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唐川侑己さんが出てくるまで(幕張から)帰れま10 番外編:恋人も濡れるハマスタ(M-DB)

 かつて巨人に在籍し、球団史上最速解雇の記録を打ち立てたある意味伝説のクローザー、ダン・ミセリは、2試合でトータル4失点を喫した横浜スタジアム(以下ハマスタ)についてこう吐き捨てた。「こんなリトルリーグみたいに狭い球場でやっているからだ」。

 こういうことをのたまうのはただの逆ギレであり論外なのだが、この言葉自体はハマスタで観戦している間ずっと胸の中に去来する忘れられない一言である。確かにハマスタは狭い。上がったら全部入るんじゃないかと思うくらいポンポンポンポンスタンドインする。生で見たホームランのうち半分くらいはハマスタで見たと思う(体感)。

 そして6月4日、セ・パ交流戦横浜-ロッテ。球場について着席した瞬間桑原さんに逆転スリーランを打たれるのを見てしまい、さっそく「こんなリトルリーグみたいに(略)」が頭をよぎった。


 この日はなんというかてんやわんやだった。まず金曜日であり、つまり我が愛しのエース大野雄大の登板日だった。速報で遠く離れたバンテリンドームの状況を見ていたら1回表にいきなりノーアウト満塁になっていて「おいおいおい」と思い、さっそく2点取られていてまた「おいおいおい」と思ったが、あの平然とグラスラを打ってきかねないやる気MAXオリックス打線を相手にノーアウト満塁からたったの2点で抑えた大野はやっぱりセ界に冠たるエースである。何しろ私は「2点じゃ済まないだろうな」と思っていたのだ。済んだ。大野をナメていた。あと大野相手に7球も粘った山本由伸さんもすごかった。野手なのでは。

 ついでに雨が降っていた。午前中などは「今日中止になるんじゃないか」というぐらい降っていたが、夕方ぐらいになると止んだ。と思ったらまた小雨が降ってきた。試合は余裕でできるけど野外球場で観戦するのは若干キツいぐらいの小雨が時おり思い出したように降ってくるため、そのたびにレインコートをかぶらなければならず地味にうっとうしかった。レインコートはなんであんなにわずらわしいのだろう。蒸れるし風でフードがめくれるし紐でギュッとやろうとしたらボタンが外れるし、傘と比べて勝っているところが人の邪魔にならないところと両手が空くところと小さい子が着ていたらかわいいぐらいしか見当たらない。


 そんなことはいいとして、試合である。球場が狭いということは守備の時には厄介だが攻撃の時には万々歳である。その通りに次の回でさっそくマーティンが同点Yes! マーティンし、続いてレアード大将が勝ち越しスシを握ってくれた。このアベック弾は今後何度でも見たい。しかしその裏にすぐさま同点に追いつかれてしまい、もう何が何だかわからなくなってしまった。乱打戦は楽しいけど当事者だと怖い。


 ただ同点であれば唐川さんの召喚条件に合致する。ビハインドでさえなければいいのである。が、同点の8回裏に唐川さんが現れてしまった場合私は緊張と震えでとても大丈夫ではない状態になることが予想されるため、欲を言えばもう少し点がほしい。唐川さんはどうせ同点だろうが淡々と投げるに決まっているので、唐川さんのためではなく私のためにほしい。


 しかし、「もう少し」と言ったにもかかわらず話を聞いていなかったのか(当たり前だ)、打線がつながり7回裏終了時点で10-5になった。5点リードだったら誰がどう考えても唐川さんは出さない。私がコーチとか起用判断する権限がある立場だったとしても泣く泣く出さない。

 こんなに取らなくても……とちらっと考えた時、フルカウントからセンターへ弾き返す「角中勝也」という技名をつけたくなるような「らしい」2点タイムリーを放った男の冷静なコメントが目に入った。

 ハッとした。ここはハマスタだし相手はソトもオースティンも佐野恵太もいる横浜打線である。今後6点取られないという保証はない。点はなるべく多いに越したことはないしこの際唐川さんが来るとか来ないとかはどうでもいい。どっちみちここは幕張ではないので仮に出ても帰れま10クリアにはならない。とにかく逃げ切りだ。


 それにしても中継ぎ陣が本当に良かった。大嶺さん(4年ぶり勝利おめでとうございます)がきっちりイニングまたぎで0点に抑え、横山くんはずっと無失点で来ているし小野郁さんはかわいい。ロッテのブルペンいいのが揃ってるぜという感じ。


 9回表にとしくんの今日2発目のソロホームランが飛び出し、もう今日は勝ちパを出さずに終われるかというところだったのだが裏に2点も入れられて4点差まで追い上げられてしまった。角さんの言っていた通りだ。やはりベテランの言うことは聞いた方がいい。ハマスタは怖いのだ。こうなるとこっちはあと1アウトを取るためにクローザーを出さざるを得ない。ベンチからすれば「今日は温存しておきたかったのに引きずり出されてしまった」という感じなのだろうが、私としてはまっすーが見られてうれしかった。リリーフカーに乗って登場する守護神、カッコいい。

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(ルーティーンも見れた。これ信じられないぐらい大好き)

 さあこれは何が何でも抑えるしかないぞ! と意気込んだのも束の間センターに運ばれた初球を和田くんが快足を飛ばしてキャッチし一瞬で試合は終わった。1球セーブである。1球勝利と1球セーブを両方達成したのはなんとまっすーがパでは史上初らしい。ここのところ球場で立て続けにレアなものを目撃しているので、ツイているのかもしれない。リリーフカーとんぼ返りとか。

 唐川さんは投げはしなかったが目の前をてくてく歩いていくのは拝めた。客席で「めっちゃ顔ちっちゃくない?」というような声が聞こえ、その時ちょうどマウンドに上がって投球練習していた相手ピッチャーの話をしているのかと思い、(確かに大きくはないけどそんな感嘆するほど小さくも……普通じゃ……いや見ようによっては小さいのかも……?)と首をひねっていたら唐川さんのことだった。それで唐川さんがいるのに気づいた。危ない。確かに顔はびっくりするぐらい小さい。

 今回は「点を取りすぎて逆に唐川さんが温存される」という新たなノー唐川パターンを見せてもらったが、次も唐川さんを求めて行くし雨は降らないでほしいし来週こそ大野に白星がついてほしい。よろしくお願いします。

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