見出し画像

スーパーマーケットの痕跡を探す

[ShortNote:2020.11.13]

 スーパーマーケットの痕跡を探すのが好きです。まずは痕跡ターゲットになる店3パターン。

①ロゴや屋号が変わったスーパー(旧ロゴ)→ダイエー、イオン

 建物が存続していることが多いので比較的探しやすい。あくまでも比較的。

②屋号そのものが消滅したスーパー→マイカル(サティ)

 こちらはガチの痕跡。大阪近鉄バファローズやサークルKサンクスに近い「消滅したもの」にしか出せない味わいがあります。

③ブランドそのものというより特定の店舗→ダイエー那覇店

 沖縄生まれ沖縄育ちですので、やっぱり一番思い入れがあるのはダイナハことダイエー那覇店です。ダイエー自体が今沖縄には存在しないので、「ダイエーがあった時代の沖縄」のことも懐かしんでいます。このようにある店舗に的を絞って痕跡を探すとまたディープで面白いです。

 以上①~③の痕跡を探す時に使う主な手法。

・ヒドゥン・ロゴマーク→①、②

 ロゴが新しくなる時、たいてい店にある旧ロゴが描かれた部分を塗りつぶすか白いシールなどを貼るかしてその上から新ロゴを被せますが、よくよく見ると新ロゴの下にある旧ロゴの痕跡が見えることがあります。だいぶ前ツイッターでバズった光の当たり方によってイオンの下のダイエーロゴが浮かび上がるあれです。もはや地層に近いです。

 まずはダイエー。ダイエーといえば二代目・上弦の月のようなDロゴです。中内ダイエーの象徴ともいえるこのエネルギッシュでグイグイくる存在感を持つロゴが、現行の三代目ハートモチーフロゴの下に隠れていたりします。

 こういうので一番狙い目なのが塔屋看板です。たいていかなり大きいので目立ちます。肉眼でも見えることはあるのですが、加工するとよりくっきり浮かび上がります。

(スマホアプリLINE cameraの「ギャラリー」→写真選択→「明るさ/コントラスト」の「コントラスト」を上限の100にする)

 こうするとはっきり見える代わりに空とかが大変禍々しい色合いになってしまうためこれを「魔界のダイエー」と呼んでいます。正常な色彩を生贄にして旧ロゴの亡霊を召喚。

 先ほど「地層」と言いましたが、時に旧→新だけでなく三世代にわたるロゴのミルフィーユ状態になっているものがあります。例えばこちら、ダイエー鴨居店。

 この店舗はまず1978年4月5日に忠実屋鴨居店としてオープンしました。1994年3月1日に忠実屋がダイエーに吸収合併され、ここもダイエー鴨居店になるのですが、そんな鴨居店の塔屋はこうなっています。

 もうこの時点でうっすら「忠実屋」の文字が見えますが、さらに魔界のダイエー処理をかけると……。

 まずダイエー三代目ロゴがあり、忠実屋の二代目ロゴの下部もくっきり出てきました。そしてその忠実屋とハートに挟まれるようにしてDロゴの曲線が見えます。三世代ミルフィーユ塔屋です。

 なお、この鴨居店は今年の5月15日にイオンフードスタイルになりました。なのでこの三代目ロゴすらもうありません。このことはこれを書いている今調べて知ったのでまだ現塔屋は生で見ていませんが、イオンフードスタイルは黒地なのでたぶんもうこんなにはっきりとは見えないと思います。こういうことがあるから痕跡が残ってそうなところには早く行かないとダメなんです。いつまでもあると思うな親と旧ロゴ。

 続いてイオン。イオンの前の屋号といえばジャスコ。このジャスコ時代から数えると現行のAEONロゴは四代目になります。

(ストリートビュー→ https://goo.gl/maps/YEEwLUNsG5hSb34v5 )
 実際行ってないところで恐縮ですが、イオン蒲郡店(愛知県)の塔屋はすごいです。先代のJUSCOロゴだけでなくその前の赤と緑で「J」をかたどった二代目ロゴまで魔界のダイエーをやる必要がないくらいはっきり見えます。もはやちゃんと塗装する気があったのか疑わしいレベル。たださっきの鴨居店の件でこの絶好の旧ロゴポイントも現存しているかどうか不安になってきました。なにしろストリートビューくらいでしか見てないので。塗り直されたりしてないかどうか蒲郡店ユーザーに聞きたいくらいです。いや、看板がキレイになるのはいいことなので塗り直されてもいいんですが。

(こういうざっくりヒドゥンも好き)


・全然ヒドゥンじゃないロゴマーク→①

 ごく稀に痕跡というレベルではなく旧ロゴがそのままそのまま残っていることもあります。これは激レア。個人的な代表例がドラマのロケ地としても使われた有名店・ダイエー向ヶ丘店(神奈川県)です。いくつかある入り口のうち裏手の小さな入り口の裏にDロゴ完全体が残っていました。すごすぎて震えました。

(反転済み)

 こちらも老朽化のため今年の9月をもって一時閉店したので、次オープンする時にはもうこのロゴは拝めなくなっていると思います。やっぱりいつまでもあると思うな親と旧ロゴと向ヶ丘店。

