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木曜日の柳葉敏郎

[ShortNote:2020.3.12]

 一週間で最も不穏なのが木曜日です。特にフジテレビの22時枠(「木曜劇場」)への不穏の集中ぶりが異常です。フジテレビはギバちゃんがよく出るところなのでそれはいいとして、木曜の22時に前世で何かあったんじゃないかと思ってしまうほど不穏です。

 作品数が多かったのでかなり長文になってしまったのと、いつにも増してネタバレしてると思います。ご了承ください。


●21:00台

・ホットドッグ(1993年/TBS)

 不穏不穏言っておいて申し訳ありませんがまずは全然不穏じゃないやつです。一言でいうとガラの悪い「マルモのおきて」です。父親が捕まって行くあてのない子どもたちの面倒をなぜか見ることになってしまったテキ屋の信ちゃんのお話なんですが、とにかく口が悪くて気が短くて喧嘩っ早くて子どもたちのことも初めは邪魔者扱いだった信ちゃんがだんだん子どもたちと心を通じ合わせて本当の家族みたいになっていく過程が大変ハートウォーミングです。舞台が深川なのもポイントが高い。

 まず信ちゃんのビジュアルが強い。顔も身体も美しい。やたら脱ぐし2話で開幕シャワーシーンが出てきた時はどうしようかと思いました。初回先頭打者初球本塁打みたいな感じです。寝顔+寝起きシーンが多いのもありがたい。サービス過多です。気は短いけれども心のなかにちゃんと優しさと愛情を秘めていてみんなのパパでありお兄ちゃんに成長していくという精神面も美しい。

 他のキャラクターも素敵です。特に子どもたちは一番信ちゃんとバチバチやりあってたけど徐々に心を開いていく久美子ちゃんだったり信ちゃんと一番よく喋ってる武史くんだったり信ちゃんからもらったオルゴールを大事にする由佳ちゃんだったり、みんなかわいいけど個人的MVPは末っ子の大仏こと卓くんを演じたえなりくん(当時6歳)です。あんなに天使だとは思いませんでした。かわいすぎる。

 余談ですが、みんなの実のお父さんが捕まった理由がカラオケで「津軽海峡・冬景色」を横取りされて頭に来て刺したからっていうのがちょっと好きでした。それは刺されても文句の言えない行いかもしれない。

・ナサケの女~国税局査察官~(2010年/テレビ朝日)

 不穏シリーズその1「撃たれる」。東京国税局査察部長・新田進次郎です。査察部で一番偉いので呼ばれ方は「イチバン」です。わかりやすいですね。

 イチバンのすごいところは全然デレないところです。態度が軟化することはあるけど「デレ」っていうほどわかりやすくないです。ツンデレのデレが照れながらのちょっと余裕のない感じだとしたら、イチバンの主人公・松子へのそれはいつも余裕しゃくしゃくです。ツン10:デレ0のいわばツンドラです。冒頭で述べた通り彼は終盤撃たれてしまうんですが、責任を感じる松子に向かって瀕死のイチバンは「自惚れるな、お前のせいじゃない」と言い放ちます。「自分のせいだと思う」ことが「自惚れ」ってすごくないですか。プライドの高いイチバンらしくて大好きなセリフです。ただツンとしてるだけじゃなくて100円拾おうとして松子に見られたり松子が思いっきり開けたドアにぶつかられたりガサ入れの時会議室の机にちょこんと腰かけてたりキュートなところもあります。クールだけど仕事に対しては熱い。

 あと、イチバンは東大→ハーバードビジネススクール卒でMBAを持っていて、ラストで官僚の頂点である事務次官に就任するので柳葉敏郎史上最高学歴&キャリア最上位の男なんじゃないかという説があります。

・あぽやん~走る国際空港(2013年/TBS)

 木曜の良心。スーパークール上司の次はスーパーキュート上司です。いまいずみんて呼んじゃう。しろたんのぬいぐるみと戯れたりしててかわいいから……。

 Cu属性の特徴としてかわいいけどかなりぶっ飛んでるというのがありますが、いまいずみんはその代表です。まず本社からジャルパック成田空港出張所にやってきた主人公遠藤くんの上司だというだけで部屋の合鍵を作り、上司というだけで勝手に遠藤くんの部屋で鍋パーティーを開催し、やることがめちゃくちゃです。

