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藤原恭大と唐川侑己が(中略)帰れま10 #5:パーフェクトよりもパーフェクトなゲーム(負けたけど)(F-M)

 賭けてもいいが、完全試合を期待されてマウンドに上がる投手など約1名を除いて存在しない。いや私は毎回大野に「ノーノーしてくれ!」って言ってるけどあれは挨拶みたいなものなので。


 しかし2022年4月17日のZOZOマリンは、その約1名がマウンドに上がっていたため相手打者のバットがボールに当たってフェアゾーンに上がるだけでざわついていた。


 怪物の魔力というやつなのか、この日は2019年9月24日の西武戦(福浦さんの引退試合!)以来の満員御礼通知が出された。私は1か月くらい前にたまたま友人に誘われてチケットを取ってもらったのだが、その時はまさか4月17日がこんな日になるとは想像もしていなかった。ロッテファンのくせにロッテの試合に誘われて行くとはどういうことだよという感じであるが、それも怪物の仕業である。ついでに売店のクレジット決済機器が壊れて現金しか使えなくなったのも怪物のせいである。


 マリンを魔境にしてしまった佐々木朗希くんだが、当の本人は何も変わりなくいつも通りパーフェクトピッチングを続けていた。「いつも通り=パーフェクト」という事実に震えろ。


 そんな16代目ミスター・パーフェクトに対するのはBIGBOSS率いる日本ハム。れっきとした登録名なので当然だが、谷保さんが「BIGBOSS」とアナウンスした時はちょっと笑ってしまった。2戦連続完全試合をやってしまう可能性が0ではない男と本当に名前をBIGBOSSにしてしまう監督と9回裏満塁フルカウントでもないのに3ボールになっただけでざわつくスタンド。磁場が狂ってしまう。

上沢さん。

 そんな中で上沢さんのピッチングも完璧だった。こちらはヒットを打たれているのでそういう意味でのパーフェクトではないのだが、朗希くんのパワーを吸収してこっちもリズムに乗ってやってやろうというような意気込みを感じた。ちなみにうちの母親は上沢さんが好きで、ルンバに「うわさわさん」と命名している。


 あと私は智辯和歌山のキャプテンをやっていた頃から細川凌平くんが好きなのだが、観ている時は「あ~細川くん見れてうれしいな~」ぐらいにしか思っておらず、後でニュースを見て彼がキャンプの練習試合で朗希くんの161km/hをヒットにしていたことを思い出した。バカ……気づけ……こういう時に「ほっほー、打った実績のある選手を入れてきたか。BIGBOSSもなかなかしたたかだなあ」とかパッと言える野球ファンになりたい……。


 そんなことより朗希くんは今回も8回終了時点でまだパーフェクトだった。どうなってんだ。そしてそこで彼はマウンドを下りた。この時は「球数が来たから変えたんだろうなあ」という他の先発が降板した時と同じような感想しか抱かなかったのだが、後でいろいろ見たら賛否がどうたらとか書かれていてちょっとびっくりした。賛成も反対も何も、ロッテの育成が間違っていなかったことは先週十分すぎるほど証明され尽くしたのだからもう「賛否」なんて段階はとっくに通り越したのだとばかり思っていたからだ。

 
 というより私はルーキーイヤーの頃、いやそのもっと前のあの高3夏の頃から、実際に選手を預かっている立場の人たちが下した決断に(外野手がいるところではない方の)外野の「賛否」などというものは1ミクロンも影響しないし何も動かさないと思っていた。そこに「投げさせない」「8回で下ろす」という方針があり、本人も周りもそれを遂行した。それ以上でも以下でもない。


 でも、その中心にいる朗希くんがどこ吹く風で淡々としているのは爽快な気がした。やれ投げさせろ、やれ投げさせなくていい、やれ令和の野球の新しいあるべき姿だ云々。私含め外野は実にいろいろなことを言う。しかし張本人は台風の目の中にいるように落ち着いていて何にも惑わされない。それどころか試合後「幕張メッセと間違えてるんじゃないかと思いました」とか粋なジョークを飛ばす。そうあってくれることが何よりうれしい。これからも振り回していこうな、世間。


 彼自身も含めて、チームは「2試合連続の完全試合」というようなちっぽけな(あえてそう言うが)目標などにこだわってはいない。バトンを引き継いでランナーを出しながらも(それでも一応「ノーヒットノーラン」継続中ではあった)最後は打ち取って咆哮したまっすーにしても、ホームランを打たれた西野さんにしても、チャンスを作りながらも点を取れなかった打線にしても、絶対に今日のことはこれからやってくるであろうもっと大きな勝利の伏線になったはずだと思う。去年、好投しながらももう少しのところで勝てなかった試合たちが、高校時代あと一歩のところで届かなかった甲子園でのプロ初勝利というフィクションのような出来事につながったように。


 それにしても、日本ハムが打った唯一のヒットがホームランだったということはつまり、今週も相手打線の打球は外野のフェアグラウンドに接地しなかったということである。恐ろしい。一刻も早く「野球は普通ヒットが出るものである」という前提に頭を戻さないとおかしくなりそう。


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