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月報:2023年4月

 2023年度スタート。ヘッダーは蒲田駅にたたずんでいたミッフィーちゃん。

✅今月したこと

・横溝文化祭プレイベント(ヨコブンプレ)に行った

 こちらのトークショーに行きました。石坂金田一シリーズを愛する者として何が何でも行かねばならない企画。映像には何十分の一秒というレベルでそれを作り上げる人の手が行き届いているんだなあと感動しました。とにかく映画が撮れれば何でもいい市川監督、ほほえましい。

 その後コメダでツイッターの方々(この言い方はどうかと思うが)とおしゃべりさせていただいて、それも本当に楽しかったです。同じものが好きな人同士だとネタもいろいろ通じる。病院坂を観ていない人の前でいきなり「また紅茶か」とか言っても「は?」だろうし。

・というか全体的に横溝漬け

 ヨコブンプレ、回路Rの朗読劇「扉の影の女」、吉岡金田一版八つ墓村(再放送)とアナザーストーリーズ犬神家の一族(再放送)、そして吉岡版犬神家の一族前後編とものすごい勢いで横溝正史が押し寄せてきてアワアワした。その合間に石坂金田一シリーズを褒め称えるnoteも書いてたし。石坂金田一シリーズに関しては書きたいことが山のようにあるので、このnoteを叩き台に同人誌を作ってやろうと目論んでいます。石坂さんのお誕生日までにできたらいいなと思っていますが無理でしょう。はい。

🛍今月手に入れた重要なもの

・千葉ロッテマリーンズ2023ビジターユニフォーム(1 藤原恭大)

 ビジユニ買わないとなーとは思っていたんですけど、思っているうちに2回もデザインが変わってしまった。マリンばっかり行っているのでビジユニが後回しになりがち。でも漆黒のビジユニカッコいい。

📖今月読んだ本

・アンナ・カレーニナ(上)(中)(下)/レフ・トルストイ

 「見知らぬ女」という絵が大好きで、これがアンナ・カレーニナをモデルにしているのではないかという説があるらしいので読みました。めちゃくちゃ面白かった。とんでもなく長いけどダレることなく最後まで読めた。「戦争と平和」は観念的な世界の話が多かった気がするけど、こっちはもうちょっと読みやすい。

 決して悪女なんかではなく、自分の欲望に忠実なだけのわがままな女でもなく、息子を愛した罪悪感に苦しむ心を持ちながらも己の気持ちに背くことはできないアンナがとても好きになってしまった。対するヴロンスキーはアンナがこれほど悩み苦しむほどの男とも思えなかったんですが(しかしヴロンスキーの愛が冷めたような描写もアンナの嫉妬や疑心暗鬼から来るものかもしれない)圧倒的に立派な人だから好きになるわけじゃないですもんね。好きになる相手もその人の人格も好きになった時の自分の立場も選べないからこそ恋はするものではなく落ちるものなんでしょうね。

 個人的に好きだったのはオブロンスキー。始終すっとぼけていて憎めないキャラクター。浮気を責められていて申し訳ないとは思ってるけど心から悪いと思えてはないところがいい。妻との温度差。

・風の歌を聴け/村上春樹

 村上春樹って好きな人はのめり込んでハルキストになるけどダメな人はとことんダメと好き嫌いが分かれる作家だっていうイメージがあって、自分はいったいどっちなのがずっと気になっていたので挑戦してみました。結果、よくわかりませんでした。「現代の青年のべたつきのない人間関係とひと夏の情景がさらりと美しく描かれているなあ」とも思ったし「なんか気取ってるなあ」とも思った。好きな人の気持ちも嫌いな人の気持ちもわかる。

 これを選んだのはデビュー作であるということと、冒頭の「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」が好き(好きだからどこかで引用したいけど読んでないのに引用するのは失礼なので)だということからだったんですが、あんまり村上春樹向いてる/向いてない判定には向いてなかったのかもしれない。本人もこれと次の「1973年のピンボール」はまだまだだったみたいなこと言ってるし。それとも私が二極で考えすぎてただけでこの世には「村上春樹は嫌いじゃないけど別にのめり込むほど好きでもない派」が存在するのかもしれない。わからない。

・扉の影の女/横溝正史

 村上春樹はわからないけど横溝正史が私に向いてることはそれはもうよくわかっている。これは劇団「回路R」が朗読劇でやる作品だったのでそのために読みました。金田一さんがかっこよかったりかっこよくなかったり朝食が豪華だったりする話(雑)。タバコを買う金もなくてアパートの管理人さんからお金借りたりするところもあれば財界の大物に「金田一先生、あなたはファイターでいらっしゃる」と認められたりするところもある。