 また、生では見ていないのであれですがダイエー平塚店(神奈川県)は2005年11月30 日付で公式では使用を終了したDロゴを2012年1月30日の閉店まで掲げていました。いい店。

・在りし日の映像・写真を見る→①、②、③


(上:マイカル時代・東神奈川サティ(過去に存在したマイカルの店舗-Wikipedia より)
下:現在のイオンスタイル東神奈川)

 これが一番有効なのは②。もう存在しないんだから存在していた頃の風景を見るしかない。昔の屋号だった頃の写真をWikipediaの「過去に存在したマイカルの店舖」などの項目で探すとそこそこ出てきます。マイカル系であれば建物はそのままイオンに移行しているところが多いですが、建物自体も現存しない場合はいよいよ街の歴史をたどる的な試みになってきます。

 ①のパターンでは沖縄県公式チャンネルがYouTubeにアップしている「よみがえる軌道交通-沖縄都市モノレール-」という動画にはジャスコ(現・イオン那覇店)が6回も映り、ダイエー那覇店のサイドのDロゴもちらっと映り、その上ユニクロの昔の男女が手をつないでいる「XX」のような形のロゴまで映ります。もう旧ロゴパラダイスです。

・什器・備品→①、②

 長く使い続けるこれらの設備には更新されず昔の屋号のままになっているものが多々あります。代表的なのがカート。こないだ上記のイオンスタイル東神奈川でマイカルのロゴとサティのロゴがついたカートを一気に発見してしまい興奮しました。イオンのロゴになっているものも下のマイカルグリーンが思いっきり見えていたりしたのであんまり隠す気もないようです。

 ①だとダイエー向ヶ丘店では商品管理タグが昔のままであり、Dロゴがはっきり残っていました。こういう小さめなものも狙い目です。

 ジャスコではフロアガイドにうっすら「JUSCO」の「SC」の部分のようなデザインがあったりします。これは痕跡に数えていいのか微妙ですが、一応カウントすることにします。

・大店法プレート→①、②、③


 2000年まで日本には大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律、略して大店法という法律がありました。この法律では大型店舗のうち店舗面積3,000㎡以上の第一種大規模小売店、500㎡以上の第二種大規模小売店が対象となり、この条件に当てはまる店舗には標示板を掲げる義務があります。これが大店法プレートです。つまりこのプレートがある店は2000年より前に建てられたもの(たぶん)なのですが、実は1973年の制定から1979年の改正までは第一種・第二種の区別はなくすべて「大規模小売店舖」とだけ表示することになっていました。

 ということはこの表示のある店は1979年より前に建てられたものということになります。建物としては大ベテランです。見たら尊敬しましょう。ちなみに上のプレートはダイエー鴨居店のものです。

・Googleマップ→②、③

 スーパーじゃなくてコンビニの話なんですけど、近所にあるファミリーマートがGoogleマップ上ではまだ「サンクス」表記になっていたのを見てちょっと感動しました。これがまたちょっと不思議で、なぜか検索したら「ファミリーマート」で、経路検索で「地図上で選択」から指定すると「サンクス」になってました。地図の上でだけ生きてるってロマンだと思います。あとこれは「什器・備品」カテゴリなんですがその元サンクスのファミマでもらった紙袋にサンクスのロゴがありました。こういうのも今だけなのかと思うとやはり痕跡は儚いですね。

・周辺の商工案内地図→特に③

 店舗内の看板ならすぐ変更できますが、周辺になる町の地図は店舗の管轄ではないので変えられずいつまでも旧店名のままというケースがそこそこあります。

 ダイナハ近くの地図、ダイナハが閉店し「D-naha」となって15年近く経つ現在でも表記は「ダイエー」のままです。この地図の中ではまだダイナハが生き続けるようで胸が熱くなります。一体私はダイナハのなんなんでしょうか。

 意外なところだと電柱についている電柱番号。ダイナハ真横の電柱には「ダイエー」の名が残っています。先ほどの地図はこの電柱のすぐそばにあり、この記事(第1回 沖縄の電柱を見上げる会-DEEokinawa)でダイエー電柱の存在を知って見に行ったら地図も発見したという経緯があります。

・番外編:ダイエー矢印→ダイエー全般


 ダイエーをダイエーたらしめている影の主役、人呼んでダイエー矢印。店舗・元店舗の駐車場などで見られる独特の形をした矢印です。他の屋号に変わり、Dロゴも何もかもなくなってもひっそりとここは昔ダイエーだったんだぞと主張し続ける矢印には胸を打つものがあり、ひいてはかつて流通業界の王者として君臨していた「大きく栄える」ダイエーの矜持を今に伝えているかのようでもありますがこれは考えすぎかもしれない。

 元ダイエー浦添店である浦添ショッピングセンターは現在ダイエーともイオンとも関係のない店になっていますが、そんな中エスカレーターで矢印を見つけてエスカレーターから転げ落ちるくらいテンションが上がりました。こういう難易度の高い店で見つけられると喜びもひとしおです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?