T君の見解、「優しい」は喜べる言葉じゃないかも?
先週のこと。
後輩のT君から突然、「俺ってどんな人だと思う?」と聞かれた。
T君は前職の後輩で、もう10年ぐらいの付き合いになる。
一応ふたつ年下なのだけど完全に先輩とは思われていなくて、同い年ぐらいの感覚で彼は接してきている。
だからというか、先輩後輩!のような関係でもなく、「仲良いいとこ」みたいな関係性。
どうしてそんな質問をしてきたかを聞いてみると、最近とあるコミュニティに参加し始めて、そこで『周りからどんな人だと言われるか』という問いがあったとのことだった。
私はT君がどんな人かを少しの間考えて、パッと浮かんだ言葉を一旦しまった。
「なるほどね。ちなみに自分ではどんな人だと思うの?」と聞き返した。
そうして考え始めたT君は、昔から「優しい」と言われることが多かったことを教えてくれた。 そして同時に、「優しいと言われることがコンプレックスだった」とも。
T君自身も、小中学生の頃から確かに自分は優しい子だったと思うと、自覚があったよう。
そんなT君も高校生になり、仲良い友人たちがモテていることをキッカケに、T君自身も「モテたい」という欲が出てきたようだ。
クラスの中心的人物は「面白くて快活」、彼らは一番目に優しいとは言われていないな……?と気付き始め、優しいだけではつまらないと感じ始めた。
するとT君。
「よくある会話でさ、”彼氏(旦那)の写真見せて”ってあるじゃん?そのとき外見的要素が好みじゃないと『優しそう』って言ったりするじゃん?」
私: 「ああ〜あるね、そういうやりとり」
よくよく聞いていくと、根本的に自分(の外見含む)に自信がないとT君。
T君: 「かっこいい+優しいじゃなくて、『優しい』だけではダメなんだ、モテるには。って、思ってね。優しいって無個性なんだなって、それ以外の何かが必要なんだなって感じたのよ。」
そこからT君は、「話し方」「会話力」をこれまでよりあえて少し棘(とげ)がある、直接的な言い方をするように意識的に変えていったんだとか。
「マイルドな言い方がつまらなかったから、思ったこととか、願望を言うようになったね。あと笑い方を変えた、口を開けるようになったんだよその頃から」(私が出会った時には既にこの印象になっていたT君)
そうして圧倒的に中学よりもモテ始め、友人という意味での仲良いクラスの女子も増えていったT君。
高校生男子の「モテたい欲」、甘くみてはいけない……!
と、そもそもT君の中でこんな考えがあるらしい。
ー強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない
これは米国作家レイモンド・チャンドラーの小説に登場する探偵のセリフ。
「この名言を知っていたからって言うのもある。人として『優しい』は大前提だと思っているからそれだけでは足りないって考え」と、T君。
「高校生の頃から”優しいって言われたくない俺が形成してきた俺”でやってきてて(スタートはモテたい、のために)、=自分が自分を好きになりたかったんだよ」
「優しさを無くして、ちょっとだけ毒を入れて、思ったことを言うことで周りを気にしなくなってきたね」
私たちが出会った頃、T君は二十歳ぐらい。
その頃にはそれを確立していたなんて。
ちなみに冒頭の質問、「俺ってどんな人だと思う?」に対してはこう答えた。
「私が知っている限りのT君は、優しい、という印象はなくて(もちろん優しいけれど、よく言う”彼って優しさでできてる!”とか、そういうのではない感じ)その前にパッと出てきた言葉は、良くも悪くも自分本位、だった。
これだけ言うと変な感じに受け取られる気がするけど、自分を大事にしてるなってこと。だからちゃんと気分が乗らないことは断る、とか。
ただ関係性がつくられるまでは、冷めてるとか、興味ないでしょとか、言われそう?」
これがT君的には嬉しかった模様。
まさに私が思うT君のイメージこそ、彼がそう変わりたくて形成したものだった。
そしてT君のもう一つのイメージ。
肩書きじゃなく「その人」を見ていて、老若男女、障害、持病、既婚未婚関係なし(平等、とか平和主義と言うと何か違う)で初対面でもそれなりに会話が出来てしまうような人。
一般的な初対面での会話の代表例が「ご結婚されてるんですか?」「お仕事は何をされてるんですか?」だとすると、T君の場合は「自分、最近これに興味あるんですけどどう思います?(笑)」みたいなイメージ。
半分はリラックスして会話を楽しんでもらうため意識的に、もう半分はT君自身が単純に話したい話題だから、というだけ(笑)
T君、これってものすごい特技なのではないか?と書いていて改めて思った。
コミュニケーション力に加えて自分自身も楽しんでしまう良い意味での自分本位さは、私も学びたいところ。
少々脱線したようだけど、「優しい」って、なるほど、便利な言葉なのだね、とT君から学んだ先週のことでした。
(こと私に関しては「優しい」と言われると喜びます)
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