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スペイン語版Alexaクックパッド・スキルの舞台裏 ー日本人チームが作るスペイン語圏で最高の料理体験ー

皆さん、こんにちは。クックパッド・スペインのマイコです。
2020年も早いもので明日から2月。日本ではバレンタインに向けてチョコレートを使ったお菓子を作る人が一気に増える時期ですね。
私も久しぶりにチョコのカップケーキでも作ろうかな。

さて、今回は、クックパッドがスペイン語圏で展開しているもう一つのサービス「スペイン語版アマゾン・アレクサ・クックパッドスキル(スペイン語版スキル)」についてのお話です。

クックパッドでは、2017年に日本語版アレクサ・スキルのサービス提供を開始しました。そして翌年2018年10月末、Amazon Echoのスペイン上陸とともにスペイン語版スキルの提供を開始し、続いてメキシコでも11月、そして2019年10月からは米国でリリースしました。
「米国なのに英語ではなくてスペイン語?」
と不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、米国でスペイン語を母国語とする人口は約4100万人。スペインの総人口は約4700万人ですから、その数字と比較しても米国がスペイン語話者が多い国だということがわかります。

このスペイン語スキルは、日本語版と同じ橋本さんとエンジニアの山田さんに加え、コーディネータである私とクックパッド・スペインのスペイン人、そしてメキシコ人スタッフが一丸となり作っています。

レビュー数はスペインでおよそ8千件、メキシコでも3千、どちらの国でも料理系スキルではレビュー数No1を誇るスキルになっています(2020年1月28現在)。

実はクックパッドの日本チームが海外向けサービスを開発するのは、このプロジェクトが初めて(※)。異文化に戸惑いつつ、言語の壁をよじ登って乗り越え、スペイン人たちの土壇場力に驚かされながら作っています。

※海外版レシピサービスは、英国を拠点に海外チームが作っています。

「リリース済みの日本語版をスペイン語に翻訳すればいいや」と思ってたら、イチからスペイン向けサービスを作るプロジェクトになった

2018年、東京。スペイン語版スキル開発プロジェクトが開始しました。

このとき既に日本語版をリリースしていた私たちは、日本語版スキルの機能をそのままスペイン語に翻訳するという単純な作業を想定していました。

当時の日本語版スキルは、ユーザが使いたい材料名でレシピ検索すると、複数の食べ方を提案してくれるというもの。「毎日毎食違うものをバランス良く食卓に並べるべし!」という目に見えない、しかし強大な重圧と戦っている大勢の人々を開放することが、新しい料理体験には欠かせないという信念のもと設計されていました。

スペインでもさぞかしこの問題に悩まされている人々が多いだろう。
そう疑わず、スペイン人に日本語版を説明してみたところ・・・

「なんでそんなに毎日違うもの作ることが大事なの?」と、まったく共感されませんでした。

料理は、その地の文化、風土、そしてそこに生きる人々の生活の一部。したがって、国が変われば人々の料理に関する悩みも異なる。当然といえば当然です。

そんなわけで、当初予定していた日本語版の翻訳という案はなくなり、スペイン向けにレシピ検索&ナビゲーション機能を独自に開発することにしました。

実験、エラー、実験、そしてまた別のエラー。スペイン人スタッフと実験を繰り返す


気持ちを切り替えた開発チームは、怒涛の勢いでスペイン語版のプロトタイプを完成させました。そして、スペイン人スタッフのマリアを東京に呼び寄せて実機での実験をはじめました。マリアはなんと生後11ヶ月の子どものマテオくんを連れて来日してきてくれました(そしてマテオくんのかわいさにオフィスのみんながメロメロになるといういい仕事をしてくれた)。

クックパッドの恵比寿オフィス。
できたてほやほやスペイン語版プロトタイプの入ったEchoにマリアが話しかけて、レシピを検索し、レシピを読み上げさせます。
が、最後までスムーズに読み上げを完了できることは皆無。毎回(文字通り、毎回)、認識エラーや不自然な発話やインタラクションが見つかり、一つ一つその場で問題点を共有し、解決策を話し合います。

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東京オフィスで実験する開発メンバー。左から橋本さん、私、マリア、山田さん。

不自然さの原因の多くは、クックパッドのレシピが多様な作者さんたちによって思い思いに書かれているという、CGM(Consumer Generated Media)であることに起因するものでした。
例えば、一つのステップの長さ。懇切丁寧にコツを伝授したい作者さんは、一つのステップの説明が非常に長くなってしまっているものも少なくありません。この懇切丁寧な説明は、目で見る場合は良いのですが、読み上げられた音声を聞く場合は問題です。あまりにも長い説明だと最初の方に言っていたことを忘れてしまうからです。この経験から、一区切りで読み上げる文字制限をすることにしました。
材料の重さの単位の表記も悩まされました。例えば「グラム」の書き方は、gr. G、g、gramos、grsなどとレシピ作者さんによって様々です。そしてこれらすべてを正規化し、Alexaに正しく読ませる必要があります。あらゆる可能性を網羅するために、レシピを見直し、ながーいリストを作っていきました。

来る日も来る日もエラーばかり。初めてエラーなしで最後までプロトタイプが動いたときは、マリアが心からガッツポーズをするほどでした。

スペインのキッチンでユーザテスト。開発チームもスペインで料理を体験

もちろんスペイン人に来てもらうだけでなく、日本人チームもスペインを訪れ実験をしました。
特に学びが大きかったのは、スペイン人の一般家庭での「アレクサごっこ」実験です。「アレクサごっこ」とは、人間がアレクサ役になりきり、ユーザ(被験者)とインタラクションをするというコーディングゼロのプロトタイピング手法です。スペイン語版では私がアレクサになりきりました。

この実験を通じて、スペイン人が家庭でどんな風に料理をしているのか、キッチンにどんなものがあるのか、どこにエコーが置かれているのか、そしてどんなインタラクションを求めているのかを実際に見ることが出来ました。

今の時代、オンラインで大抵の調査ができるようになっています。が、人々の生活に入り込むようなサービスを作るためには、現地に足を運ぶ、ユーザさんと対面でお話する、というような手間を惜しんではいけないと実感しました。

雑談。被験者さんのノリのよさにも日本との決定的な違いを感じました。初対面でも遠慮なくどんどん要求をぶつけてくれました。さらには「アレクサ、歌って」というリクエストまでされ、アレクサになりきっていた私が歌を披露、なんて場面もありました。

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まるで料理に詳しい現地人と話しているようなインタラクションを作り込む

様々な試行錯誤を重ねて、ようやく完成したスペイン語スキル。メキシコ版も、メキシコ人の協力を得て無事にリリースすることができました。

もちろん「リリースしたら終わり!」ではなく、今日も日々改善を続けています。

例えば、今現在はちょうどマリアたちスペイン人スタッフがバレンタイン向けレシピを厳選しているところです。

こんな風に現地人スタッフと協力しながら、そして試行錯誤しながら、スペイン語版スキルを開発しています。今後もより料理を楽しくするようなサービスを海外でも展開していくので、乞うご期待ください!

クックパッドスペイン語版スキルのビデオ
https://www.youtube.com/watch?v=NzWC_uMTb8Y
撮影場所はクックパッド・スペインオフィス、出演しているのはマリアです。

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