見出し画像

会社規模が大きくなると発生する義務 #0134/1000

1.どんな義務が発生する?その理由は?

建設業や林業工業などあきらかに業務そのものが危険な業務や、電気やガスの危険物、重い家具を扱うなど危険をともなう可能性が高い業務については、働く労働者の安全を守るため、会社側がしなければいけないことが細かく決められています。

ですが、事務のみの会社でも、労働者に危険が生じることが全く発生しないわけではありません。

どんな業種でも労働者の安全を確保できるように、ある程度の人数があつまる仕事場では、すべきことが義務付けられています。

それが、この5つ。

ひとつ場所で、業務に従事している人が50人以上になったら、実施する必要があります。

1.衛生管理者を専任し、労基署へ報告する
2.産業医を選任し、労基署へ報告する
3.衛生委員会を設置する
4.ストレスチェックを実施し、労基署を報告する
5.定期健康診断の結果を労基署へ報告する

これらはどれも費用が発生することです。
また、実施した効果がすぐ見えるものでも、実施しなかったからといって必ず大きな問題が起こるというものではないと思います。

ですが、国がこれまで起こった事故や失敗例をもとに、これなら事故を未然に防げるのではないかと、専門家と審議して決めた目安がこれなのです。

従業員のモチベーションが会社業績を変動させたり労働力そのものが不足となりつつあるこの時代、従業員に安心して安全に働いてもらうためには、実施しておくべきことと思います。

2から5までは、産業医のかたを選任し、アドバイスをお願いすれば実施方法がわかります。

産業医さんもいろいろな方がいますが、リンク先のDr.健康経営代表の鈴木先生は、東京都社会保険労務士会の会誌に連載をされている記事を拝読すると、実務と現場によりそった、建前でもなく理想論でもない産業医のお仕事を、適正価格でお願いできそうです。

問題なのは1番の衛生管理者。

この衛生管理者は、その場所に専属の者、と法律で定められています。

この「専属のもの」というのは、「その事業に専属の者とは、その事業場のみに勤務する者」と、厚労省の通達で明記されています。

そして衛生管理者となるには、厚労省の試験を受けて合格し、その資格を取る必要があるのです。

私自身、衛生管理者の第1種の資格をもっていますが、試験内容も簡単というわけではなく、ネット試験もなく、試験会場も限られるため、なかなか簡単に取れる資格ではありません。

外部から来てもらうこともできますが、衛生管理者としてのお役目は、週1回程度事業場を確認し、設備や作業方法、衛生状態に有害のおそれがないか確認することです。

できればその職場や仕事内容について詳しく、従業員も安心して不安なところを相談できる人のほうが、と思うと、社員にその資格をとってもらう必要があります。

従業員の人数が50人を超えるような事業計画があったり、そろそろ50人を超えるのが見えてきた、というときには、まず衛生管理者についてどうするか、考えておく必要があると思います。

2.50人以上の対象になっているか確認するときの注意点

上では、「ある程度の人数があつまる仕事場」と書きましたが、この「人数」と「仕事場」について、注意点が2つあります。

1.「人数」は、日雇いやアルバイトをふくむすべての労働者が対象
※労働安全衛生法施行令での記載は「常時五十人以上の労働者」を使用する事業場。この「常時」というのは、労働者の形態(正社員かアルバイトか)ではなく、その事業場に「常時」いる、という意味)

2.「仕事場」は「事業場」で、その場所ごとを指すということ

たとえば、従業員が全国で100人いても、10支店あって、その支店ごとには10人しかいないのであれば、対象とならないことになります。

厚労省の通達では事業場をこう定めています。

すなわち、ここで事業場とは、工場、鉱山、事務所、店舗等のごとく一定の場所において相関連する組織のもとに継続的に行なわれる作業の一体をいう。
したがつて、一の事業場であるか否かは主として場所的観念によつて決定すべきもので、同一場所にあるものは原則として一の事業場とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業場とするものである。
しかし、同一場所にあつても、著しく労働の態様を異にする部門が存する場合に、その部門を主たる部門と切り離して別個の事業場としてとらえることによつてこの法律がより適切に運用できる場合には、その部門は別個の事業場としてとらえるものとする。たとえば、工場内の診療所、自動車販売会社に附属する自動車整備工場、学校に附置された給食場等はこれに該当する。
また、場所的に分散しているものであつても、出張所、支所等で、規模が著しく小さく、組織的関連、事務能力等を勘案して一の事業場という程度の独立性がないものについては、直近上位の機構と一括して一の事業場として取り扱うものとすること。

理想論にはなってしまいますが、50人未満の事業場には、こういった対策を「やらなくてもいい」とされているわけではありません。
「なるべくやるほうが望ましい」という努力義務となっています。

産業医についても、上で紹介した鈴木先生のように、安心して適正価格でお願いできるところが増えてきています。

該当するからやむを得ず対応する、という形ではなく、積極的にやったほうが会社のためにも社員のためにもなる、という世の中に変わっていくのでは、と思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?