 これだけだとただのヤバい人ですが、仕事になると部下たちを優しく見守りつつ自主性に委ねつつ責任はしっかり取ってくれるマネジメント能力S+のいい上司です。ぱっと見頼りなさそうな人が実はプロ中のプロで尋常じゃなく有能ってやっぱりいいですよね。「あぽやん(=空港にいる旅行代理店の人)」の仕事をなめてかかっていた遠藤くんを怒ったりせずプロとしての自覚を持つようさりげなく導いてるのが素晴らしいです。ただ、強く言うべき時はちゃんと言います。あのいつもニコニコしてるいまいずみんが「今日じゃなきゃ意味がないっつってんだろ!!」と怒鳴るとカッコいいです。それもすべてジャルパックを利用するお客様のためで、彼の持つ誇りをそこからも感じることができます。

 ロケ地が成田空港でJALとジャルパックも協力してて、劇用車ならぬ劇用機まで登場する力の入りようなので見てるだけでも(空港好きは特に)楽しいと思います。航空が舞台のドラマながら飛行機の中は一切出てきませんが、地上には地上の戦いがあることがよくわかります。

・ケイジとケンジ 所轄と地検の24時(2020年/テレビ朝日)

 支部長も木曜日の男。支部長については上のノートにあります。とにかく支部長だけじゃなくどのキャラクターもそれぞれに正義や信念を持ってるのがいいですね。警察も検察も罪を犯した人間を正しく裁きたいって思いは一緒で、やり方は違っているように見えても向いている方向は同じなんだなと思えます。いいドラマだった……。

●22:00台

・ハートに火をつけて!(1989年/フジテレビ)

 不穏シリーズその2「女友達と一線を越えそうになる」。火をつけてっていうかもうこれは放火です。ゆう子さんとギバちゃんの姉弟感が最高潮に達しています。春ちゃんと祐二は男と女だけど友達同士で、膝枕してても「男と女」っぽいウェットさが皆無です。本当に稀有な2人です。血がつながってないのに姉弟っぽい。

 そんな2人の関係がその周囲に押し寄せる恋愛の波によって揺れ動きます。なんとなく「鏡」(桑田佳祐)の中のフレーズ「向こうが泣いたら親友同士の愛は錯綜する」を思い出しました。ただ、結末もゆう子さんとギバちゃんが演じたからこそしっくりくるものになっていると思います。

 木曜の不穏さをまといながらも祐二(28歳のテレビプロデューサー)はあくまでも爽やかで少年っぽい男です。第1話のサスペンダーがかわいいし国ちゃんに膝をバンバン叩かれて「そうですね!!(怒)」って怒鳴るのツボに入ってしまったし風邪ひいてフラフラするのもかわいいし春ちゃんへの甘えかたもかわいい。あんな年下の男の子が近くにいたらそれはかわいくてたまらないでしょう。

 ついでに、まさか浅野ゆう子の「C調言葉に御用心」が聴けるとは思いませんでした。ありがとうございます。春ちゃんが歌う曲いつも一緒に歌ってしまうし選曲もストーリーに合ってて絶妙。特に第10話の「年下の男の子」はそれしかないよな……! と思いました。

・親愛なる者へ(1992年/フジテレビ)

 不穏シリーズその3「ダブル不倫」。そしてあのゆう子さん&ギバちゃんがついに夫婦役です。ただこの2人がすごいのは結婚しても「姉弟っぽさ」が残っているところです。一体何なんでしょうか。2人で自転車に乗って並んで走ったり、屋台デートしたり、仲の良さが自然で微笑ましいです。ここでも「年下の男の子」を歌うので、やっぱりこの2人のテーマ曲はこれなんですね。

 こちらから見ると完璧な夫婦がなぜダブル不倫に突入してしまったのかというと人の心は複雑なのでいろいろあったからなのですが、お互いに相手のことが忘れられないのが見ていてつらいです。なぜちゃんと思い合っているのにこうなってしまうんだろうという感じで切ない。ただラストはもともとあるべき姿にちゃんと収まります。ストーリーテリングのことは詳しくないんですが、展開が見事だなと思いました。

 このドラマでもう一つ大事なのは中島みゆき×柳葉敏郎が見られることです。テレビに出てること自体珍しいのにドラマ。主題歌も劇中歌もサブタイトルも中島みゆきが散りばめられているので嬉しかったです。みゆきさん好きなので……。あと佐藤浩市VS柳葉敏郎も拝めます。

・29歳のクリスマス(1994年/フジテレビ)

