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賞与と社会保険料~引く人引かない人からその後の処理まで

夏の賞与、というと、6月・7月に支給される会社が多いと思います。

8月は、賞与の事後処理のあれこれもそろそろ一段落する時期です。
このタイミングで、賞与の社会保険料あれこれと、事後処理を振り返ってみました。

1.賞与から社会保険料を引かなければいけない人は?

 ※社会保険料…健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料

答)賞与支給日および賞与支給月の末日に社会保険に加入している人(その会社の名前で健康保険証が発行されている人)で、社会保険料が免除されていない人

よって、賞与支給月の末日に社会保険に加入していない人(末日の前日までに退社した人)は社会保険料を引きません!
社会保険から脱退する日(喪失日)は、退社日の翌日となるため、末日退社は、末日も社会保険に加入していると考えるためです(つまり、退社日まで健康保険証は使える)。

また、社会保険料が免除されている人(産前産後休業中、育児休業中)は賞与が支給されても社会保険料を引きません!

休業中だから賞与は出さない、という会社もありますが、多くの会社は、一定額出しているようです。
うちの会社だと、賞与計算対象期間(以下参照)がぜんぶお休みの場合でも、一律10万円支給しますね・・・

現時点では、賞与支給月の月末に、産前産後休業中、育児休業中であれば、賞与から社会保険料はひきません。
逆に、賞与支給日に休業中でも、月末までに復帰していれば、賞与から社会保険料は引きます。

このあたりの期間について、実際に出産する女性社員はあまり選択の余地はありませんが、男性社員は、極論をいえば、7月支給賞与の場合、7/31の1日だけでも育児休業をとっていれば賞与から社会保険料はひかれません。

実際にそういった1日育児休業を取得しているケースが多いため、早ければ来年には、1ヶ月以上育児休業期間がないと賞与からは引きますよ、というふうに法律が変わる予定があります。
もっともです。

《介護保険料のみ取り扱いが特殊です》
※介護保険料は、その賞与が支給される月の末日に40歳以上65歳未満であれば引かれます。それより若ければ、あるいは65歳以上であれば引かれません。
※健康保険組合の場合は、本人が40歳になっていなくても、健康保険の扶養家族が40歳以上65歳未満であれば引かれることがあります(その組合の規約による)
※海外赴任で海外居住の場合は、介護保険料は引かれません(赴任時に免除の届け出をします)

2.賞与から雇用保険料を引かなければいけない人は?

答)賞与の支給日に雇用保険に加入している、または計算対象期間に雇用保険に加入していた人

賞与は、対象となる計算期間が決まっています。
例えば、うちの会社は、7月支給の賞与は、昨年の11/16~今年の5/15までの期間が対象です。
(余談ですが、よって、期間途中で短時間勤務になったり、正社員からパート社員になって給与が変わった人は、そのうち正社員の期間は正社員として、パート社員の期間はパート社員として計算したりします)

賞与支給日に雇用保険に加入していればもちろん、退職してもう雇用保険に加入していなくても、その退職後に支払われた賞与の計算対象期間に雇用保険に加入していれば、雇用保険料がかかりますので注意です。

3.賞与の社会保険料と雇用保険料と労災保険料のその他あれこれ

・賞与から引かれた厚生年金保険料は、年金の金額に反映します。ねんきん定期便にもちゃんとのってきますよ。
・雇用保険料は、払っても、失業給付が増えるわけではありません・・・
・健康保険料も、払っても、傷病手当金や出産手当金が増えるわけではありません・・・(健康保険組合の場合は違う場合もあるようです)
・労災保険料は、社員は一切おさめず、会社が全額おさめます。賞与からも計算しておさめます。社員は、休業補償給付等をもらうときに、その賞与分も計算して上乗せでもらえたりします。

4.賞与を支給したあとの処理

(1)会計処理:賞与額にもとづき、法定福利費(会社負担分)を計算して計上し、まとめて預り金に振り替えます

 社員の賞与から引いた社会保険料(預り金)とともに準備をしておき、日本年金機構または健康保険組合への支払いにそなえます。
 日本年金機構または健康保険組合への支払いは、賞与を支払った月の翌月末になり、月をまたぐため、いったんまとめて預り金に振り替えておく会社が多いのではと思います。

(2)社会保険料返金処理:賞与を支給したあとに、以下の対象者がいたら社会保険料を返金します

① 急遽出産が早まったり、事情があって、産前休業や育児休業を取得した人
 賞与から引いた社会保険料は返金します。
 協会けんぽ・健康保険組合・日本年金機構に保険料免除の手続きをすれば、①で支払った後でも、翌月以降分と調整されてお金は返ってきます。

② 急遽退職した人、社会保険から脱退した人
 月末時点で社会保険から脱退している人は、社会保険料を引きません。
 よって、賞与支給時点では社会保険料を引いたけれども、そのあと退職や、働く時間が短くなって社会保険から抜けた人については、社会保険料を返金します。
 これも、①で支払った後でも、翌月以降分と調整されてお金は返ってきます。

 でも退職するとさらに返金処理は面倒なので、賞与支給前には、賞与支給月の月末までの退職予定をしっかり確認しておく必要があります。

(3)社会保険料徴収処理:賞与を支給したあとに、以下の対象者がいたら社会保険料を計算して払ってもらいます

① 月の途中で急遽お仕事に復帰することになった人
 育児休業・産前産後休業から急遽復帰することになった人は、上の人とは逆に、社会保険料を引くことになるので、本人にあとから支払ってもらう必要があります。
 これも、日本年金機構等に支払った後でも、休業の終了届を出せば、ちゃんと翌月以降ぶんで請求されます。
 なので本人から支払っておいてもらわないと、会社が本人ぶんは肩代わりすることになってしまいます。

5.終わりに

公平な社会保険料負担などのために、賞与の社会保険料の運用については、事細かにいろいろなことが決められています。

守らないと、本人に返すべき(本人から払ってもらうべき)お金がそのままになってしまっていて、今から返そう(払ってもらおう)にも連絡がつかない・・・となり、会計上も負担となります。

しっかり振り返って処理をすることがたいせつだと、しみじみ思います。


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