではないのです。心身不自由な方も「こんな助けがあったら助かります」とお互いを思いやるマークなのです。
妊婦さんには「マタニティーマーク」車の初心者の人には「初心者マーク」があるように、いつかヘルプマークもそんな思いやれるマークになって欲しいと願っています。

誰かの思いやりが、誰かを助けることができる世の中でありますように

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