 不穏シリーズその4「女友達と一線を越えかける(リターンズ)」。新谷賢ちゃんです。なぜギバちゃんは「いい男友達」がこんなにうまいのでしょうか。話をちゃんと聞いてくれて「そうだな」って言ってくれるし、優しくて包容力がある。頼まれたからといって妊娠検査薬を買ってきてくれる男友達そういません。典子と彩に挟まれて振り回されてるけどツッコミは入れるし3人ではしゃいでるし実に楽しそうです。彩がたまに「新谷」って呼ぶの好きです。

 この3人の友情も熱いし、3人の外も巻き込んだ恋愛も熱いです。第6話のラストは本当にびっくりしました。「大変なことが起こっている……」と言うしかない展開です。エンディングも含めてハッピーばかりじゃないけどビターばかりでもないところがまさに「29歳」なのかなと思いましたがまだ29歳じゃないので29歳になったら観返したいです。

・リング~最終章~(1999年/フジテレビ)

 不穏シリーズその5「見ると13日後に死ぬビデオを見てしまう」。不穏のバリエーションが多すぎる。タイトルでわかるようにあの「リング」であり、「リング」が何か知っているだけに正直観るのを躊躇してしまっていたのですが、意を決して観てみたらあまりに面白くて一気見してしまいました。まず貞子がそれほど出てきません。貞子をダシにした父子のハートウォーミングストーリー(+オカルト風味サスペンスミステリー)と言ってしまっていいと思います。

 ギバちゃんがやると似合う役の一つに「シングルファーザー」がありますが、主人公の新聞記者で貞子の怨念と戦うことになる浅川さんも陽一くんという幼い息子を男手ひとつで育てています。息子を守るために貞子と戦う浅川さん、ギバちゃんのキャラクターの中でも屈指のカッコよさ。この父子の間の揺るぎない信頼関係も熱いです。涙ながらに「パパずっとそばにいてくれるでしょ?」という陽一くんのセリフはきっと第1話で浅川さんが語りかけてたようにずっと「お父さんがついてるから大丈夫だ」と言い聞かされ続けてたから出てきたんだろうなと思うと泣けてきます。浅川さんが陽一くんを守りたいのと同じくらい陽一くんも浅川さんのことを守りたいと思ってるんですよね。そりゃこんな守るべきものがある浅川さんに自分の怨みのために子どもを利用する貞子が勝てるわけない、と思えて勇気が湧いてきます。

 アクションもあって、「お父さん」と呼んでほしい浅川さんVS「パパ」って呼んじゃう陽一くんみたいな和むシーンもあって、一途な吉野さんもかわいくて、ミステリアスな高山さんもカッコいい。音楽も不穏な雰囲気がよく出てて好きです。ホラー苦手でもNG集のホラーシーン(劇中の怖いシーンのほぼ全て)さえ大丈夫ならいけると思うのでおすすめです。

・コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-(2008年/フジテレビ)

 不穏シリーズその6「右腕切断」。百戦錬磨の救命医、ドクター・アブソリュート・ゼロ黒田先生です。ハーフリムのメガネがよく似合っていて術衣を着ているとより一層細身に見えます。これ以上着痩せまでしてどうするつもりなんでしょう。

 フェローたちに対して厳しくて滅多に褒めませんが、ごくまれに褒めてくれるとテンションが上がります。第3話の褒め言葉は100点満点でした。人に厳しいだけあって彼自身も自分の腕に自信を持っていて、元奥さんから「エゴイスティック」と評されるほど人格がすごい黒田先生ですが、右腕を失った後10年ぶりに息子に会って少しずつ「父親」に戻っていくところが素晴らしいです。名シーン。

 関係ありませんが、「嵐にしやがれ」でギバちゃんが「好きなジャニーズは?」って聞かれて「山P」と即答してたので、こんなにクールなのに心の中では「カッコいい……」とか思ってたのかと考えるとかわいいですね。

●23:00台

・東京ガードセンター(2014年/Dlife)

 今度は警備会社のオペレーションセンターのセンター長です。いまいずみんと同じくかわいさとぶっ飛びっぷりが前面に出ています。まず赴任初日の新人に第一声でいきなりどの自転車を買うかの相談をしてくるところからしておかしいですが、さらに占いで見たラッキーアイテムのおしるこを甘いものが苦手なのにもかかわらず飲んだり私物持ち込み禁止なのにカタログ持ってきて容赦なくシュレッダーにかけられたりヤバい人です。

 ですがセンター長もやはり仕事スイッチオンの時は冷静沈着で決断力のある頼れる上司に変身します。終盤で明かされるセンター長の秘密もずっとかわいく見えていた彼にシリアスな魅力を加えています。49歳になるまでずっと独身を貫き続けてる理由も素敵です。

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