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映画『変な家』を観たので個人的に一番好きな雨穴さん作品『怪』の話をする

映画『変な家』、公開初日に観てきた。
平日午前でここまで満員に近いって滅多にないな、という観客の多さ、特に春休みだからであろう、若者、特に映画館の使い方をよく分かっていないような中高生くらいの集団が多かった。

私は原作者の雨穴(うけつ)さんのファンだ。
黒い布らしきものに全身を覆われ、顔には白い仮面、CV:他者 とされる女性か子供か、またそれ以外の何かかのような可愛らしい声の怪人物だが、うさぎと和菓子がお好きらしい。
YouTubeチャンネルのヘッダーが後ろ向きのうさぎなので“うさぎのおしり”=うけつ(ハムスターのおしりを「ハムケツ」と呼ぶので)なのかと思ったりもしたが、お名前の意味や由来は謎に包まれている。

ご自身のYouTubeチャンネル、面白い記事を発信するウェブメディア「オモコロ」での特集などで、ハンドメイドから歌や踊りや動物飼育まで多才さを披露なさっている。
YouTube動画『【ミステリー】人形に録音された、子供の声の謎』等を元とするテレビドラマ『何かおかしい』では原作だけでなくストーリーテラーとしてご出演(そしてダンス)。
更に動画『変な家』『変な家2』『変な絵』の小説化も手がけられており、この小説版『変な家』が、この度映画となり全国ロードショー。大ヒットを記録している。

という事で、今回は、雨穴さんの作品の中で一番好きな楽曲『怪』を紹介する。
聞いたことのない方は、ぜひ一度雨穴さんのYouTubeチャンネルへ。

※はじめに※
ここでは雨穴さんの『怪』の紹介と、この楽曲に関しての私個人の思い入れを書きます。
個人的感想であり、雨穴さんご本人の製作意図や描写・歌詞の真実を述べているものではないとご理解の上(私の妄想を読んでもいいよって方のみ)お読み下さい。
本記事は雨穴さんご本人とは無関係の、私の独断で書いている記事です。
(著作者様にご迷惑がかかる場合は削除いたします)

また、この記事は「私は意味が分かった!」的な考察や、解読できた宣言(これが正解だ!)を目的としたものではなく、あくまで感想文となります。


(雨穴さんYouTubeチャンネル@uketsu より)

□雨穴さんの楽曲の中でも特に妖しく「何かを語っていそう」さが匂い立つ

正直な話、私は雨穴さんが現在のジャパニーズホラー界の頂点のクリエイターだと思っている(平成期には良いものを作れたのに、今や演者PVみたいな、映画としてもホラーとしても誠実さのない『Jホラー』とやらを世に出す階層の作り手より数百倍好きだ)。
少し前から人気の怪談ジャンルとして“意味怖”というものがある。
これは「意味がわかると怖い話」の略であり、形式としては
「普通に物語を追っていく段階ではよく分からない(怖さすら感じさせないものもある)内容だが、その物語の仕組みや、暗喩している記号を読み手が拾い集められたとき、恐怖を感じる」
というものだ。
この“意味怖”にモキュメンタリーを合わせるのが白石晃士監督の名作『ノロイ』以降の時代に多く作られるようになっているようで『フェイクドキュメンタリーQ』や『祓除』といったテレビ番組、ウェブ小説『近畿地方のある場所について』等、今日本のホラーで最も勢いのあるスタイルだと言っていい。
雨穴さんの多くのホラー作品や不思議作品もこの“意味怖”の要素を多く備え、何やら不穏な言葉やヴィジュアルに、つい想像力を掻き立てられてしまう。
そんな、ホラー作家としての顔の他、雨穴さんにはミュージシャンとしての顔もある(どちらも同じあの仮面ではあるが)。
私は雨穴さんの再生リストの中で「音楽」に収録されているものが一番好きなのだが、中でもこの『怪』は
雨穴“意味怖”×雨穴ミュージック(そして雨穴ダンス)
の凄まじい折衷を感じる。
フラッシュ動画時代の末期に「歌詞が日本語に聞こえる」として流行った『めざせモスクワ』のような小気味良くも押さえ目な異国情緒あるダンス感とコード進行に、どこか和風なアレンジが効いていて、洗練されたカッコよさと不可解な怪しさが不穏に流れていく美しさに、初めて聞いた瞬間から魅了されてしまった。
(二番目に好きなのは『みんなのうた』です)

□独り言(なのでネタバレなどとは言いませんが『怪』をご覧になった方で私の妄想を見てもいいよって人のみ読んで下さい)

何か辛くどうにもならない事があると
世間では後ろ暗い事が行われるのだ
子供は早く寝なさい、こんなのまだ見聞きするもんじゃない
ある家では大事な娘を金の為に差し出した
放蕩者の金持ち旦那だ、あの赤く薔薇のような肌になる病気にかかっているかも知れない
母は娘の苦痛と危険を思い、心を痛める
交合する性器の躍動
それは、宿主とそれを食い殺すバケモノの踊り

増えろ、食い尽くせ

その病になった絵師は、醜く壊れていく我が身を見たくないと膿で目を潰す

曖昧だった症状が正体をあらわし“瘡(カサ)”となる
一度おさまり完治したような潜伏期を経て
症状はまたあらわれる

増えろ、食い尽くせ
増えろ、食い尽くせ

人の欲望や愚かさ、残酷さを知らしめながら
“遺伝”していけ

“遺伝”により歪んだ胎児を見たのだろう
堕胎医者の精神が壊れた

はるか遠い地では、疫病蔓延の兆である人面牛が生まれた
(この病は国中に蔓延っていくのだ)

……これは私の妄想というか、この曲を聞いてスッと降りてきた印象でしかないが「赤い痣」「膿」という言葉や「先天奇形」を思わせる要素を拾い集めた結果、私が感じとったものはとある性感染症だった。
あの可愛いくて不思議な雨穴さん(達)の踊りは、増殖する細菌の踊りなのか……も知れない(個人の感想です)。

(∵) おまけ(ファンアート)


でかい肉のオモコロ特集が好きなので、小さな雨穴さんをラップに乗せて肉の上に置きました














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