「でも別に、まっすぐ投げるために野球やってるわけじゃないので」
唐川侑己さん、32歳の誕生日おめでとうございます。ユーミンのデビューシングル発売日でもあるらしい。
タイトルに引用したのは日刊スポーツのインタビューの中で出てきた言葉である。唐川さんといえば32歳のくせに場合によっては高校生に見えるぐらい瑞々しさを保つ謎の存在だが、もちろんアスリートは老けないというのもあるのだろうが、「柔軟に変化し続けている」ということがフォーエバーヤングの一番の要因なのではないかと思う。何かに固執しない姿勢。流れる水のような柔軟さ。
高校時代から「BIG3」に数えられて注目されて、競合してドラ1で地元の球団に入って、初登板初先発でいきなり初勝利を手にして、完投もして、未来のエースとして将来を嘱望されて、大きな期待を背負って、でもたくさんケガして、思うようにいかなくてもどかしい時もあって、それでもプロ14年目になった今でもまだ新しい武器を見つけて磨いて任された場所で信頼を得ている。
中継ぎの地位も昔に比べれば向上しているとはいえ、まだどうしても先発投手よりスポットライトが当たることは少ない。「エース」という称号は普通、先発に与えられる。高校時代からの才能とスターぶりを考えれば、唐川がロッテのエースになってると思ってたのになあ、と思うファンもいるだろう(というか、今でもたまに見かける)。しかし唐川さん自身は先発だとかエースだとか、そんなものにさほど執着していないように見える。中継ぎに行ってみないかと打診された時、1軍で投げられるならどこでもいいとためらわず初めての場所に飛び込んだ。唐川さんが欲していたのはただ1つ、1軍のマウンドに立ってチームの力になることだったのではないだろうか。それができるならポジションは関係ない。そして置かれた場所で見事に咲き誇る。そういうところが実に唐川さんらしくてカッコいい。
中継ぎに転向してからの唐川さんを無敵にした勝負球のカットボールは、特に昨シーズンは投球内容のほぼすべてを占めていた。ストレートは片手で数えられるほどしか投げていないらしい。そのことについてストレートを投げたい気持ちはないのかと尋ねられた時の答えがタイトルの言葉である。プロとして野球をやっているのはまっすぐを投げるためでも先発するためでもエースになるためでもない。さらに言えば、カットボールを投げるためでもない。あの山田哲人さんをして「あれは打てない」と言わしめた魔球・カットボールにすら彼は執着していない。何かもっと他に抑えられる武器が見つかれば、カットボールすら涼しい顔をしてするっと脱ぎ捨ててしまうかもしれない。そうやって変わっていく姿には「進化」という言葉がぴったりフィットする。そこが唐川さんのすごさであり、恐ろしいところだと思っている。
と言いつつ私は今年の4月から推し始めたポッと出中のポッと出なのでこんなわかったような文章を書いていることが若干恥ずかしいのだが、7月5日に免じて許していただきたい。
とりあえず今は唐川さんが1軍にいないしどこにもいないし(どこかにはいると思う)正直寂しくてたまらないが、一生に一度しかない32歳の誕生日に寂しいだのなんだの言ってメソメソしていたら失礼なので、ひたすらハッピーなことを考えるようにして過ごした。何時までもカッコいい唐川侑己さん、これからも末永くうちの自慢のリリーフ陣のヘッドでいてください。よろしくお願いいたします。よい1年になりますように。
P.S.唐川さんと成田のツートップを張ってるうなりくんが誕生日おめでとうツイートしてくれてた。かわいい。マリンでお待ちしております。
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