 「鏡が浦の殺人」は夏のバカンスのお話。横溝作品には時々芙紗子みたいなお友達にはなりたくないけど遠巻きに見ていたいおもしろい(婉曲表現)女キャラが現れますがあれはなんなんでしょうね。

・金田一です。/石坂浩二

 真打登場。石坂金田一シリーズを愛する私にとっては聖典と呼ぶにふさわしい、金田一耕助を演じるにあたって考えたことについてのエッセイ。かねてより実写では演者が考えたことがそのキャラクターにとっての正解だと思っています。石坂さんが「金田一ってこうなんだろうなぁ」と考えれば金田一さんは「そういう金田一」として画面に映るわけです。それが生身の人間の姿で役を演じることなんだろうと思います。だからこれは第一級の資料であり聖典です。第一級すぎて感想がこれに引っ張られるかもしれないので、石坂金田一シリーズを褒め称える会noteを書き終えるまでは封印しておこうと思ってたのに普通に終わる前に読んじゃった。というか封印しておこうって思ってたことを忘れてた。まあそれはいいです。

 演技関係ないところで言うと、ご高齢の市川監督になんとかして野菜を食べていただこうと日々苦心して料理を作ってたエピソードが好きです。シェフか??来る日も来る日も監督のご飯を作ってあげる主演俳優がこの人の他にいるのか知りませんが、料理が上手いというのは素晴らしいことですね。アイスムで連載してくれないかな。

・八つ墓村/横溝正史(再読)

 吉岡金田一版八つ墓村の再放送を観たら読み返したくなったので。因習、ホラー、ミステリー、冒険、ロマンスとありとあらゆる要素が凝縮されていて息をつかせぬストーリーの面白さでは横溝ナンバーワンかもしれない。しかし村としては嫌すぎる。横溝作品ここには住みたくないランキング殿堂入り。犯人じゃなくても何……何なのお前?みたいな村人が多すぎる。

 それとこの作品がユニークなのは、事件の渦中にいる辰弥の視点で話が進んでいくことです。金田一さんはここでは完全に第三者で、何か辰弥のあずかり知らぬところで調査している得体の知れない男なわけです。読者にとっては安心と信頼の金田一さんでも、辰弥にとっては敵なのか味方なのか疑われているのかいないのかもわからない。周りの人すべてが信頼できないように思えて疑心暗鬼に陥り、恐怖のどん底に叩き込まれていく。もしいつものように金田一さんがメインだったらこの話はずいぶん違ったものになっていたでしょう。あと、第三者視点で見る金田一さん得体が知れなくてちょっとカッコイイ。

・走ることについて語るときに僕の考えること/村上春樹

 また村上春樹。そういえば村上春樹がダメな人でも「短編とエッセイは好き」って言う人多いよなと思ったので。短編は中学生ぐらいの時に読んだのでエッセイにしました。これを選んだのは東京ヤクルトスワローズ観戦エッセイでおなじみの虫明さんのランニング日記を思い出したからです。

 こちらでたびたび引用されている話題が出てきて楽しかった。走ってる人なのは知ってたけどこんなにガチで走ってる人だったとは知らなかった。

・華やかな野獣/横溝正史

 ヨコブンプレの古本交換会でもらった本。ホテルのボーイさんに扮する金田一さんがいいというおすすめをいただいたのでこれにしました。金田一耕助(ボーイのすがた)面白かったしエログロが乱れ飛ぶ煌びやかさがまさに華やかな野獣。「暗闇の中の猫」は金田一さんと盟友等々力警部が出会った時の話ですが、そういう重要なエピソードがサラッと短編集の中に入ってるのがいい。「睡れる花嫁」は睡れるってそういうことかよというエグさがあった。好き。

・春琴抄/谷崎潤一郎

 そういう趣味はないんですが、才能豊かで美人で名家のお嬢様で高慢かつサディスティックな師匠に罵られるってちょっといいかもしれないなと思ってしまいました。視力を失うことによって佐助は崇拝していた観念上の春琴を初めて心の目で見られるようになったのかもしれない。あと、なぜか春琴のビジュアルが椎名林檎で再生されました。

🎵今月の一曲

♪アイドル/YOASOBI


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